――映画を観ながら、いつ出し抜かれるか分からないというギリギリのところで戦っていかなければならない選挙スタッフたちの姿にハラハラドキドキしました。実際の選挙スタッフもやはり、みんな崖っぷちのところで戦っているのですか?

ウィリモン「映画に出てくるスティーブン(ライアン・ゴズリング)やポール・ザラ(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ダフィー(ポール・ジアマッティ)のように高い地位にいればいるほど、出し抜かれる危険性や崖っぷち感は高まりますね。インターンのモリー(エヴァン・レイチェル・ウッド)のような低い地位のスタッフですら、彼らのだしに使われるなどして、巻き込まれることが多々あります。僕も下っ端のアドバンス・チーム(=先乗り隊)という、モリーのような低いレベルの仕事をしていたのですが、そのチームの中でもお互いのライバル意識はすごかったし、ある意味で"政治"の世界がそこにありましたから」

――ウィリモンさんはアドバンス・チーム在籍時代、どんな仕事をしていたのですか?

ウィリモン「ハワード・ディーンの大統領選のときはアイオワ州のアドバンス・チームにいて、彼がアイオワ州に来る際のイベントを運営していました。プレスの取材場所や、集める群衆のセレクト、ディーンの控室、写真の撮られ方などをすべてセッティングするんです。下っ端の仕事とはいえ、パブリック・イメージ作りには大いに貢献しているわけで、非常にエキサイティングでしたね」

――まるで芸能人のスタッフのような仕事ですね。

ウィリモン「その通り! 政治は非常に芝居じみていて、エンターテインメントの世界と似ています。まず、候補者とスタッフが役とストーリーを作り上げる。その筋書きにしたがって候補者は役を演じていき、みんなに一票を投じてもらうのですが、裏では非常に大きなお金が動き、エゴや裏切り行為、熾烈な競争でまみれている。アメリカでは『政治は醜い者たちのハリウッド』と言われているくらいです(笑)」

――あまりにエグすぎて、『スーパー・チューズデー』には入れなかった裏話はありますか?

ウィリモン「僕も実際に体験したんですけど、ある候補者陣営が2004年の大統領選キャンペーンのとき、対立候補者の支持者が時間内に投票会場に行けないよう、わざと交通渋滞を起こしたことがありました。ほかにも、共和党が身分証明書を持って来なかった有権者には投票させないなど、妨害行動は山ほどありましたよ」