ブームから1年……

1年ほど前、ネット上で「おっぱいラーメン」という単語が流行したことがあった。「おっぱい」と「ラーメン」である。通常では考えられない斬新な単語の組み合わせだ。

発端となったのは、ラーメン評論家である石神秀幸氏のツイートだった。「こんなラーメン屋がある武蔵小山おそるべし…」という言葉と共に投稿された写真には、胸の大きなセクシーな女性が写っており、これにネットユーザーが反応。ツイートは瞬く間に拡散され、「おっぱいラーメン」はにわかに注目を集めることになった。

店の正式な名前は「ラーメンBAR スナック、居酒屋。」(東京都目黒区目黒本町4-3-14)。東急武蔵小山駅と学芸大学駅のちょうど中間地点に店を構えている。あの盛り上がりから約1年。「おっぱいラーメン」は現在どうなっているのだろうか。ムーブメントから1年が経った「ラーメンBAR スナック、居酒屋。」の今を取材した。

……とはいうものの、困ったのがネット上に連絡先の情報がないことだった。ならばと直接飛び込みで取材をお願いすることにして、とにかく店に行ってみることにした。

東急武蔵小山駅から徒歩10分ほどの場所にある「ラーメンBAR スナック、居酒屋。」

訪れた時間は19時。武蔵小山駅から歩いて10分ほどの場所に「ラーメンBAR スナック、居酒屋。」はあった。平日ということもあり、まだ店は静かだが、看板を見ると「営業中」の文字がピンクに点灯している。それなら大丈夫だろう。ドアを開けて建物に入ると、左手にもう1つドアがある。実はここ、他にも複数の店舗が入っているのだ。なんとも不思議な構造の建物である。

ドアを開けて中に入ると……いた! 「おっぱいラーメン」こと「ラーメンBAR スナック、居酒屋。」の店主である早川貴子さんだ。

こちらが店主で"リーダー"の早川貴子さん

こちらに気づき、「いらっしゃい! 」と元気よく迎えてくれた早川さん。取材であることを告げると、「そうなんだ! 」と豪快に笑って名刺を渡してくれた。元グラビアアイドルという経歴を持つ早川さんは、「お酒で死ねたら幸せ」と豪語するほどのお酒好き。以前から飲食店で働いていた経験もあり、それがお店をオープンさせるきっかけになったという。

すごい

旬な素材を取り入れたこだわりのメニューはその日によって変わる。気になる名前のメニューがたくさん!

積もる話は後にして、まずは注文だ。本当は仕事で来たはずなのだが、既にこの時点で普通に楽しんでしまっていた。話し好きの早川さんのトークはそれくらい面白くて、盛り上げ上手なのである。

看板メニューはやはりラーメン。「あっさりさっぱり塩しょうゆ」で、並が650円、大が900円だ。ただし、ラーメンのみの注文はNGだという。その理由は「ラーメン屋ではない」から。1年前のブームではラーメン屋として広まってしまったが、あくまでも店はラーメン屋ではなく「ラーメンBAR」なのである。ラーメンだけを食べに来るのではなく、お酒を飲んで、料理を食べて、その締めにラーメンを楽しめる飲み屋なのだ。ここは早川さんとしても強調しておきたいところらしい。ということで、まずはビールを注文。白ビールを飲みながら、改めて店内を見渡してみた。

アルコールの種類はかなりのもの。早川さんはお酒にも詳しいので、お任せで選んでもらって間違いない

テーブル席もあるのだけど、もちろん特等席はカウンターである

オーナーなのになぜリーダー?

店内はカウンター席とテーブル席をあわせて10席くらいだろうか。それほど広くはないが、それはスタッフを雇わず早川さんが1人で切り盛りしているからだ。名刺の肩書きでは「リーダー」となっている。その理由について早川さんは、「みんな、なぜか私のことをママって呼ぶんだけど、その呼ばれ方は慣れなくて」と笑う。

店を訪れた19時、すでに営業中の看板が出ていたのは前述の通りだが、実際は中に入ったときには早川さんはまだ開店の準備中だった。それは別に珍しいことではなく、「大体いつもこんな感じ」だという。仕込みをして、お酒を運んで、店内を整える。すべて1人でこなしているので、準備が終わる前にお客さんが入ってくることは日常茶飯事だ。

続く後編では、メニューラインナップや1年前の「おっぱいラーメンブーム」について触れていくとしよう。