異人館通りの西側、諏訪山の麓にあるスイーツの店「フーケ庵」では、季節のフルーツを取り入れたケーキ(400円前後)を提供。何度行っても新鮮な味が楽しめる

神戸市といえば、異人館を代表とするエキゾチックなイメージの人気観光地。いち早く洋風の暮らしを取り入れた地であり、現在でも人々の習慣や好みには西洋からの影響が感じられる。その代表的なものとして挙げられるのが、「パン・スイーツ好き」であることだろう。

いかに神戸の人々がパンを愛しているかは、パンの世帯あたりの地域別支出金額・消費量共に全国トップ(総務省家計調査【平成22~24年平均】)という結果に表れている。実際、神戸の街を歩いてみると、商店街や駅前のみならず、路地裏や高架下などにもパン屋の姿を発見できる。

神戸は「洋菓子天国」でもある

更にスイーツに関しても、地元民自ら「洋菓子天国」と言うほど、大小問わず店が多い。「神戸国際観光コンベンション協会」に問い合わせたところ、神戸市の「平成19年商業統計調査結果」では、菓子・パン小売業の事業者は975を数える(686が洋菓子小売業で残りがパン小売業)。

神戸は、東京や大阪と違って9つの区しかない。つまり、1つの区におおよそ100の事業者があるということだ。ちなみに、神戸の人口は約154万人。人口比で言うならば、おおよそ160人に1件ほどの割合となり、決して少ない数ではない。

しかも、こうした数字は、あくまでもパン専業・スイーツ専業の店に限っている(製造と小売りのもの、小売りのみのものを含む)。残念ながら東京などと比較した統計はないが、これにスーパーやコンビニなどで売られるパンやスイーツを計算すると、「日本一、パンとスイーツが好きな人が集まる街」と言っても過言ではないはずだ。

JR高架下の「モトコー」の下にある「レンセイ製菓」は、昭和レトロな感覚あふれる、こってりとした甘さの焼き菓子(1個90円)が看板の洋菓子店

わざわざクルマで買いに行く

さらに、パン・スイーツ好きの範囲は神戸市にとどまらない。隣接している芦屋市や三田市、その隣にある西宮市などにまで届いていて、これらの都市にも名店は多い。例えば全国的に有名になった、中のクリームはとろけるように柔らかく、外の生地はフワフワな「小山ロール」(1,260円)を販売している洋菓子店「eS KOYAMA」は、三田市のニュータウンの住宅地内にある。

「eS KOYAMA」などは、決して買いやすい場所にあるわけではない。大阪や神戸などから買いに行こうと思うと、高速を利用しても小一時間はかかるが、それでも平日・休日を問わず、高速料金を払ってでも買いに行く人は多い。これは一例に過ぎず、神戸市周辺地域にはこうした店がたくさんある。

「笑っていいとも」で話題となった店も郊外

パン屋なら、例えば神戸市須磨区にある「天然酵母パン味取」は、人通りのない裏道に立地している。しかも周囲はマンションや住宅地や公園で、商業施設など全くない。孤立していて分かりにくい場所にある上に、駐車場も広くないのだが、それでも何とか探して買いに来る人は絶えない。

神戸市郊外で、周囲に全く商業施設などないところにある「天然酵母パン味取」

また、かつて「笑っていいとも」の「お取り寄せグルメ」のスイーツで、「スペシャルアイスデコレーション」(5号サイズ3,150円前後、6号サイズ4,200円前後。素材や時期によって変動あり)が紹介された「レーブドゥシェフ」もそのひとつ。

フルーツなどの素材の味が生きたスイーツたちは、地元では「西日本で一番おいしいかも」と言われいる。しかし、その本店は垂水区の郊外にあり、駅など全くない場所に立地している。このように場所を選ばないのは、店がどこにあろうとみんな買いに来るからなのかもしれない。

遠方からのお客さんも多い、神戸市の西の端近くにある「レーブドゥシェフ」

実は、全国展開しているスイーツの「モロゾフ」や「ユーハイム」などの本社は神戸市にあり、また、地元でしか食べられないおいしい店も少なくない。今年は「KOBEパンのまち」のマップ作成やラッピングバス運行、食べ歩きイベントなども予定されているというから、食欲の秋に神戸のパン・スイーツ巡りをしてみるのもいいかもしれない。

●information
神戸市公式観光サイト