昔から商業施設が多い大宮駅前

伊勢丹浦和店のある浦和駅前

まださいたま市として合併する前・浦和市と大宮市だった頃、両市はライバル関係で有名だった。かたや県庁所在地、かたや県ナンバー1のビッグタウン。さてその後、ライバル関係はどうなったのだろうか?

文教の街VS商業の街。お互い引かず!

文教の街として名高くサッカー文化も華やかな浦和。新幹線が停まる駅があり、商業施設やビジネスのオフィスが多い商業の街・大宮。互いに京浜東北線で結ばれ、今では共にさいたま市。仲良くなったかと思いきや、やっぱりお互いのライバル心は消えてはいないようなのだ。

「大宮の繁華街は大きいけれど、昔からお屋敷町と言われていた浦和の方が、雰囲気が落ちついていていい」(浦和在住・30代男性)。

「浦和には県庁があるし、埼玉の中心と言えば浦和じゃないですか? 距離的にも都心に近いですし」(浦和在住・30代会社員)。

と浦和派が言えば、

「買い物は大抵大宮で済むし、気分転換に違う買い物をしたければ都内に行きますね。大宮の方が新幹線も停まるし、移動が便利ですね」(大宮在住・30代OL)。

「大宮だって大宮公園のあたりは落ち着いていますよ。住宅街の落ち着きと駅前の賑(にぎ)やかさのメリハリが大宮の魅力」(大宮在住・30代主婦)。

と大宮派が応戦。もっとも「正直、街のカラーが違うので、ライバルって言われても何を争うの?」というコメントもあった。

現在さいたま市の人口は平成25年3月時点で124万5,326人。地方からも年々人が流入し、住む人も多種多様だけに、浦和VS大宮のライバル意識を持っているのは、「昔から住んでいる人と、サッカー(浦和レッドダイヤモンズと大宮アルディージャ)のサポーターくらいじゃない?」という声も聞こえた。

浦和レッドダイヤモンズはJリーグのオリジナル10としての歴史とJリーグ随一の人気を誇る

大宮アルディージャだって負けていない。街灯につけられたフラッグがまちを彩る

とはいえ、同地域の旧市対決は興味深いので、それぞれの特徴などを比較してみた。

路線数では大宮に、駅名の多さでは浦和に軍配

まずは停車する電車の種類はといえば、浦和駅は高崎線、宇都宮線、京浜東北線のみ。浦和市だった頃など、これが他県民から「埼玉の県庁所在地ってどこ?」と言われるに至った理由のひとつに上げられそうだが、3月よりやっと湘南新宿ラインが停車するようになった。

一方、大宮駅は京浜東北線、宇都宮線、湘南新宿ライン、高崎線、埼京線、川越線、東北・山形・秋田・上越・長野新幹線、東武野田線、埼玉新都市交通伊奈線がある、県内ナンバー1のターミナル駅だ。この勝負に関しては、大宮に有利な状況は変わらなそう。

そんな路線数では分の悪い浦和だが、浦和とつく駅名では大宮に勝てるのだ。ざっと検索してみるとJRの浦和駅、東浦和駅、南浦和駅、西浦和駅、北浦和駅、中浦和駅、武蔵浦和駅、そして埼玉高速鉄道の浦和美園駅で8つ。

駅名に大宮とつく駅は全国で9つあるが、埼玉県内にあるのは大宮駅、東武野田線の大宮公園駅のみで、他は京都など全国にちらばっている。純粋に埼玉にある駅名の多さでは浦和の勝ちとなる。

ちなみに、東西南北そろっているのは全国でも浦和だけだとか。これだけ浦和とつく駅があると、他県民が降車駅を迷うこともしばしば。サッカーの日本代表の試合もよく行われる、埼玉スタジアム2002の最寄り駅はJR浦和駅ではなく、埼玉高速鉄道の浦和美園駅なのでご注意を。

県庁を有する浦和のカバー力に、大宮がマニアックさで迫る

県の主な施設数でも比べてみよう。浦和には埼玉県県庁、さいたま地方裁判所、県立図書館、県立美術館、埼玉県警、テレビ埼玉、NHKさいたま放送局、エフエム浦和、埼玉会館などがある。さすが、県庁所在地・浦和という感じだ。

しかし、大宮はマニアックさと新しさで優勢。鉄道博物館やさいたま市大宮盆栽美術館、プラネタリウムが見られるさいたま市宇宙劇場や、オフィス、店舗などが入ったJACK大宮などもある。この勝負は引き分けか?

浦和駅から徒歩圏内の埼玉県県庁

歴史については、「浦和は歴史ある宿場町。大正以降は文化人も多く移り住み、“鎌倉文士に浦和画家”なんて言われたんですよ」(浦和在住・40代主婦)と、浦和派が歴史を誇る。

一方大宮も、「大宮には平安時代の延喜式神名帳にも出てくる氷川(ひかわ)神社があります。大宮という名前も氷川神社を“大いなる宮居”とあがめたということからきてるんですよ。その氷川神社は武蔵国一の宮という格式ある神社で、大宮はその門前町として栄えたんです」(大宮在住・40代会社員)と譲らず。こちらも引き分け。

関東を代表する神社、氷川神社

ショッピングに関しては浦和が猛追中

女性にとって大切なのが商業施設の充実度。駅前のショッピングビルと言えば、浦和は、浦和コルソ、伊勢丹 浦和店、浦和パルコ。一方大宮には、LUMINE大宮店、そごう大宮店、大宮タカシマヤがある。昔は、商業施設数は大宮の方が断然多かったが、2008年に浦和住民待望の浦和パルコができたことから追いつかれつつある形に。これで浦和駅前は西口、東口共に大型商業施設がそろい、ますます便利になった。

「浦和は色々と便利になってきたけど、大宮は駅構内が華やか。エキナカのエキュートでグルメも買い物も済んじゃいます」と大宮エリア在住のOLさん。

「でも浦和の方が今、再開発中なのでこれからが期待できる。浦和なら比較的ゆったり見られる」(浦和在住・40代OL)というご意見も。

浦和駅前の浦和パルコ

大宮駅からすぐの大宮タカシマヤ

最後に、浦和、大宮の地名が登場、または、モデルになったと思われる舞台が登場するマンガや文学作品を紹介しよう。

浦和に縁のあるマンガ作品で有名なのがなんといっても『赤き血のイレブン』(市立浦和南高校が舞台)、『エースをねらえ』(県立浦和西高校がモデルと言われている)。ほか、『行け! 稲中卓球部』『キャプテン翼』『おおきく振りかぶって』『Jドリーム』(物語の最初の方で、主人公が浦和レッズに所属している)など、なぜかスポーツモノ、部活モノが多い。

また、絵本の『ノンちゃん雲に乗る』では、作者石井桃子が幼い頃に住んだ浦和の街の様子を描いている。他にも多数の文学作品や映画に登場。

一方、大宮はマンガでは『カイタン』、『友子の場合』、などに登場。文学作品の森鴎外の『青年』、また井伏鱒二の『普門院さん』などにも登場している。

週末の小旅行に、愛読書の舞台を訪れてみるのも楽しいかも!