ゲーム化もされている初音ミク。写真はセガから3月7日に発される『初音ミク -Project DIVA- F』

「ミクパ」

カタカナ3文字から成るこの単語は、ほんの数年前には存在すらしなかった。それが今や、インターネットにおける音楽シーンを語るのになくてはならない言葉になっているのだから、時代の変化のスピードとは恐ろしいものである。

ミクパとは、「初音ミクライブパーティー」の略称だ。もともとはミクの名前にちなんで毎年3月9日に開催されるライブコンサートとしてスタートしたものだったのだが、あまりの人気ぶりからそれ以外の日程でも開催されるようになり、2011年の第1回から現在までに海外ツアーを含め計6会場、10公演を開催。延べ2万5000人以上の観客を集める一大フェスに発展しているのだ。

ではなぜミクパがこれほどまでに支持を集めているのか。それはずばり、"本物の初音ミクに会える"コンサートだからである。

初音ミクについて基本的な知識をお持ちの方であれば、「そんなバカな」と思うかもしれない。簡単に説明しておくと、初音ミクとは2007年に発売されたDTMソフトウェアで、あらかじめ録音された人間の声を合成して歌うボーカル・アンドロイド=ボーカロイドだ。初音ミクというキャラクターはそのボーカロイドのイメージキャラクターであり、実在するわけではない。実在しない初音ミクに会えるというのはなんともおかしな話ではないか。

しかし、そのおかしな話を現実のものにしてしまったのが「ミクパ」なのだ。仮にあなたがミクパに参加したとして、どんな体験が得られるのか、シミュレーションしてみよう。

回を追うごとに技術や演出レベルが向上

3月9日。あなたはサイリウムを持ち、会場入りする。そこにはすでに大勢の観客がひしめき合っており、初音ミクの登場を待ちわびている。

開演時間になり、会場の照明が落ちる。観客から一際大きな歓声が上がる。いよいよミクパのスタートだ。

イントロが鳴り響き、観客席にはサイリウムの光があふれる。そしてイントロ終了とともに、闇に包まれたステージに初音ミクが現れる。もちろん初音ミクに扮した人間などではない。パッケージやニコニコ動画で見る初音ミクの姿そのものである。そうして降臨したミクは、ステージを左右に走り、くるくると表情を変えながら人気ボカロ曲を歌い踊るのだ――。

この一見信じがたい光景は動画共有サイトを通して瞬く間に世界中へと拡散され、大きな話題となった。

種明かしをしてしまえば、ミクパに現れる初音ミクはディラッドボードと呼ばれるスクリーンに映しだされたCG映像である。しかし、会場で見ているとそこにスクリーンがあるということはほとんどわからない。ディラッドボードは透過スクリーンなので背景が透ける上に、投影に使われているプロジェクタが通常よりもはるかに高画質なこともあって、観客は違和感なく初音ミクの存在を受け止められるのだ。映像といってもちゃんと立体感があるため、斜めから見ても不自然に映らないように調整されている。非常に高い技術が使われていることがわかる。

また、回を追うごとに技術や演出レベルが向上していることも見逃せないポイントだ。特に昨年行われたミクパ2012ではスクリーンが追加されたり、スポットライトやスモーク、レーザー演出などがふんだんに盛り込まれるなど、単純にライブコンサートとしても一つの到達点に達しているといえる。

意外なコラボレーションも披露

ミクパの魅力はそれだけではない。鏡音リン・レンや巡音ルカ、さらにはKAITOなどの"初音ミクファミリー"も姿を現し、それぞれの持ち歌を熱唱してくれるのだ。人気のボカロキャラたちがデュエットし、ときには意外なコラボレーションも披露する。ミクパでしか味わえないスペシャルなステージだ。

ボカロは人間と違って休憩も必要ないし、衣装チェンジの時間もない。くるっとターンすれば、もうそこには今までと違う衣装に身を包んだミクが微笑んで立っているし、右に消えたと思えば、次の瞬間には左からミクが飛び出してくる。そうした人間では不可能な演出やステージプレイも、ミクなら楽にこなすことができる。

ボーカロイドは機械音声なんだから動画で聴こうがライブで聴こうが同じだろう――そのように考えている人にこそ、ミクパをオススメしたいと思う。加えて、ミクについてあまり詳しくないという人にも見てもらいたい。少なくとも、「ついに時代はここまできたのか!」という驚きは保証しよう。

そんなミクパが、来る3月9日に満を持して和歌山にやってくる。しかも、今回はなんと、WOWOWでの独占生中継が予定されているのだ。縦横無尽に動くカメラワークで、"生きた初音ミク"をより高画質に堪能してほしい。

また、3月9日の"ミクの日"の盛り上がりに合わせて、様々な関連商品も発売される予定となっている。

プレシャスメモリーズからは、初音ミクの公式イラストを描いたKEI氏による新規描きおろしイラストを含むトレーディングカードゲーム『初音ミクブースターパック』(3月9日発売)が、セガからは初音ミクの人気ゲームシリーズ最新作『初音ミク -Project DIVA- F』(3月7日発売)が、それぞれ発売される。

記念すべきミクの日に向けて、様々なイベントや企画で盛り上がりを見せるボカロシーン。フェスティバルは、もうまもなくだ。

『生中継! 初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪) -39's Spring the 3rd Synthesis-』は3月9日(14:00~)にWOWOWライブで生中継。