意外に多い"才色兼備"の女性が"ダメ男"と結婚するケース

誰もがうらやむような才色兼備の女性が、うだつのあがらない"ダメ男"と結婚するというケースは意外に多い。その場合、妻となった女性は結婚後も仕事を続け、職場では上司や同僚からも一目置かれるような出世コースを歩みつつ、家に帰ればダメ男にかいがいしく尽くしたりする。仕事と家事を完璧に両立させ、しかも美人ときたら、まさに非の打ちどころがない良妻だろう。世の男性たちが思い描く妻の理想像かもしれない。

そして、一方のダメ男はどうなるのか。妻が美人で高収入、さらに家事も完璧であるため、結婚生活を送っていくうちに、ますます妻に甘えるようになり、ひどいケースでは働かなくなったりする。やがて妻はそんな夫に対してストレスが溜まっていき、他はすべて完璧な彼女にとって、夫婦の問題だけが唯一の悩みの種になるわけだ。

こういうケースを見ると、周囲の男性としては不思議でしょうがないだろう。なぜ彼女ほどの才色兼備の女性が、ろくに働きもしないダメな男に引っかかってしまうのか。彼女だったら、もっと好条件の男を選べただろうに……。実際、世の中を見渡してみると、"だめんず"を選ぶ傾向のある女性には、美人で仕事ができる才色兼備タイプが驚くほど多いのだ。

エステサロンを経営するM、悩みは昨年結婚した"ダメ男"

都内でエステサロンを複数店舗経営する女性社長のMも、その手のタイプだ。首都圏の一流大学出身のMは学生時代に読者モデルを務めていたほどの美人で、アメリカ留学の経験もあることから英会話も堪能な、まさに才色兼備の女性だ。

そんなMは大学卒業後、某化粧品メーカーに就職すると、そこで培ったキャリアを生かして30歳のときにエステサロンを起業。それから3年が経った現在も、Mが経営するエステサロンは順調に業績を伸ばしており、業務の拡大も著しい。Mは33歳の若さにして、数千万円の年収を誇る敏腕女社長として、周囲の男性の憧れの的だ。

しかし、そんなMにも悩みがある。それは昨年結婚した夫が、いわゆるダメ男であることだ。夫はMより3歳年下で、いまだにアルバイトをしながらロックバンドを組んでミュージシャンとして活動中。一応、CDデビューはしているらしいのだが、その内実は楽曲製作経費をバンドメンバー全員で負担して、インターネット通販で直売するというレベルだ。したがって、当然音楽活動での収入はゼロに等しく、経済的観点だけで考えれば、夫はミュージシャンではなく、いわゆるフリーターだ。しかも、そのアルバイトも最近はどういうわけか休職中。よって現在は、妻の収入に寄生しているヒモみたいなものだ。

なぜ、"ダメ男"に魅力を感じるのか!?--その理由とは…

Mはそんな夫に困惑しながらも、心のどこかで開き直っている部分もあるという。両親から、「なんで、あんな男と結婚したのか」と抗議されることもあるらしいのだが、それが自分の性分なのだから仕方がない。思えば夫と出会ったばかりのころ、当時はまだ化粧品メーカーの社員だったMは、彼の全身から醸し出されていた頼りない雰囲気と冴えない生活ぶりに、どういうわけか魅力を感じてしまったのだ。

おそらく、そんな彼と一緒にいることが自分にとっての安心材料だったのだろう。Mは当時の気持ちをそう述懐する。

起業を目指して化粧品メーカーでバリバリ働いていたころのMにとって、仕事のできる男性は最大のライバルだった。どうせ女はいつか結婚して寿退社するのだから長期的で重要な仕事は任せられないという、従来の女性社員に対するイメージを覆そうと、躍起になって仕事に励んだ。Mの中には、女だからと舐められたくない、男に負けないくらい評価されたいという強い意志があり、だから自分より仕事のできる男は尊敬や羨望の対象ではなく、いつしか敵意と衝突の対象になった。そして、そういう上昇志向の気丈な意識はプライベートにも影響するようになり、当時のMは仕事のできる優秀な男と一緒にいると心が休まらなくなった。恋愛なんてもってのほかである。

だから、自分よりあきらかに"格下"に見えた夫に引かれたのだ。Mは高校時代から男に負けたくない一心で猛烈に受験勉強をして一流大学に入り、社会に出てからも優秀な男たちと競争する人生を送ってきたため、高卒で好きな音楽を自由に楽しんでいる夫のことが新鮮に映った。しかも夫は素直な性格をしており、年下でもあるためか、妻のことを「君は俺よりも頭が良くて優秀な人だ」と堂々と認める。これが仕事のできる優秀な男になってくると、そうはいかない。彼らはプライドが高く、女に負けることを嫌うため、たとえば口論になったら、意地でも女を負かそうと弁舌のギアがトップに入る。しかし、一方の夫はたとえ口論になったとしても、「俺は馬鹿だから、君には勝てないよ」と言って潔く負けを認めてくれる。そんな夫の性格が、Mにとっては最高の癒しだったのだ。

なぜかダメ男に引かれてしまう才色兼備の女性の心理とは、こういうものなのかもしれない。優秀なキャリアウーマンとは、すなわち男に負けまいと必死に努力を重ねてきた気丈な女性であることが多い。そんな女性が家庭内に求めるものは、男性に対する依存心よりも安心感や癒しであろう。男女の関係とは、お互いの枯渇している部分を補完し合うことで成り立つのだ。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。早稲田大学卒業。これまでの主な作品は「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」「雑草女に敵なし!」「Simple Heart」など。中でも「雑草女に敵なし!」は漫画家・朝基まさしによってコミカライズもされた。また、作家活動以外では大のプロ野球ファン(特に阪神)としても知られており、「粘着! プロ野球むしかえしニュース」「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「野球バカは実はクレバー」などの野球関連本も執筆するほか、各種スポーツ番組のコメンテーターも務めている。

オフィシャルブログ

山田隆道ツイッター