何かを契約する時に、契約書に「甲は~」「乙は~」という記載されているのを見たことがないでしょうか。その他にも特定の資格では「甲種」「丙種」という区分がある場合があります。この甲、乙、さらに丙って一体何をあらわす言葉なのでしょうか?

■甲、乙、丙はもともと「十干」から来ている

甲、乙、丙は、もともとは「十干(じっかん)」と呼ばれる、十二支と合わせて暦等を表示するために用いられていたものです。甲、乙、丙のあとには、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸という並びがあり、子、丑、寅~で始まる十二支と合わせて、暦や時間、方位などに使われていました。十干と十二支の組み合わせ方は60種類あり、その60を一回りにした周期のことを、干支(えと)と言います。干支(えと)というと子、丑、寅~で始まる十二支のことを、現在は指すことが多いですが、この60で一回りする周期が本来の干支(えと)なのです。

十干も十二支も、この干支の順番をあらわすために用いられている符号です。そのため等級や階級の順番をあらわす符号として、甲、乙、丙が使われることがあります。

■「甲乙つけがたい」という言葉は、優れているのがどちらか判断しづらいという意味

特定の資格をお持ちの方なら、甲種、乙種という区分に分類されている方もおられるかもしれません。焼酎にも甲種、乙種というものがあります。

甲、乙、丙は等級や階級によく使われている文字で、優先順位が高く、ランクが上だと判断されるものには、甲に近い文字が割り振られることが多いようです。「甲乙つけがたい」という言葉がありますが、この言葉は「どちらが優れているのか判断がむずかしい」という意味があります。一般的には優れているほど「甲」に近い符号になるようです。

■契約書では、どちらが甲か乙かで、もめることが多い?

ちなみに甲、乙、丙は優先順位の高さや、ランクの高さをあらわすために用いられることが多いため、契約書の表記でも「どちらが甲で、どちらが乙か」でもめてしまうことがあるようです。実際には優先順位はあまり関係なく、内容によって優先順位が決められるのが契約書です。一般的には大手企業や、契約ごとで有利な立場にいる企業を「甲」として、契約書が作られることが多いそうです。ただし契約においてどちらが有利なのかは、甲乙に関わらず、契約書の内容によって決まるもの。甲乙だけにとらわれず、契約書の中身もしっかり検討するようにしましょう。

甲、乙、丙は単なる割り振りのために使われることが多い符号ですが、順位やランクが絡んでくるため、こだわる方にとっては重要な意味のある符号になることも。安易に甲乙つけないよう、慎重に扱うとよいかもしれません。