これが新潟名物「もも太郎」。レトロなロゴとパッケージにも注目

「もも太郎」と聞くと、昔話の『桃太郎』を思い浮かべる人が多いだろうが、新潟ではアイスを思い出す人が多いという。実は、新潟には昭和初期から販売されている「もも太郎」といういちご味のかき氷バーがあり、夏の定番になっているのだ。昔話より先に思い出す新潟県民おなじみの味「もも太郎」とは、一体どんなアイスなのだろうか。

「もも太郎」は現在、新潟県内の3つの会社が製造している。そのうちのひとつ、新潟市内で氷や氷菓の製造・販売を手がけるセイヒョーに話を聞いてみた。

屋台の「もも型」かき氷から商品化

「もも太郎」は、実は最初から「もも太郎」だったわけはない。古い話で定かではないそうだが、昭和初期、新潟のお祭りなどの屋台では、桃の形をした木型にかき氷といちごシロップを入れたものが「もも型(がた)」として売られていた。

それが屋台の味として定着し、その後商品化されて「もも太郎」になったと言われているそうだ。セイヒョーでは、昭和21年(1946)頃に販売を開始した。

「もも太郎なのに、いちご味?」と不思議に思った人がいるかもしれないが、味ではなく桃の木型がネーミングの元になっている。また、初めからアイスクリームとして開発されたわけではなく、屋台の味が商品になったというユニークな誕生の仕方をしていることが分かった。

凍結した氷粒がたっぷり! いちご味のかき氷バー「もも太郎」(1本50円)

セイヒョーの「もも太郎」は重さ135kgの角氷を砕いて、シロップを混ぜて凍結させて作る。氷の製造を手がけている会社だけあって、サックサクの氷が魅力。凍結した氷粒たっぷりのかき氷バーで、かき氷のような食感とサッパリした後味が暑い夏にピッタリだ。

「もも太郎」だけに、姉妹品は「金太郎」

新潟県内では、夏場になるとスーパーやコンビニのアイスコーナーに「もも太郎」がズラリと並ぶ。価格は1本なんと50円という破格の安さ。子供や学生さんも気軽に買えるのも人気のポイント。6本入りのマルチパック(300円)もあり、こちらはファミリー層を中心に人気。冷凍庫には必ず「もも太郎」が置いてあるという家庭も珍しくないという。

このように新潟県民にとってはド定番の商品だけに、全国で販売されていると思っている人が多いらしい。実は基本的に新潟県だけの販売で、他県で目にすることはまずない。そのため県外に引っ越した人などからは、「もも太郎が売ってない。どこで買えるのか」といった声が寄せられることがあるという。

そんな「もも太郎」の姉妹商品として、平成17年(2005)には、あずき味のかき氷バー「金太郎」(1本60円、ファミリーパック300円)が発売された。「もも太郎」と同じ氷で作られていて、「サクサクの氷がおいしい」「和風テイストで食べやすい」と幅広い世代に人気だという。

「金太郎」という名前は、もちろん「もも太郎」にちなんだもの。昔話をイメージさせるレトロな名前は、「分かりやすい」「親しみやすい」と好評だとか。確かに、子供たちや年配の人も覚えやすいので、このネーミングも人気の秘密なのだろう。

ちなみに同社では「もも太郎」「金太郎」以外に、柿味の「うらしま亀太郎」もあったが、現在は販売を終了している。

東北の幻のアイスが新潟で復活「ビバオール」

もうひとつ、セイヒョーにはユニークなアイスクリームがある。それは、東北で生まれて新潟で復活した「ビバオール」(1本80円)だ。

懐かしさ漂う棒アイス「ビバオール」(1本80円)。いちご柄のデザインがかわいい

「ビバオール」は1970年代、東北地方で製造されていたいちご味のアイス。当時1本30円で売られ、人気を博した商品だったが、平成9年(1997)に販売が終了し、幻のアイスになってしまった。

「ビバオール」の中には、甘酸っぱいいちごソースが入っている

その後、東北の人を中心に復活を願う声がインターネットの掲示板に書き込まれ、それを見たセイヒョーの開発担当者が元の製造会社と交渉、平成16年(2004)に東北地方と新潟で再販売された。

「ビバオール」は、外側はクリーミーないちごミルク味。中心に甘酸っぱいいちごソースが入っている棒アイスだ。昔ながらの優しい味が再現されていて、東北の30~50代の人たちからは、「懐かしい」「やっぱりおいしい」と復活を喜ぶ声が届くという。他社製品ながら再販を手がけたセイヒョーの粋な計らいが光る、一度食べてみる価値あり!のアイスだ。

この夏、新潟県を訪れる機会があったら、地元で愛され続ける「もも太郎」と「金太郎」、そして新潟で復活した「ビバオール」の味を是非確かめてほしい。また、通販でも購入できるので、「懐かしい」「食べてみたい」という人は「もも太郎ウェブショップ」「ビバオールウェブショップ」をチェックしてみよう。