群ようこ原作、小林聡美主演で7月21日からWOWOWでスタートする連続ドラマW『パンとスープとネコ日和』(全4回)。物語は出版社に勤める書籍編集者のアキコ(小林)が、突然の母親の死と理不尽な異動をきっかけに、母が営んでいた食堂を改築しサンドイッチとスープの店をオープンするところから始まる。おだやかな時間と空気が静かに流れる、まるで映画のような独特の雰囲気を持ったこの作品で主人公のアキコを演じた小林聡美に話を聞いた。
小林聡美(こばやし さとみ) |
――まずは今作の主人公であるアキコを演じられた感想をお聞かせ下さい。
「そうですね……20代でどんどん仕事を変えたりせず、ある程度、会社でキャリアを積んでベテランと言われる歳にまでなってから新しいことを始めるというのは、やっぱりそれなりの覚悟と勇気がいることだと思うんです。まぁ、物語だからポーンと出来るというのもあるかもしれませんけど(笑)、覚悟を決めればそうしてもいいんだ、そういうことも出来るんだというか。物語の流れは静かだけど、そういうチャレンジ精神にあふれているところを感じてもらえると、また違った見方が出来るのかなって思いますね」
――アキコの亡き母の店の常連客役の光石研さん、塩見三省さんをはじめ、アキコを取り囲む周りの人たちがとても心優しく親切ですよね。
「みんないい人たちばかりですよね。ご近所にああいう人たちがいて、日常がああいう人たちとの関わりの中で続いていくことは幸せだと思います。私もあまり友だちが多い方ではないですが、アキコのようにあそこまで暮らしに入り込んだ関係かどうかは別としても、いざとなったら助けてくれそうな人がいることはありがたいですし、大事にしたいと思います」
――岸惠子さん演じる料理学校の理事長・山口先生、もたいまさこさん演じるちょっと毒舌だけど本当は優しい喫茶店のママも印象的でした。
「会社を辞めるからと、先生にあいさつに行くシーンは、アキコがどんな思いだったのかを想像すると切なくなります。岸さんはキャリアのある素晴しい女優さんですけど、『素顔を見られたくないから個室が欲しい』とか(笑)、そういうつまらないことにこだわらない"大きさ"みたいなものをすごく感じました。あくまでもお芝居をしに来たんだ、という潔い感じがとてもかっこよかったです。もたいさんは……あの衣装と髪型ですでに反則という感じですよね。あの人が出て来たらどんな話だったのかも忘れてしまうというか、そう考えるとミスキャスト? だったかも……(笑)」
――ストーリーやキャストはもちろんですが、ドラマの空気感にぴったりなロケ場所も気になりました。
「もたいさんの喫茶店は、ロケでお借りしたカレー屋さんの入口に壁をくっつけてまったく違う外観にしてますし、さりげなくすごいんですよ。私はロケ場所のセレクトには関わってませんが、あのへんの土地勘はありますので、もしかしたら芝居の中にリラックスした地元感(笑)が出ているかもしれないです」
――脚本の「カーゴパンツ」というクレジットは小林さんのペンネームでは?
「いえいえ、そんな大変なことは出来ません(笑)。あれは3人くらいのユニットで、脚本に関しては、セリフの言い回しとかは多少変えたりしましたけど、基本的には何の問題もなく、すんなり読めて素直に演じることが出来ました」
――作品では料理をするシーンがふんだんに盛り込まれてますが、料理を美味しく見せるコツみたいなものはあるのでしょうか。
「やっぱりリズム感ですね。あんまりドタバタしても、 ゆっくりしてもあれですし。軽快な感じが大事だと私は思います。監督は料理のことに関して何も言いませんので、基本的には任せられっぱなしでした」
――ちなみに、小林さんの好きなサンドイッチとスープは何ですか?
「なんだろう……カツサンドとか好きですね。スープは……野菜がいっぱい入っているのが好きです。クリーム系ではなくて、コンソメ系で(笑)」
――岸さん演じる山口先生のセリフで「自分が何を好きか分かっている人は、いろいろな力を呼び込む」という言葉があるのですが、小林さんはどう思いますか。
「そう思います。特に岸さんに言われるとそうなのかなって(笑)。自分の好きなことが分かっていると無駄がないというか、迷いがなくなるというか。でも、なかなか簡単にというわけにはいかないでしょうね。そこに行くまでにはなんとなくつまずづいたり、いろいろあるんでしょうけれど、最終的にはそうなっていくのではないかと。私自身は仕事が好きというよりも、いろいろな人と何かを作っていくことが楽しいし、面白いんですよ。闇雲にお芝居だけするのが好きなら一人芝居でもいいじゃん、と思いますし(笑)」……続きを読む