――本作はアフレコではなく、絵作りの前に収録するプレスコを採用なさっていますが、プレスコを採用した理由を教えてください

八木監督「プレスコにしようと決めたのは山崎なんですけど、CGでやる場合は、プレスコが当たり前で、むしろプレスコじゃないと困るぐらいの勢いなんですよ。いわゆる2Dのアニメの場合、表情にいくつかの型があって、こういうときはこの表情みたいな、ある程度の決まりがある。これは表現の限界でもあるわけですが、CGの場合はもう少し複雑で、微妙な表情の違いや、細かな陰影をつけることで、表情にすごく幅が出てきます。ただ、それがゆえに、セリフ回しと表情がピッタリ合っていないと、違和感が出てくる。だったら、先に声を録り、声の大きさや長さ、テンションに合わせて絵を作っていったほうが、より自然になりますし、キャラクターも一貫性が出せるわけですよ」

――声が絵作りの上での軸になるわけですね

八木監督「音がない状態で作るとなると、それこそ何億通りもある表情の中から選び出さないといけないのですが、音があれば、それに合っているか合っていないかでジャッジすることができる。収録の段階から、だいたいの表情って想像できるじゃないですか。その情報を伝えれば、狙ったとおりの絵作りができるわけですよ」

――狙ってプレスコにしたわけではなく、当然のプレスコということですね

八木監督「今後も、もし作品を作らせていただける機会があれば、絶対にプレスコで作ると思います。たぶんアフレコで収録すると、何かギクシャクした絵になってしまうと思います。普通のアニメだと、いわゆる口パクの表現になるわけですが、CGアニメはもっと細かな表現ができる。先に声があれば、本当に喋っているかのような仕上げることも可能なので、やはりプレスコという選択肢が最適ですね」

――先ほども少しお聞きしましたが、日本でCGアニメがそれほど多くない理由は、コスト以外にどういった理由があると思いますか?

八木監督「キャラクターの問題が大きいと思います。邦画CGアニメの場合、2Dアニメに比べてお客さんがすっと入りこむ事ができるキャラクターが少ないと感じています。どことなく堅く冷たい印象があるんです。できるだけその印象をなくしていきたいのだけれど、それにはやはり時間やお金がかかる。結果、日本ではやりたくても出来ない事が多いのではないでしょうか。ただ、ここにきてようやっと日本のCG会社でも様々なノウハウが溜まってきた様な気がします。これから邦画CGアニメは数が増えてきますね。僕も負けてられません。たくさんの人に食べてもらって、美味しいと言ってもらえる作品を作りたいですね」

――実際に『フレンズ もののけ島のナキ』という作品を作ってみて、わかったことはありますか?

八木監督「まずはポテンシャルですね。まだまだ伸びしろがありました。とにかく五里霧中で、わかっていなかったことが多かったので、最初に仕込みきれずに、実現できなかったことがたくさんあります。まだまだ改良できる余地がたくさん残っているので、今回の作品を踏まえて、次のステップでは、質感に関しても、演出に関しても、映画を構成するすべての要素において、観てくださる方に驚いていただける作品を、ローバジェット(低予算)で作りたいと思います(笑)。とにかく、次があれば、もっと行きますよ。もっともっとやりたいことをやらせていただこうと思っています」

――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします

八木監督「CGアニメーションは、まだまだ食べず嫌いの方も多いジャンルですが、『フレンズ もののけ島のナキ』は、一度食べていただければ、美味しさがわかる作品だと思います。6月29日にはBlu-rayとDVDが発売されますので、映画館で観たという方も、まだ観ていないという方も、ぜひ一度手にとって、観ていただけるとありがたいと思います」

――ありがとうございました

DVD豪華版のパッケージ内容

『フレンズ もののけ島のナキ』のBlu-ray/DVDは2012年6月29日の発売。「豪華版」は本編ディスクと特典DVDの2枚組で、特製デジパック+アウターケース仕様となっており、オールカラー52Pの豪華ブックレットが同梱される。映像特典として、八木監督と山崎監督、そしてナキの声を演じた香取慎吾による「全編ビジュアルコメンタリー」や「八木監督製作隠しコマンド」「イベント映像集」などを収録。そのほか、初回生産分限定特典として、「friends ペーパークラフト3種(ナキ・グンジョー・コタケ)」が用意されるので、こちらも注目しておきたい。「豪華版」の価格は、Blu-ray版が7,035円で、DVD版が6,090円、なお、DVD版には、本編ディスクのみ(映像特典:「八木監督製作隠しコマンド」「予告編・特報」)の通常版もラインナップされる(価格:3,990円)。発売元:小学館、販売元:東宝。

(C)2011「friends もののけ島のナキ」製作委員会