東京工芸大学は、日頃から音楽を好んで聴いている12歳~39歳の1,000人を対象に「ボーカロイドに関する調査」を実施し、その結果を発表した。

好きな音楽のジャンル

まず、好きな音楽のジャンルについての設問は「ポップス・J-POP」が最も高く83.0%、次いで「アニメソング」38.3%、「ロック」37.2%、「ヒップホップ・ラップ」26.4%と続いている。「ボーカロイド曲」17.4%は8位で、ボーカロイド曲を好む割合は若年層、特に女性で高く、10代女性では4割(40.0%)が好きな音楽ジャンルとして挙げている。

「初音ミク」の認知について

そして、ボーカロイドの代表格である「初音ミク」の認知を聞いたところ、「どのようなものか知っている」は56.4%、「名前は知っている」は38.6%と、それらを合計した認知率は95.0%。年代別で見ても、10代から30代全体でも9割超が認知しており、広く認知されていることが伺える結果に。

続いて「初音ミク」や「鏡音リン・レン」など多数の人気キャラクターを生んだ製品群の次世代にあたる「VOCALOID3」シリーズの中で、昨今注目を集めつつある「Megpoid」(メグッポイド)、「IA」(イア)、「蒼姫ラピス」(アオキラピス)の認知も合わせて聞き、声質の違いなどで複数のバージョンが発売されている「Megpoid」の認知率が23.7%、VOCALOID3で初登場し透明感のある声質が話題となった「IA」の認知率が17.5%、スマートフォンアプリも登場した「蒼姫ラピス」の認知率は12.3%という結果となった。これらの製品(キャラクター)の認知率は、音楽の作編曲を好む層や若年層で高いようで、今後これらの製品の中から"ポスト初音ミク"が誕生する可能性もある。

初めて初音ミクを見知ったもの

さらに、「初音ミク」を認知している人を対象(950名)に、その認知経路を聞いたところ「動画共有サイト」が36.5%、僅差で「TV」(34.2%)。動画共有サイトを介して「初音ミク」を知った割合は10代(42.4%)、20代前半(53.2%)、TVを介して見知った割合は30代前半(41.7%)、30代後半(42.0%)。この結果について、ボーカロイド技術の開発元であるヤマハは「2010年に行った街頭調査では、初音ミクを知っている方は6割半程度、30代では5割に達していませんでした。また、TVやラジオを見て知った、という方は当時1割もいませんでした」とコメントを寄せている。動画共有サイトで若年層を中心に盛り上がりを見せた後、UGC(自主制作コンテンツ)の成長事例として、テレビなどのニュース番組で伝えられ、より認知を広めていったことが伺える。

ボーカロイドのどんなところに魅力を感じるか

ボーカロイドのどんなところに魅力を感じるかという設問(複数回答)に対しては、「いろいろなジャンルの曲がある」が43.2%、「動画共有サイトなどで無料で聴ける」が41.8%、「生身の人間では歌えないような曲の表現」が40.1%、「ボーカロイドのキャラクター」が39.2%、「二次創作がしやすい」が36.2%という結果。逆に「特に魅力を感じない」という回答は15.8%寄せられている。

現在ボーカロイドのコンテンツは、楽曲のみならずゲームやカラオケといったジャンルにも普及しつつあるが、「ボーカロイド曲をカラオケで歌ったことがあるか」という質問には「経験がある」が23.5%、「経験はないが今後してみたい」が14.6%、「経験はなく、今後してみたいと思っていない」が61.9%と過半数を突破。ゲームも「経験がある」が24.4%、「経験はないが今後してみたい」が18.2%、「経験はないが今後してみたい」が57.4と同様の傾向が見られる結果となった。

今回の調査結果にあたり、東京工芸大学芸術学部インタラクティブメディア学科の久原泰雄教授は「歌声合成技術は昔から研究されていて、決して目新しくはないですが、ボーカロイドの社会的影響は音楽産業の構造を変えるほどのインパクトがあります」と前置きした上で、「権利で縛られた窮屈なコンテンツではなく、自由に二次利用できる作り手と見る人に優しい環境で創造がリサイクルされていきます。"XXに歌わせてみた"や"XXを歌ってみた"などの二次創作は作り手だけでなく、見る人の意欲を刺激し、創作の連鎖反応を誘発します」と加速度的に広がっていた要因を分析。

さらに「作曲となると敷居が高くなります。ボーカロイドは歌詞とメロディを入力し、歌声ライブラリに歌わせて曲を作っていきます。音楽理論を知らなくても、メロディは誰にも心の中に育まれており、この心のメロディをボーカロイドという新しい音楽語法によって表現し、作曲するのです。ボカロ曲が作曲を始めたいという動機付けの要因になっていることも不思議ではありません」とボーカロイドの普及が、従来の"作曲すること"の敷居を下げ、作り手が拡大し広がっていったと解説している。

※東京工芸大学調べ