"目覚めたら土の中"というシチュエーション・スリラー『[リミット]』(2010年)で知られるロドリゴ・コルテス監督の最新作『レッド・ライト』が公開された。同作は、30年間の沈黙を破り突如姿を現した伝説の超能力者サイモン・シルバーと、超常現象を暴こうとする科学者チームの攻防戦を描いた謎解きムービーで、主演のロバート・デ・ニーロをはじめとするハリウッドの演技派俳優陣を起用した作品だ。今回は、同作で科学者チームのマーガレット・マシスン博士のアシスタントであるトム・バックリーを演じたキリアン・マーフィーに話を聞いた。

キリアン・マーフィー
1976年、アイルランド・コーク州生まれ。アマチュア・ミュージシャンとして活動したのち、地元の劇団に加わり、本格的に俳優の道に進む。『The Tale of Sweety Barrett』(1998年)で映画デビュー。その後、『ダークナイト』(2008年)、『インセプション』(2010年)、『ダークナイト ライジング』(2012年)といったクリストファー・ノーラン監督作品をはじめ、『サンシャイン2057』(2007年)、『TIME/タイム』(2011年)などにも出演している

――まずはご自身が演じたトム・バックリーの役柄について教えて下さい。

彼は大学の教授で、シガニー・ウィーバー演じるマーガレット・マシスン博士と仕事をしているんだ。物理学者で、マシスン博士と特殊な部門を専門とし、霊能者とかメンタリストとか呼ばれる者たちのペテンを暴こうとしている。そのために、時々大学の外に出て、超常現象を反証しようする。アカデミックなゴーストバスターズのような感じなんだ。でもこの役はめったに巡ってこない天からの贈り物だと思っているよ。映画全体を通してドラマティックに変化する、俳優が夢見る役だと思う。

――脚本については、どのような印象をもっていますか?

見事に書かれた知的な脚本だ。会話も素晴らしいしね。エンターテイメント性も優れていて、僕自身、映画館に行って観たい映画だよ。本当に卓越した脚本なんだ。レイヤーが幾層にも重なり、今起こっていると思っているすべてが変化する。自分で物語を組み立てながら見ているが、そのシーンを常に信用することができない。そこがとても気に入っているよ。

――この作品では超能力の存在がテーマとなっていますが、ご自身は超常現象についてどういった意見をお持ちですか。

すべての分野をとても魅力的にしているものは、人々が必死になって信じたいと願う心だと思う。どんな理由にせよ、どんな感情にせよ、エキサイティングなものにせよ、別の次元に人々は心を奪われるんだ。それが死後の世界でも、何であってもね。そこにドラマを連想する。でも個人的には、まだ納得していないね。

科学者のマーガレット・マシスン(シガーニー・ウィーバー)とトム・バックリー(キリアン・マーフィー)は、超常現象を科学の力で解き明かすため、研究を重ねる日々を送っていた。そんな折、30年前に引退した盲目の超能力者 サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)が復帰するというニュースが舞い込む。かつて、シルバーに挑み癒えることのない傷を負ったマーガレット。それを知ったトムは、全てを解き明かすため、単独でシルバーのショーに乗り込むことを決意する。果たして、サイモン・シルバー復活の裏に隠された真実とは……

――ロドリゴ・コルテス監督は映画『[リミット]』を手掛けたことで一躍有名になった監督ですね。

特別で、才能溢れる監督だよ。僕が仕事をした中でも最高の監督のひとりだね。彼は、まず素晴らしい脚本家なんだ。この脚本がそれを証明している。監督としては、映画独特の言語に対する優れた理解力を感じるし、完全な自信とビジョンがある。俳優に対しても見事な英語で接する。驚くべき人だよ。これから、もちろん今もだが、重要な監督になる人だと思うね。

――撮影はスペインで行われたとのことでしたが、その感想を教えて下さい。

コルテス監督と製作のエイドリアンの映画作りはすごいと思う。彼らは母国語で、スペインで、スペイン人のスタッフを使って撮影するから、誰にもストレスがない。それが最高の雰囲気を作り出す。すべてが最高の映画作りを可能にするため、作品のためなんだ。アメリカやロンドンからやってきた僕たち全員にはとても新鮮だったね。映画はこういうふうに撮影されるべきだという見本だよ。

映画『レッド・ライト』は現在、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国公開中。