ヤマダ電機とウエストホールディングスは、4月15日から家庭用リチウム蓄電池「E-Stocker」2機種を販売している。節電に伴い、俄然注目を集め始めた家庭用蓄電池を、どのように使用すればいいかについて、ヤマダ電機 スマートグリッド事業本部 副本部長の佐藤利幸氏に聞いた。

ヤマダ電機が販売しているのは、電池容量1,000Whの「EP-1000」と、2,500Whの「EP-2500」。この2タイプの違いは、1時間当たりの家電製品の最大出力が500Whか、1000Whかということ。顧客の1時間当たりに使う家電製品の電力が500Wh以内であれば「EP-1000」、500Wh以上1000Wh以内であれば「EP-2500」を使うという使いわけになる。気になる値段は、「EP-1000」が79万8,000円、「EP-2500」が178万円。

家庭用リチウム蓄電池「E-Stocker」2機種。左が「EP-1000」、右が「EP-2500」

家庭用蓄電池はどのように使えばいいのか?

電化製品の場合、例えばエアコンの場合は、起動時の起動電力と定格電力は異なり、6畳タイプの小さなものでも、起動時は700Wぐらい出る。また、室内温度が高い状態でエアコンを動かす場合と、室内が25℃前後になっている時にエアコンを起動させようとする場合は使用電力が異なり、前者のほうが大きくなる。

また、冷蔵庫だけを停電時に生かしておきたいとか、冷蔵庫以外にもテレビを見たい、照明も点けたいといった顧客のさまざまな要望に応じて、それでしたら「EP-1000」がいいですねとか、それでしたら「EP-2500」がいいですねとか、「これとこれとこれを使いたい」といった場合は、じゃあ「EP-1000」を一つ使ってさらに「EP-2500」を一つ使うなどといった提案を行う。

使用目的としては、家庭の奥さんの要望が強く、震災後に計画停電などがあった関係上、生鮮食品を保存する冷蔵庫を動かしておきたいというニーズや、パソコンを動かしておきたいというニーズが多い。例えば、家庭用省エネタイプの500リットル(約200W)の冷蔵庫の場合、「EP-1000」を使えば約5時間までの冷却が可能。パソコン(約50W)なら、「EP-1000」を使えば約20時間使用可能となる。

さらに、例えば「EP-1000」の場合、1時間あたりに使える電力量は最大500Wh、容量は1000Whなので、「液晶テレビ(150W)+携帯電話充電(15W)+LED電気スタンド(10W)+ノートPC(150W)」(1時間当たり325Wh)という組み合わせだと、約3時間(325Wh×3)使用できる。ただしこれは、エコ家電を使用した場合の目安であり、使用時間は各消費電力量によって異なる。

例えば「EP-1000」の場合、1時間あたりに使える電力量は最大500Wh、容量は1000Whなので、「液晶テレビ(150W)+携帯電話充電(15W)+LED電気スタンド(10W)+ノートPC(150W)」(1時間当たり325Wh)という組み合わせだと、約3時間(325Wh×3)使用できる

顧客に十分な説明を行ってから販売

だが、実際に家庭用蓄電池を購入する場合、こうした計算や説明を店頭で行うことは難しい。どういった家電製品のワット数がどのくらいのものなのかなどは、ほとんどの顧客は把握していないからだ。また、同じ省エネタイプといっても、数年前に発売された家電製品と、最新の省エネタイプの家電製品では、使用電力なども異なる。そこでヤマダ電機では、実際に購入希望者の自宅に行って、顧客が実際に使っている家電製品を確認してもらい、どんな家電製品を使いたいかなどを納得をしてもらってから契約するようにしている。

ヤマダ電機スマートグリッド事業本部 副本部長の佐藤利幸氏

佐藤氏によると、家電製品の使用条件などによって、蓄電池も上手な使い方ができるという。例えば、さきほども触れたように、エアコン一つとっても、今後計画停電がある場合など、いきなり暑い部屋でエアコンを起動させると電力使用量が多いので、暑い通常の昼間の電力でエアコンを動かしておいて、停電になったら蓄電池に切り替えるなどすれば、起動電力は少なくて済む。

蓄電池の"上手な使い方"とは?

では、家庭用蓄電池を購入した場合、どのような点に注意して使えばいいだろうか。「EP-1000」は約3~4時間でフル充電となるが、充電した後は、使う時以外はコンセントから外しておいたほうがいい。他の家電製品を蓄電池につないだまま、蓄電池をコンセントにつないで家電製品を使用することもできるが、「蓄電池の使い勝手としては好ましくない」(佐藤氏)。

また、「使ったら使った分だけ、すぐにまた充電するのが、上手な使い方」(同氏)。蓄電した電気を全部使い切ってから充電するよりも、「充放電回数」が伸び、その分だけ蓄電池の寿命が伸びるからだという。

また、オール電化を契約すると、電力会社によってはさまざまプランがあり、深夜電力が安くなる場合もある。そういうプランの場合、家庭用蓄電池の充電を深夜の安い電力で行えば、例えば電力のピークの夏場の午後2時ごろに蓄電池を使って少しでも社会全体の節電に貢献することもできるし、充電にかかる電気料金も安くてすむことになる。

さらに、蓄電池も機械製品なので、水や湿気、直射日光がある場所に設置するのは避けたほうがいい。流し台の近くに置いたりすれば水も飛んでくるし、湿気の多いところに置いておくよりも、そうでない場所に置いたほうがいい。

ヤマダ電機の「環境対策商品」の一環として発売

ヤマダ電機では、3月11日の東日本大震災が起こる前から、家庭用蓄電池の販売をもともと予定していた。同社では、太陽光発電をはじめとする環境対策商品として、オール電化、LED照明、電気自動車の販売なども行っており、家庭用蓄電池の販売もその一環だという。

東日本大震災の発生により、「計画停電」や「大規模停電」に対する備えという意味で、注目が集まっているが、それ以外にも、例えば太陽光発電を行っている顧客がこの蓄電池を使って昼に電気を蓄電し、夜に電力を使用することなども、本来の同社の提案だ。

4月15日の「EP-1000」と「EP-2500」の発売後の反響はかなり大きく、商品内容や価格についての問い合わせや、購入を前提としてもっと詳しく聞きたいといった電話などが数多くあっているという。

これまで実際に購入した顧客層としては、個人事業主や開業医、整形外科医らが多く、ある程度の人数をかかえて事業を行ったり、治療用の医療器具や複数のPCがあるといった状況を抱えている場合などが挙げられるという。

個人では、環境意識の高い人が購入するケースが多いといい、今後はさらに、「それなりの規模の企業からの注文が増えるのではないか」(佐藤氏)としている。