――霜月さんと日山さんでどの程度まで構成を考えたのですか?

霜月「組曲をやることが決まってから、日山さんと2人で、まずはストーリー周りを固める作業をしました。まずはある程度の叩き台を作って、1章はここからここまで、2章はここまでといった感じで分けていき、こういう話なら誰々が得意だよね、みたいなことを考えつつ、ある程度決まった状態で1回目の打ち合わせをしました。叩き台がないと本当にどこから手をつけてよいのかわからなくなるんですよ。なので、まずは叩き台を作り、その上で皆さんと意見交換をしながら、連携をしていった感じです」

――皆さんとの連携はスムーズでしたか?

霜月「お互いにわかっているメンバーなので、だいたいのところは想像できていて、けっこうスムーズでした。実際の作業では、まずアルバムとして統一したメロディを作ろうという話になりまして、メインテーマを私が書かせていただきました。ほかのメロディに関しても、各章の重要な場所で出てくるメロディ、舞台を同じくする場所でのメロディ、キャラクターに関連するようなメロディ、そういったものを共有しようということで、パーツを投げて、こういうシーンがあったら使ってください、みたいなお願いをしつつ、みんなで作り始めた感じです」

――クレジットでは、霜月さんの作曲は6曲目の終章のみですが、全体にわたって、霜月さんのメロディが使われていたりするわけですね

霜月「クレジットはこうやって分かれていますが、メインのメロディ以外にも、私のメロディをほかの方が使ったり、私自身もMANYOさんのメロディを引っ張ってきていたりしています。作曲・編曲はそれぞれで分担していますが、トータルとしていろいろなメロディをお互いで使っています」

――そういう形で全体の統一感を出しているわけですね

霜月「そうですね。ただ、メインメロディを使ってくださいという話をしたら、最初に皆さんからあがってきた曲の中でメインメロディが使われている比率がすごく高くなってしまった。これだとちょっと聴かせすぎだということで、そこは私が、立ち位置的にサウンドプロデューサーというポジションだったので、『申し訳ないけどここは別のメロディに変えてください』とか『オリジナルのメロディを加えてほしい』といった提案をさせていただきながら、バランスを整えていった感じです」

――そのあたりのバランスが一番苦労したところではないでしょうか?

霜月「全体が見えるまでは、本当に手探り状態だったので、見えてきてから勝負でした。ここは聴かせどころだから強く、ここは抑え気味で、みたいなところは実際に見え始めてからできることなので、制作中はすごく密な連絡が必要でした」

――組曲という以上、一曲としての統一感が重要になりますからね

霜月「それをみんなで作るということなので、最初から苦労することがある程度予測できていたのですが、それが予想以上に大変で(笑)、作詞の日山さんにしても、おおよそのイメージはあっても、やはり全体が見えてこないと詞が書けないわけですよ。たとえ見切りで書き始めたとしても、結局変更しなければならなくなりますから。あと、組曲ということもあって、今回は1枚のCDで1曲ということを最初から意識していたので、曲と曲の間もできるだけ繋げたかった。誰がどこをやっているのか、どこから変わったのかというのをできるだけわかりにくくしたかったんですよ。なので、皆さんにもそのつなぎの部分はかなり意識していて、前の人がどのように終わっているのかを、常にヒアリングしつつ、相談しつつ作業を進めていきました」

――組曲を皆さんで分担して作るのはかなり大変な作業だったようですが、逆にやってみて良かったと思うのはどのあたりでしょうか?

霜月「気持ち的な面で言うと、"みんなで作った感"がすごいです。チームとしてかなりの連帯感が生まれました。あと、新しいアプローチという点でも、こういった組曲的なものでファンタジーを表現するということをこれまでにやったことがなかったので、すごく新鮮で刺激も多かったです。曲の中にナレーションを入れるのも初の試みでしたし、いろいろな作曲家の要求に応えつつ、歌唱法を工夫していくところも、表現者としてすごく面白い取り組みでした。そういったチャレンジが出来たという意味でも、このやり方で良かったと思っています」

――ナレーションを入れるというアイデアはどこから出てきたのですか?

霜月「作っている過程で、誰かが『ナレーションはアリなのか?』って言い出したんですよ。ミュージカル的な作り方をするアルバムなので、表現方法として朗読も全然アリでしょうという話になったわけですが、誰か一人だけが使ったのだとバランスが悪いので、そのあたりもリアルタイムで調整しつつ、ナレーションを織り交ぜていきました。そういったことも含めて、今回のアルバムでは、表現として突き抜けた感じがあり、作る側としてもかなりクリエイティブなことをやらせていただけて、とても楽しかったです」

(次ページへ続く)