写真を見る限り、何やら猛烈な競技でありそうな国際雪ハネ選手権

北海道民にとって冬の苦痛のひとつに「雪ハネ」(=雪かき。北海道の方言)がある。その年々で降雪量は異なるが、道内のほとんどの地域では長い冬の間、この労働に苦しめられる。そんな苦行を楽しみに変えようと、士別市で考案されたのが「国際雪ハネ選手権」。2013年は2月3日に第14回大会が開催されるが、何やらハンパないツワモノどもが集まってくるらしい。

1トンぶんの雪を短時間でハネる(=はねのける)過酷な大会

まずは競技の内容について説明したい。会場に、180cm四方、深さ約100cmの型枠が設置され、その型枠の底に旗が置かれる。その旗の上にコンパネが敷かれ、さらにその上に雪が積まれる。開始の合図と同時に競技者はひたすら雪をかき出し、コンパネを起こして底にある旗をゴールまで持っていく、というのが全体的な流れだ。

チームは4人1組。18歳以上の健康な人に限って出場できる。メンバーが交代で雪をハネていくというだけの単純な競技だが、型枠内部に詰め込まれる雪はおよそ1トン。確かに健康な人でなければ撤去できない量である。

雪をハネルのがツラ過ぎるあまり、まだ雪を大量にかぶっているコンパネを強引に起こして旗を取ろうとするチームもあるようだが(気持ちは大いに理解できる)、コンパネや旗を破損させると即座に失格となってしまう。

雪ハネを経験された方ならここまで読んだ時点でお分かりいただけていると思うが、かなり過酷な競技なのである。「国際」の冠が掲げられているほど、誰に対しても極めてウェルカムな大会だが、力任せの新参者がおいそれと上位に食い込めるほど甘くはない。最近では珍しい骨のあるオープン競技会なのだ。

雪煙が舞い上がる瞬間を切り取った写真は、この競技の骨太さを雄弁に物語る

有酸素運動で行う、究極の雪ハネ技術!

参加チームの様子を見ていると、雪ハネに慣れていないチームは、とにかく力任せにひたすら雪を型枠からかき出そうとしてしまうようだ。人体のメカニズムに照らしてご説明させていただくと、この力任せ作戦は「無酸素運動」となってしまい、1分と持たずに力尽きてしまう。型枠の中で思わず倒れ込んでしまう人もいるほどだ。

実は雪ハネというのは有酸素運動で行うのがセオリーで、一定のスピードで雪をハネ続けるのがベスト。この競技にも同じことがいえるのだ。強豪チームは大変スピーディーながら、無駄な力を使わず恐ろしく効率よく雪をハネている。これこそ新規参入チームがなかなかまねできないポイントだ。

また、雪が詰められる型枠の180cm四方という大きさがなんとも微妙で、2人で雪をハネるとなると、ちょっと小さいサイズなのである。スコップの扱いに熟知していなければ、なかなか効率よくハネられない。かといって、1人でハネるには大きすぎる。この辺の条件をどうクリアしていくかが、勝利を大きく左右するのである。

かつて、なんとあのボビー・オロゴンも参戦したことがある

なんと女性部門も! 来たれ挑戦者たち!

シンプルながらかなり奥が深く、一筋縄ではいかないのがこの国際雪ハネ選手権だ。毎年全国各地からの参加があるが、上位に食い込むのは今のところ北海道のチームが圧倒的だ。だからこそ全国から、いや、国際大会なので全世界からの強豪参戦を、士別の人々は待ち望んでいる。

また驚くことにこの過酷な大会には、なんと女性部門も用意されている。一般部門とはルールが異なっているが、強豪チームのメンバーは「これが女性か?」と思わせるようなスコップワークを見せてくれるからあなどれない。

降雪地にお住まいの方、そうでない地域にお住まいの方、雪の士別は、いつでも皆さまの勇気ある挑戦を大歓迎してくれるだろう。2月3日に開催される第14回開催は、残念ながらすでにエントリーが締め切られているので、まずは第15回大会に備えて、大会の熱気を見て感じるのはいかがだろうか?

メイドのコスチュームと雪をハネる堂々たる腰つきは、どうみてもアンバランス