資格がなくても建築家になれる方法とは?

キャリアアップのために、資格取得の勉強に励むビジネスパーソンは多い。大半の人が職種や興味によって挑戦する資格を選ぶものだが、中には関心があるものの、難易度が高くてあきらめてしまうこともあるのではないだろうか。建築士もそのひとつ。一級にもなれば、独学で取得することは困難な資格である。

しかし、「建築家」になるチャンスは誰にでもあるという。もちろん、専門知識などの勉強は必要ではあるが、転職する際には資格の有無は関係ないとか。どのようにすれば建築家になれるのか、建築家養成所であるデザインファームにお話をうかがった。

資格は就職後に取ればOK

建築家になるために必要なこと

同校によれば、「建築士」の資格(正式には免許)は独立するときに必要なのであり、就職・転職の際には関係ないとのこと。たとえ建築士の資格取得に失敗したからといって、建築家への道をあきらめなくてもいいのである。

ただし、何も勉強しなくてOK、というわけではない。建築家を目指すためには、建築の基礎や図面を作成するために必要な立体把握能力などを養う必要がある。そのためには、大学や専門学校で2~4年ほど学ぶのが一般的だ。

このような知識や能力を身につけたうえで、設計事務所に就職し、実務経験を積みながら建築士を目指すのが近道だという。

就職に必要な人脈を築く方法とは?

専門機関へ通うことにより、実務で必要な知識を得られるのはもちろん、人脈を築くことも可能だ。さまざまな人脈を築く過程で、コミュニケーション能力を磨くこともできる。これはクライアントの要求を正しく引き出すためにも重要な能力とのこと。

建築家 奥山裕生さん講演会の模様

建築家 伊礼智さん講演会後の懇親会

建築の知識は勉強することで得ることができるが、独学では人脈づくりは難しい。この人脈づくりを支援するために、前述のデザインファームでは課外授業として、第一線で活躍している建築家の講演会を定期的に開催している。

主に若手の建築家や研究者を招き、最新の設計作品や研究の成果を紹介。講演だけにとどまらず、学生との意見交換の場を設けることで、現場の生の声をダイレクトに感じられることも特徴だ。

2011年度「OBは語る」の模様

さらに、毎年恒例のイベントとして、「OBは語る」も開催している。卒業生たちの同窓会としての役割も果たしており、毎回たくさんのOBが集まるという。彼らから実務はもちろん、就職活動へのアドバイスなどをもらえ、なかには参加したOBの事務所に就職する学生も少なくないそうだ。現場との距離を縮められるきっかけづくりにも役立っている。

同校では、旧帝国ホテル設計監理のために来日した建築家、アントニン・レーモンド氏が設立した「レーモンド設計事務所」をはじめ、主に住宅設計において名をあげた「泉幸甫建築研究所」「伊礼智設計室」「手嶋保建築事務所」などの有名建築事務所へ卒業生を輩出している。

「建築が好き」という気持ちがあればいい

建築学科といえば理系分野であり、建築家になるためには複雑な数学を理解したり、絵が上手に描けたりしなければいけないイメージがあるのではないだろうか。しかし、実際に必要なのは適切な訓練であり、「建築が好き」という気持ちがあれば十分だという。

本当にその気持ちだけで建築家になれるのか、デザインファームの専任講師を務める牧野徹先生にうかがった。

デザインファーム専任講師・牧野徹先生

――自分は設計に向いているかわからないのですが、それでも「建築が好き」という気持ちがあれば建築家を目指せますか?

牧野先生「これは本当によく聞かれることなのですが、『建築が好き』という気持ちがあれば十分。突出した能力は必要なく、適切な訓練を受ければ建築家に必要な能力を身につけることができます。

『特殊な能力が必要なのでは?』と感じるのは、間取りを作ったり、模型を作ったりすることが難しく感じるからかもしれませんね。これらはきちんとした訓練次第ですぐに習得することができるでしょう」

――それでも、設計事務所に就職することは難しくないですか?

牧野先生「建築家の設計事務所への就職が一番難しいですね。しかし、道はそれだけではありません。建設会社の設計部で活躍するOBもいますし、設計施工会社を起業したOBもいますよ。それぞれの場所で経験を重ね、キャリアアップしていくことが、自分の目標に近づける方法ではないでしょうか。

そのためのサポートとして、建築家である講師が授業をプロデュースし、教育と実務を結びつけた学びを提供しております。もちろん、卒業後も独立までサポートを続けているので、OBたちとの交流や連携は非常に密なもの。学生たちにはこれを大いに利用して、自分の目指す未来を切り開いてほしいですね」

――ありがとうございました。

建築家を目指すうえで何よりも大切なことは、「建築が好き」ということ。その気持ちがあれば、資格を取得していなくても建築家への道が開けるということがわかった。建築家の夢をあきらめたくない、建築に興味がある人は、その一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。