VIDEO係長

最近、私の部下が2人会社を辞めたんだ。

1人目は、入社したばかりの新人。理由を聞くと、「自分のやる仕事じゃない」とのこと。2人目は、入社10年目の中堅。理由を聞くと、同じく「自分のやる仕事じゃない」と。

この2人、理由は同じだが、1人目の新人は、なぜ自分だけ地味な仕事ばかりやらなくてはいけないんだ! という不満で、2人目の中堅は、なぜ大変な仕事を任せるんだ! という不満があったようだ。

私は、上司として仕事で必要な役割をそれぞれに与えたつもりだったんだが、 どうやら受け入れられなかったようだ……。

しかしだな、さまざまな人間関係がある社会のなかで自分が理想とする役回りだけをしていけるほど、世の中は甘くないぞ! 本当に仕事ができる人間とは、自分の役を理解して、その役に100%の力を出せる人間だと思うんだ。なんだか、冒頭から熱くなってしまってすまん! でも許せんのだ……。

今回は、誰もが知る名優ロバート・デ・ニーロの出演作の中から、あえて助演作を取り上げながら、組織のなかの立場と仕事の役割について教えよう!

『ゴッドファーザーPART II』から学ぶ "新人の脇役仕事"

若い頃は、遠い理想ばかりを追いかけてしまいがちで、先輩から任される雑務なんかは、淡々とそつなくこなしてはいないか?

イタリア系マフィア一族の歴史を描いた名作『ゴッドファーザー』シリーズの2作目では、1作目で亡くなったファミリーのドン、ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の青年時代の役をロバート・デ・ニーロが演じている。その演技は、本当にマーロン・ブランドが特殊メイクで若返ったの!? と錯覚するほど凄いんだ。

実は、この役作りのために映画の舞台であるイタリア・シチリア島で生活をしてイタリア語をマスターし、マーロン・ブランドの話し方、仕草やしわがれ声まで徹底的に学んで撮影に挑んでいるんだぞ。この徹底した役作りは、後に「デ・ニーロ・アプローチ」と称されて、若手俳優たちのお手本になっている。

そしてロバート・デ・ニーロはこの作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞して、トップスターへと一気に駆け上がっていくんだ。

先輩という主役がいるなかで脇役をする時に大切なのは、どーんと先輩の胸を借りて、些細なことも100%の努力をして、やり過ぎるぐらいでやっと一人前になれるんだぞ。主役は1日にしてならずだ。

ゴッドファーザーPART II COPYRIGHT (C) 2013 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

『バックドラフト』に学ぶ、"中堅としての脇役仕事"

中堅にもなると、自分がリーダーになって進める仕事の他に、若手の教育もしたりと、主役も脇役もこなさなければいけない仕事が増えてくる。そんなときに参考になるのが、消防士兄弟の葛藤と日夜火災と戦い続ける男たちの群像を描いた1991年の大作『バックドラフト』だ。

殉職した父と同じ消防士の道を選んだブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)は、同じ消防士の兄スティーブン(カート・ラッセル)の17小隊に配属されるんだが、そこで弟のブライアンは、兄の指示に従わずに、ドジを踏んでしまう。兄との対立で隊を離れたブライアンを助手として受け入れるのが、ロバート・デ・ニーロ演じる火災原因調査員のリムゲイルだ。威圧的で無愛想な上司だが、「ちょっとだけ火を愛してやれば火は消せる」といった重みのある台詞とそれを体現していく姿勢に自信を無くしたブライアンは消防士としての正しさを覚えていくんだ。

作品のなかでの上司と部下の関係は、現実のロバート・デ・ニーロと若手俳優ウィリアム・ボールドウィンの先輩・後輩関係にも似ている。デ・ニーロの脇役でもしっかりと内面をみせ、場を引き締める演技は、主役であるウィリアム・ボールドウィンを引き立てながらも、「さあ、お前はどう返してくるんだ?」と言わんばかりに、後輩を試しているようにも私は見えるな。部下の仕事には口を出しすぎず、時に試練を与える! 実に男らしい先輩としての脇役の徹し方だな。

バック・ドラフト (C) 1991 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

『マイ・ルーム』に学ぶ、"管理職としての脇役仕事"

一般的に経験を重ね、プレイヤーとしてもチームのリーダーとしても仕事の評価を得るようになったならば、次は会社の経営を導いていく立場が求められてくるだろう。若手、中堅、ベテラン、さまざまな能力を見極めながら、人材をマネジメントし、会社を支えていかなければならない。 仕事ができるだけではなく、社員がついていきたいと思う人間力も問われる責任重大なポストだな。そんな時に観てほしいのが、『マイ・ルーム』だ。

痴呆症の父と体が不自由な叔母と暮らす白血病で余命いくばくもない女性をめぐり、長年絶縁状態だった妹とその家族の再会、そして新しい絆を描くヒューマン・ドラマ。ロバート・デ・ニーロは、脇役として出演はしているが、製作責任者、共同プロデューサーも務めている。

この作品、なんといってもキャストが素晴らしいんだ! 主人公のベッシー役を演じるのは、先ほども紹介した『ゴッドファーザーPART II』で共演したダイアン・キートン。その妹役には、若手時代のデ・ニーロの傑作『ディア・ハンター』や『恋におちて』で共演した演技派女優のメリル・ストリープ。

数々の作品に出演し、実績と多くの人間関係を築き上げてきたデ・ニーロが生んだ見事な配役だな! さらに、配役でいえば、メリル・ストリープの息子役を『タイタニック』で大ブレイク直前のレオナルド・ディカプリオが演じている。

実績十分の2大女優に若手の有望株を引き合わせたプロデュースは、人材のマネジメントに似ているな。会社に新しい風を吹き込むことで組織を刺激し、新しいチャレンジをしていく。全体を一歩引いた場所から見渡すことも脇役の仕事だということだな。

マイ・ルーム (C) 2012 Miramax, LLC.

ロバート・デ・ニーロの助演作を3作紹介してきたわけだが、いかがだったかな。彼には数多くの主演もあるが、私には主役も脇役も関係ないように思えるんだな。余計なことは考えず、とにかく与えられた「役」に徹底することで、役を凌駕したオンリーワンの存在になれるんだ。

「dビデオ Powered by BeeTV」では、ロバート・デ・ニーロ出演作品を17本公開中だ。今回紹介した3作品以外にもたくさんの名作があって、その役の幅の広さにきっと驚くはずだ! 自分の役割を見つめ直したい時にはデ・ニーロ先輩を見習うんだぞ! では、本日は以上!