美しい自然に囲まれた美作市

岡山県北東部に位置する美作(みまさか)市は、古くから吉井川を往来する高瀬舟による物資の輸送などが活発に行われ、交通の要衝として発展してきた街。そんな美作で、いま「どぶろく」が注目されているという。一体どんなどぶろくなのだろうか?

魅力づくりのために「どぶろく」に着目

「現在、美作市では2カ所で『どぶろく』が生産されています」と美作市役所農業振興課係長の河副基彦さんは言う。どぶろくとは、米、米麹、水に酵母を加えて発酵させた自家製のお酒。原料は清酒と同じだが、こさないためにどろっとした見た目で飲みごたえがあることが特徴だ。

なぜ、美作でどぶろくが作られているか? それは、美作市が「どぶろく特区」に認定されているからだ。どぶろく特区とは2002年の構造改革によって、どぶろくの製造と販売が許可されるようになった特別区域を指す。

もともとどぶろく造りは、違法行為として禁じられていたのだ。1989年には、「自分が飲む酒を自分で造って何が悪い?」とどぶろく造りの正当性を訴えた男性の上告が棄却された、「どぶろく裁判」が話題となったこともある。

「どぶろく湯郷」は紅と白の2種類

前置きが長くなったが、美作市はどぶろく特区に認定されて以降、地元産の原料を用いた独自のどぶろく造りに励んでいる。そうして生まれたどぶろくのひとつが、美作市湯郷で造られている「どぶろく湯郷」。紅と白の2種類があり、紅麹を使用した紅は見た目にもかわいいピンク色で、女性にも人気だ(白は500mlで1,100円、紅は500mlで1,400円。ともに箱代込み)。

もちろん、かわいいだけではなく味にも定評がある。2010年に開催された「第1回TOKYOどぶろくフェスタ2010」(酒文化研究所主催)では、全国から集められた75品中、上位7位に選出されたのだ(優秀賞に該当)。自家製のあきたこまちに地元の水と米麹のみを加えて発酵させたというこちらのどぶろくは、1本ずつ手詰めしているため、手作りの風味を味わえることも人気の理由なのだろう。

「もったりした口あたりと鼻を抜ける香りがやみつき。おなかにたまるので、つまみがなくても十分満足できます」というファンも多い。

微炭酸でフルーティーな香りのどぶろく「武蔵の国れいし」も人気

そしてもうひとつの美作生まれのどぶろくが、美作市沢田で生産されている「どぶろく武蔵の国 れいし」(720mlで2,100円)。こちらは男性受けしそうなスッキリしたデザインの逸品だ。製法にもこだわりがあり、ビン詰めした後に凍結、氷温熟成して、約1カ月かけて酵母をやさしく眠らせるのだ。完成した商品は、キンキンに冷やしてからグラスにそそぐのがポイントという。

「生ならではのフレッシュ感とほのかな甘さがたまらないですよ」と教えてくれたのは、こちらの酒で晩酌することもあるという市内在住の20代の女性。聞けば、友人が集まるホームパーティの際にも用意しておくことが多いという。20代でどぶろくを愛飲するとは……、美作市ならではの文化とも言えるかもしれない。

美作国建国1300年の今年、岡山が熱い!

これらのどぶろくは、市内の道の駅や宿泊施設、酒販取扱店で購入することができるので、岡山を訪れた際には是非お店に足を運んでほしい。試飲希望なら車はNGなので、電車で訪れて岡山観光も楽しもう。

ちなみに美作市は今年、「美作国(みまさかのくに)建国1300年」の年に当たることから、「美作市を含む岡山県東北部の10市町村が連携し、美作国建国1300年記念事業に取り組んでいます」とのこと(美作市役所田園観光部商工観光課主事・新免詩織さんの弁)。史跡ウォークや郷土の偉人・宮本武蔵のラッピング列車、食文化再現イベントなどが2014年3月まで随時開催されるので、オフィシャルページでチェックしてみよう。

また美作市には、全日本F3選手権などが開催される「岡山国際サーキット」や、宿場町の雰囲気を残している「古町町並み保存地区」など、昔から現代に至る観光スポットも多数点在する。湯郷温泉に浸かってから、おいしい「どぶろく」を飲んで、美作市内のスポットを巡るってみるのもオススメだ。

●information
美作観光ナビ