財務省は9日、海外とのモノやサービスの取引や投資の状況などを示す5月の国際収支状況(速報)を発表した。それによると、5月の経常収支は2,151億円の黒字となったが、黒字額は前年同月と比べて62.6%縮小したことが分かった。

2012年5月分経常収支(速報)(出典:財務省Webサイト)

貿易・サービス収支は、9,410億円の赤字(前年同月比赤字1,504億円増)で、赤字幅が拡大。このうち貿易収支は、3カ月連続の赤字で8,482億円(前年同月比赤字770億円増)となった。これは、震災の反動増もあり自動車を中心に輸出が増加したものの、液化天然ガスの需要増などにより輸入が増加したことが要因とみられる。

輸出額は5兆542億円で、前年同月比5,129億円の増加。一方、輸入額は5兆9,025億円で、同5,899億円の増となった。なお、輸出は前年同月比で3カ月連続の増加、輸入は同29カ月連続の増加となる。

また、同省関税局がまとめた5月分貿易統計(通関ベース)によると、輸出に関しては、対米国が前年同月比2,458億円増、対ASEANが同1,429億円増、対中東が同677億円増、対中国が同282億円増などとなったのに対し、対EUは同48億円の減少。商品別では、自動車が同3,518億円増、自動車の部分品が同849億円増、原動機が同309億円増となった一方、船舶は同336億円減少している。

輸入については、対中東が前年同月比1,213億円増、対中国が同1,154億円増、対ASEANが同1,155億円の増加。商品別では、液化天然ガスが同1,536億円増、原粗油が同1,029億円増、石油製品が511億円増などとなったのに対し、非鉄金属は同621億円減少した。

サービス収支は、928億円(前年同月比赤字734億円増)の赤字で、こちらも赤字幅が拡大。この理由は、「輸送収支」および「旅行収支」は赤字幅を縮小したものの、「その他サービス」の黒字幅が縮小したため、赤字幅が拡大したと考えられる。

所得収支は、1兆2,737億円の黒字となったものの、前年同月比1,686億円減となり、黒字幅が2カ月ぶりに縮小。これは、直接投資に係る配当金などの支払が増え、直接投資収益の受取超幅が縮小したことが影響したと分析している。

一方、資本収支については、7,446億円の流出超(前月304億円の流出超)となっている。

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