2016年度採用から新卒の採用活動解禁日が後ろ倒しになり、就職活動期間が実質短縮されることで、「学生の職業観をどうやって育てるのか」が懸念点となっている。この状況の中で百貨店大手の三越伊勢丹は毎月インターンシップを行い、しかも大学1、2年生も積極的に受け入れるというのだ。いったいどういうことなのか、三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ 人材サポート事業部 三神永史さんに話を伺った。

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年2回のインターンシップでは足りない! もっと多くの人に

--インターンシップを毎月やっているときいたのですが…

はい、9月から始めました。毎月1回、基本的にはずっと続く予定です(笑)。

--どうして今回のような試みを始められたのですか?

そもそも、弊社は「インターンシップ」という言葉が出始めた当初からインターンシップを行っていたんです。今も毎年夏のはじめに行っていますが、これはみっちり3週間、週5回出てもらうという就業体験型のもので、とても好評をいただいております。

参加学生からよく聞くんですが、「働きながら、働いている人と話をする」というのがすごく良いと。大変さが目の前でわかるし、自分も体験しているから、リアルに感じられるみたいです。そこまで来ると、就業観が形成されるのがわかるんですよね。

併せて秋のインターンも2年ほど前からやっていまして、どちらも好評をいただいているんですが、結局夏と秋とで90人ほどにしか教えてあげられていないということが気になっていました。学生さんたちの気づきとなる機会がもっと広がってもいいのかなと思っていたんです。それに学生さんの予定を考えたら、平日にやるものもあれば一週間やるものもあり、月によって期間も内容も全部変えていく、という方が予定も立てやすいし学業にも考慮できるのではないかと考えました。

まるで学校のように、様々なテーマで行うインターンシップ

--どういうテーマでインターンシップを行うんですか?

三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ 人材サポート事業部 三神永史さん

弊社は衣食住に携わるので、食品メーカー志望の方、アパレル志望の方、空間づくりをしたいという方や、トレンドを作りたいという方、いろいろな学生さんに興味を持っていただいています。なので、「食品の未来を考える」というのもあれば「おもてなしについて考える」というのもやる。バイヤー仕事は買い付けだけではなくアイディアを出したりもするので、「アイディアはどうやって浮かぶのか」というテーマも展開するとか、いろいろな切り口のものを、毎月必ずやる予定です。

--まるで、学校みたいですね!

そうなんですよ! 学校にしたいんです、本当は。インターンシップって、就職活動とイコールに見られがちですが、そうではないと思っています。もちろん、就職について考えてはほしいのですが、単純にもっと早く社会のことを知れたら、大学での生活も変わると思うんです。だからこそ、1年生から参加してほしいですね。

学生にまで「そこまでやってくれるの!?」と驚かれる

今回も夏に参加してくれた2年生が何名かいまして、「早く知ることができてよかった」と言ってくれました。かなり意識も変わっていましたね。フィードバック面談もやって、けっこうはっきり言いますから。「人とのコミュニケーションが苦手かな」とか、「自分のことはしゃべるけど、人にわかってもらうって視点がないんじゃないかな」とか…彼らは友達同士の世界で活動しているので、注意しなくても何も言わないし許される、ただ社会に出たときにはそうではない。そこで気づいてくれる子は、例えば半年後に会ったりすると、すごく変わっていて驚きます。

--何でそこまでやってくれるんですか!?

同じことを学生さんにも言われました(笑)。正直に言って、労力考えると面談もかなり大変なんですが…やっぱり、せっかく3週間働いてくれたからこそ、そこまでやって完結だなと思うんですよね。自分たちができることは限られているのですが、伝えることはできるんじゃないか。

伝えることによって、「百貨店は接客と思っていたけど、ものをつくれるのも面白いな」とか、「接客ってアルバイトでもできると思ってたけど、奥深いな」と気づいていただければうれしいです。それが三越伊勢丹でなくても、小売業やサービス業に対する視線が変わってくれれば。だから労力をかけたいし、まわりまわって弊社のためにもなるという確信がありますね。

--もし御社に入社しなくても、顧客として愛着が沸きますよね

そうなるとうれしいですね。あとは、弊社のインターンシップに参加して別の会社に入った方が、後輩に「三越伊勢丹いいよ」と宣伝をしてくれるかもしれませんし(笑)。

実際に行うインターンシップの内容については、次のページへ。……続きを読む。