子どもたちに伝えたかった3つのこと

――次に『オトタケ先生の3つの授業』についてお話を聞かせてください

「震災が起きてから一番気になっていたのが、被災地の子どもたちのことでした。自分が被災地で担任をしていたらどんな言葉をかけてどんな授業をするだろうかと考える中で、これまで3年間教員としてやってきた色々な授業を本という形でまとめたいと思いました」

――それがこのタイミングでの同時発売につながったわけですね。本書では乙武さんオリジナルのユニークな授業の様子が描かれていますが、子どもたちに特に伝えたかったことは何でしょう

「特に伝えたかったのは3つ。『努力をすることの大切さ』『個性を認めることの大切さ』『命の大切さ』です。これらを伝えるのにどういう方法が良いかを考えて作ったのが3つのオリジナルの授業だったんです」

――教える上で気をつけたことやポリシーなどは?

「とにかく一方通行にならないこと。教師が答えを提示するのではなく、質問を投げかけることで子どもたちに考えてもらうこと。それは毎回すごく意識していましたね」

――たしかにどの授業でも子どもたち自身が考えたり、友だちと話し合ったりして答えにたどり着いていましたね

「授業だけの話ではなく、子どもに目標を持たせるときは少し背伸びをさせるということを意識しているんです。今の背丈で十分届くものをやらせても本人にとっては「そんなの簡単だよ」となってあまり成長が期待できない。逆にいくら背伸びをしても届かない目標設定をすると消化不良で終わってしまう。難しいんだけど一生懸命考えれば届くという目標設定をすることで、子どもの成長を促すことができると思うんです」

――しかし子どもによって成長の度合いも違いますし、性格も様々です。23人いるクラスで、そういったちょうどいい課題を設定するのは非常に難しいことですよね

乙武「そうですね。そのためには、いかに普段から子どもを見ているかなんですよね」