およそ400年の歴史を持つ「歌舞伎」…東京、大阪、京都、その他様々な地域や劇場で定期的に公演を行っているが、その裏側についてはなかなか知ることがない。今回は「お得に贅沢体験」を提供すると言うルクサの企画で、「明治座 十一月花形歌舞伎」公演の舞台裏をのぞけるというので、伺ってきた。
舞台転換はかなり大がかり
劇場内に入ると、ちょうど昼の部と夜の部の舞台装置を入れ替え中。わずかな間に全く違う装置に入れ替えなければならないとあって、大道具担当の方たちは忙しく働いている。トンカチや掃除機の音が響き、かなり大がかりに作業が行われている様子だ。
この舞台は「道具帳」という演目ごとのデザイン図をもとに、劇場の大きさに合わせた設計図を書きおこし、作られている。例えば洋服を作る際に、デザイナーが作ったデザイン画があり、デザインからおこした型紙があり、型紙をもとに裁断・縫製をしていく過程と似ている。
舞台裏は専門職でいっぱい! 稽古はなんと4日間
また、舞台の裏側は様々な専門職で成り立っている。例えば「附(つ)け打ち」という職の方は、効果音担当。2本の木を床の板に打ち付け、役者が見得(みえ)を切る際や注目してほしい場面で音を鳴らすという。すべて生で行われるため、その場の空気や、役者の好みなどに合わせなければならない重要な職種だ。
「綱元」は舞台袖で滑車につながる綱を操作し、舞台上の背景などを操る。「照明」の仕事は一般的に知られているが、歌舞伎の照明で特徴的なのが、あまり色を使わないことだ。これは、昔の歌舞伎がろうそくの明かりで成り立っていたことを表すため。影が出ないようにかなりの数のろうそくを使っていたようだ…と照明担当の方。
ほかにも小道具、楽器など多くの専門職の方々、そして役者の方々が関わっている歌舞伎の公演だが、意外なことに演目を行う際の稽古は4日間ほどしかないという。それぞれが技術を積んでいることがうかがいしれる。
明治座のライバルは…?
今回伺った明治座は140年の歴史を持つ劇場で、歌舞伎だけでなく多くの公演も行っている。例えば、「この劇場には負けたくない!」というライバル劇場なんかはいるのだろうか?
「いえ、本当にそういうのはないんですよ(笑)。たくさん劇場を持っている松竹さんとも、今回一緒に歌舞伎の公演を行っていますし…。みんなで演劇界を盛り上げていきたいと思っています」と話してくれたのは明治座 宣伝部 宣伝課の岸さんだ。
やっぱり、劇場の人は学生のころからアルバイトなどをして職に就くのかと伺うと、それも「普通に応募を出して求職者を募っています」とのこと。特殊に思えていた演劇の世界も、少し身近に感じてくるようだ。裏でこんな風に働いているのかとわかれば、歌舞伎をより楽しめるだろう。