ドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」は、マフィア出身で元受刑者のルー・フェランテが世界各地のギャングを訪ねた新番組『ギャングの掟』を21日から放送する。

21日から放送される新番組『ギャングの掟』

全4話構成の同番組は、ルーが自身の知識と人脈を生かしてエルサルバドル(21日12:00~13:00)、フィリピン(21日13:00~14:00)、アメリカ(28日12:00~13:00)、イタリア(28日13:00~14:00)の悪名高いギャングを訪ね、組織の知られざる起源や歴史、掟を明らかにしていく。ルーは、マフィアのボスにインタビューを行ったほか、刑務所の潜入取材や警察の強制捜査にも同行した。

ルー・フェランテ
元マフィア。10代で配達トラックを盗んだ際、共に罪を犯したギャングが、のちにニューヨークを拠点に活動する悪名高きギャングの一員となり、本人もマフィアの道へ。その後、最厳重警戒体制の重犯罪刑務所など複数の刑務所で10年近くを過ごし、そこで改心した。現在は、その体験を社会に発信することに使命感を抱き、2冊の著書を執筆。

日本と比べて明確に異なるのが、刑務所内の環境。エルサルバドルにあるイサルコ刑務所は、同地のギャング「18番街(エイティーンス・ストリート)」専用の刑務所。刑務所内でも、敵対する組織との抗争が続くことから、"18番街の隔離"という手段が取られた。刑務所の周囲には、弾倉を6~8個装着した兵士が見張っているが、彼らはギャングによる報復を恐れて覆面をつけている。設計上の収容人数が336人に対し、現在は838人が収監されており、過密状態の中で争いは絶えないものの、「ギャングの掟」によって殺人は起こっていない。

一方、フィリピンのビリビッド刑務所は、国内3万6,000人の受刑者のうち、2万人が収監されている世界最大級の刑務所。面会者が収監者の居住棟に入ることができるということだけでも世界で例がないのだが、この規模で看守は40人しかいない。ギャングが刑務所内を取り仕切っていることから、看守は「問題を起こせば面会日を減らす」と脅して彼らを管理している。刑務所内では殺人も珍しくなく、中には頭蓋骨がない人骨が見つかったこともあった。

ルーは、エルサルバドルに訪れた際、「18番街」の最高位に君臨するボスで、何千もの殺人の罪を犯し、米FBIから「アメリカ合衆国史上、最も危険なギャング」とレッテルを貼られているビエホ・リンと面会する。エルサルバドルが、世界で2番目に殺人事件発生率が高かったのはこの「18番街」とそのライバル組織「MS-13」との抗争が原因とされていたが、取材開始時には1日50件あった殺人も全く耳にしなくなる。2大ギャングが停戦協定を結んだためであった。

18番街のライバル組織「MS-13」は組織的な効率性と極端な冷酷さで知られ、メキシコの麻薬カルテルとの強いつながりを持っていると言われている

2012年3月26日、エルサルバドルの刑務所内で、MS-13のメンバーは、カトリック大司教、軍頭、警察従軍牧師などが共同で祝うミサに出席した

ニューメキシコの振興ギャング「ブルケニョス」は、対抗ギャングが刑務所で厳しい管理下に置かれている間に、そのギャングを身内に取り込むことによって急速に勢力を伸ばした

2008年11月、イタリアの国家憲兵警察が公開した"携帯電話に見せかけた銃"は、4発の弾丸を装填できる構造になっていた

こうして刑務所内外問わず、「掟」を重んじるギャングたち。入団を希望する際にも、その厳しい掟が待ち受けている。1965年頃、ラテンアメリカ系移民によって、ロサンゼルスのストリートで結成された「18番街」は、「敵を1人殺すこと」を入団の掟としている。一方、フィリピンのギャング集団「TBS(トゥルー・ブラウン・スタイル)」では、忠誠の証のために布で目隠しをされて30秒間のめった打ちに耐えなければならない。

別の番組制作者があるギャングのドキュメンタリー制作を試み、公開1年以内に殺されたことなどもあり、取材は命懸け。それでもルーは「俺は彼らの言葉を信じる。ビジネスマンの言葉は信用ならないが、ギャングは約束に命を懸けるから」と説明し、「マフィアでは、ボスの許可なしに誰かを殺せば自分が殺される」と語っている。

イサルコ刑務所内の様子

収監者の言葉

体中に組織への所属を表すタトゥーを入れているが、まぶたには"母さん ごめん"の文字。
「いつか死んだ時(まぶたを閉じた時)、母親を悲しませたことを謝りたいから」
「息子には俺と同じ道を歩んでほしくない」(息子は、現在殺人罪で服役中)
「俺たちはギャングであると同時に普通の人間でもある。家族や愛する人もいる」
「敵を殺したことは後悔していない。敵ならね…撃ち合いの巻き添えで、子どもが死んだことがあった。そういうことがあると頭から離れない。今も涙が出る」
「服役を終えてシャバに出たら、これからは神や家族、自分のために生きたい」
「停戦が続けば娘と面会許可が下りる。いい目標だ。停戦協定を守り抜く勇気をくれる」
「ギャングと娘と、どっちを選ぶ?」の質問に、「2つは別物。両方愛している。選ぶことはできない」
「ひと言で1,000人の殺し屋を動かせる。どう使うかは俺次第」
「罪状は?」の質問に、「殺人、 殺人未遂、窃盗、 誘拐…あっ、あとスピード違反と…」
「欲しいものは?」の質問に、「心の平穏」
「刑期は何年か?」の質問に、「罪状だけだと75年。ボスだから刑期プラス10年」
「刑期は何年か?」の質問に、「終身刑2つ」
「ここから出られると思う?」の質問に、「いや、ここが俺の世界だ」