「初任給で、結婚式。」「日本の結婚式は高すぎました。」といった印象的キャッチフレーズと共に、テレビCMは交通広告など、大々的な宣伝活動を行っている「スマ婚」。サービス立ち上げから2年で5,000組以上の結婚式をプロデュースした実績からもその人気の高さはうかがえるのだが、今回は「どのようにしてスマ婚が誕生したのか」という点に焦点を絞り、スマ婚を運営するメイション代表取締役七田幸彌さんにお話をうかがった。
2009年誕生のスマ婚
――スマ婚を立ち上げた狙いは?
「スマ婚は『価格破壊』や『適正価格の追求』といった手段の部分がクローズアップされがちですが、本来の狙い、私たちが考えるゴールは『結婚式を通して人との繋がりが希薄になっている世の中を変えること』です。一介の結婚式業者が何を大それたことをと言われるかと思いますが、私たちは真面目に考えています。数人で立ち上げたスマ婚ですが、そのメンバー全員にこの想いが強くありました。そして、今では100人を超えたスマ婚のスタッフ全員にもこの想いは浸透しています。私たちは社員の教育において結婚式の意義を伝えることを一番大切にしているからです」。
――"結婚式"自体についてはどうとらえていますか。
「結婚式の意義について考える際にまず知っていただきたいのは、結婚式というのは多種多様にある世界の文化の中で唯一共通して存在しているということです。もちろん形は様々ですが、どの時代にも結婚式はありました。これは結婚式がいかに私たちにとって大切かを歴史が物語っていると思います。では、なぜ結婚式が大切かなのですが、それは『絆』にあると私たちは考えています。大昔から結婚式には婚姻を誓い成立させ、それを周りの人に認めてもらうという意味がありました。ただ、それだけの理由では長い年月を受け継がれることは無かったと思います。結婚式に集まるのは2人をその日まで育み、今後の人生でもお世話になる方々です。2人が新たな人生を誓うとともに、自然と集まった方も2人の幸せを誓っているのではないでしょうか。集まった全ての方が2人を中心にしたコミュニティの幸せを誓う場こそが結婚式だと私たちは考えます。結婚式を行うことは『絆』を深め結婚生活をより豊かにすることができるのです」。
――現在、結婚式を挙げる人は増えているのでしょうか。
「現在の日本の問題として核家族化やリアルコミュニケーションの減少は叫ばれますが、実は結婚式を挙げる組数も年々かなり減っており、これはあまり知られていません。日本の結婚式では初めて2人の家族や友人が顔を合わせ、2人の歴史と支えてきた人たちのことを知り、2人の周りに新しい繋がりとより強い絆が生まれるのにも関わらずです。スマ婚は結婚式の減少に歯止めをかけ、本来の結婚式の素晴らしさを伝えるために立ち上げました」。
――結婚式の減少の理由は?
「私たちがスマ婚を立ち上げたのは2009年4月なのですが、その数年前から婚姻はしても結婚式を挙げない方が増える『結婚式離れ』が起きていました。この理由を調べてみたところ、理由は大きく2つありました。1つは『金銭面』です。従来の結婚式では300万円~400万円もの大金を事前に用意する必要があり、不景気が続く中、新郎新婦にとってこの事前に必要な大金が結婚式をあきらめさせていました」。
――金銭面ともう1つの理由は?
「私たちが注目したもう1つの理由は『価値観』です。大切な貯金を結婚式に使うよりも、より現実的に新居や家電といった新婚生活の費用にという方や、旅行や趣味にこそお金を使いたいという方が増えていました。そして、『価値観』を理由に結婚式をされない方もしたくないということではなく、結局は結婚式が高額なために諦めている方がほとんどでした。つまり、結婚式が高額な費用のかかる時代に合わないシステムのため、『結婚式離れ』が起こっていたのです」。
――結婚式を諦めざるを得ないとはなんとも悲しいことですね。
「繰り返しになりますが、結婚式は今までお世話になった方、これからの2人がお世話になる方に感謝を込めて、おもてなしをする大切な1日です。本当は誰もが金銭面で諦めたりするようなものではあってはいけません。皮肉なことに結婚生活をより豊かにするものであるはずの結婚式が、逆に結婚生活を圧迫するようなシステムになっていたのです」。
――そういった背景をふまえてのスマ婚立ち上げですか。
「このような理由で結婚式が減っていると知り、スマ婚のコンセプトはとてもシンプルなものになりました。多くのユーザーは特別なものを求めているというよりも、従来と同じ内容を低価格かつ安心できるシステムで提供することを望んでいると考えたからです。最終的にスマ婚は自己資金16.8万円から結婚式が叶い、総費用も従来の約半額で実現するサービスになりましたが、そのために従来のブライダル業界の問題点を全て見直し、既成概念を捨てて一から結婚式の新システムを作る必要がありました」。