『ウルトラマン』の現場から

――ウルトラマンといえば、何といってもスペシウム光線ですね

古谷「隠密剣士じゃないから刀は持ってないし、月光仮面じゃないからピストルも持ってないし、武器がないから、なんか作ろうと。ゴジラが火を吐くのと一緒でね。なんか形を作って、光線しかないだろうと」

――もう一つよく出てきたのが、八つ裂き光輪ですが……

古谷「あれはね、(カメラマンの)高野(宏一)さんと私で簡単にできたんですよ。『敏ちゃん、これは、スペシウム光線が効かなくなったときに出すから、あんまり頻繁に使わないので、形にこだわらなくていいよ』って。動きがあるポーズですから。スペシウム光線は停止してなくちゃいけない」

――後から光線を合成するために……

古谷「固定するには、どうするかっていうことで、両手を付けた」

――それで、左右の手を交差させてくっ付けていると

古谷「まあ、そういう事情もあるってことですね。僕はウルトラマンでは空手をミックスした動きをやりたかったんで、両手を動かさないと様にならない。空手っていうのは、両手で動くと美しいんですって。それで、スペシウム光線も八つ裂き光輪も必ず両手でやる」

――先ほど、ケムール人のスーツが着づらいというお話しもありましたが……

古谷「一回着ると、汗でパウダーが固まるんですよ。二回目入るときは乾かすんですよ、ドライヤーで。濡れてると入れない。この間、イベントで今のウルトラマンのスーツに足だけ入れてもらったんですけど、すごい着やすいんですよ。中に生地が付いててね、スッと入れるんです。ホント楽になりましたね」

――怪獣と格闘するアクションについてもお伺いしたいのですが

古谷「飯島監督から『ファイティングポーズは止めようね』って。人間的な構えになるから」

――ウルトラマンは、あくまで、人間ではない、宇宙人だからということですね。ところで、ウルトラセブン以降のウルトラヒーローと比較して一番印象的なのは、後のアクションでは怪獣との間に間合いをとってパンチやキックを繰り出しますが、ウルトラマンは体ごともっていって怪獣と組み付いた上で投げ飛ばしたりしてますよね

古谷「ウルトラマンがどういうアクションするのか、誰も知らないわけですよ。結局、僕がどうやったらいいかっていうのを考えながらやってましたんで。で、うまいことに僕は、スタントとか殺陣とかボクシングとかプロレスとかやったことないんですよ。それで、ああいう感じにしかできなかった。『ウルトラセブン』になると、(スーツ・アクターの)上西弘次はスタントマンですからね。だから、ああいう形に」

筆者の目の前で八つ裂き光輪の動作を生で披露! 動画でお見せできないのが残念である

ぬいぐるみを着ているところを想像してほしい。ウルトラマンがファイティングポーズではやっぱりヘンだ

――最終回ではゾフィーも演じられますね。そのお芝居は、どうされたのでしょう?

古谷「台本にゾフィーのセリフがちゃんとありますから、それを憶えて、ブツブツ言いながら」

――誰かが脇で台本を読み上げていたわけではないと

古谷「(ぬいぐるみに入ると)声は聞こえないですから。目も見えないんですよ。あれ、開いてないですから。目線は『カメラこっちだからね、敏ちゃん』って言われて、それに合わせてお芝居して。で、前にアンコ入れて寝てるウルトラマンがいて」

――それに、後半のナレーターでもあった浦野光さんがアフレコをされると、ちゃんとゾフィーのセリフとお芝居がピタリと合うと

古谷「そういうわけです」

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