――監督には「誰も見たことのない前田敦子を撮る」という狙いがあったと思いますが、今回実現して、次はどのように撮りたいですか。

山下監督:そうですね、具体的なキャラクターはまだ浮かばないですけど、ただ『苦役列車』も今回も実はあっちゃんに対してあまり恋愛的な要素は入れてないんですよ。例えばあっちゃんが異性を好きになるような描写は入れてないので。次にやるとしたらそういうことをやりたいです。恋愛映画になるんですかね。そうだ! 恋愛映画も撮ったことないですからね。それはチャレンジですね。『天コケ』は唯一、初恋の話でしたけど、あれは人を好きになるまでの話なので。俺、ないっすわ! 恋愛映画(笑)。

前田:えー! すごーい(笑)。私も恋愛ものはないです。恥ずかしいです、そんなの(笑)。

山下監督:そういうキャラをイメージしない人ではあるなと思っていたんですよね。

前田:私も想像できないです(笑)。

山下監督:いつか、誰かがやると思うんですけどやってみたいですね。

――2回目のタッグを終えて、あらためて互いの印象をお聞かせください。

山下監督:僕が思うのは、役の説明が10あるとしたら、あっちゃんは1か2くらいを言って、10全て言わない方がいい女優さんだなと思いました。2くらいで伝えればあとの8くらいは勝手に埋めてくれる気がします。持っているものを出したほうが魅力的です。監督として楽しんでしまいます(笑)。

前田:私はすごく見透かされていると思います。何も考えてないとそれがバレバレというか。何も考えないでやってみようとか思ったりするんですけど、それは駄目なんだというのが監督と一緒にやってすごく感じました。前後で、妄想や空想をすごく話してもらえるので、私もちゃんとしなきゃって(笑)。ついていきやすいですし、細かいことも言われるので厳しい監督だと思います。

――タマ子が目指す新たな一歩が「タレント」という選択肢でした。あれは監督の意向なのでしょうか。

山下監督:脚本の向井と2人で考えていましたね。半年くらいふらふらして、たどりついたのがそこだったというのは、面白いねって話はしてたんですよ。タマ子は春ぐらいからちょっとずつ動き出すと思っていたので、でもまぁ、あれくらいなのかな(笑)。

――タマ子はその夢を周囲に隠そうとしますが、前田さんがデビューする前もそのような気持ちはありましたか。

前田:誰にも言わなかったですね。親に言うのも嫌だったので、なかなか挑戦しようと思う機会もなかったですね。たぶん誰でも恥ずかしいと思うんですよ。でも、誰かに言わないと実現しない。それが一番の難関だと思います。

――『苦役列車』と比べると長い撮影期間でした。本作をとおしてあらためて知った前田さんの魅力は?

山下監督:俺、人見知りなところあがあるんですよ。たぶん、あっちゃんもあると思うんですよ。でも、ちょっとずつ半年くらいかけて撮影をしていくとようやくしゃべれるようになったりとか、ご飯も行けるようになったりとか。ちょっとずつ近づいている感じがすごく居心地が良かったですね。半年間の撮影と言ってもそんなに日数は、そういう経験ができたのは初めてだったので、最後の方は現場に行くのが楽しみというか。明日タマ子だなと思うとすごく楽しみな自分がいました。そういう特殊な映画だったんだと思います。

前田:本当にしゃべるまで時間がかかって、タマ子を撮りはじめた時も全然だったので。2人でしゃべったこともあったんですけど…(笑)。

山下監督:今もそうなんですけど…取材を受けている監督という立場なのでしゃべれますけど、外出てその辺であったら挙動不審で逃げてしまうと思います(笑)。

前田:私もそうかもしれないです(笑)。

(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会