全てが巨大、けれど繊細

ではさっそく見学コースを見ていこう。まずは専用のシアターで工場の概要を紹介する映像を視聴。ここでは製造工程から流通、営業まで、商品が私達の手元に届くまでの舞台裏を見ることができる。映像が終わると、次は建物の4階へ移動……だが、残念ながら製造エリアの見学場所では撮影が禁止となっている。(工場内の写真は同社提供)

エスカレーターの壁には歴代のラベルデザインが飾られている

最初に見えるのは「仕込室」。麦芽・ホップ・水などの原料から、発酵前の"ビールのもと"である「麦汁」を作る。麦汁は麦芽のでんぷんが糖に分解され、甘い麦茶のような味がするそうだ。

ひときわ大きな「麦汁濾過槽」は、直径約13m(350ml缶35万本分)にもなる

その隣にあるのは「濾過室」。仕込室からタンクに送られた麦汁が発酵・熟成を終え、ビールになってここへ戻ってくる。その時点でビールに含まれている酵母などがここで濾過され、透明な金色のビールが出来上がるのだ。

ビールづくりの最後の仕上げが行われる濾過室

さらに進むと、大きな窓から巨大なタンクが何本も立ち並んでいるのが見える。これがビール作りで最も重要な工程「発酵・熟成」を行うタンクだ。仕込室で作られた麦汁は冷やしてから酵母を加え、このタンクに送られる。酵母は約一週間かけて糖をアルコールと炭酸ガスに分解する。これが発酵だ。タンクは直径約8.5m、高さ約20mと、ガンダムも入りそうな程の大きさだ。

タンク1本で350ml缶約140万本分だそうだ。工場にはこれが20本ある

発酵を終えたものは「若ビール」と言われ、味も荒くビールとしてはまだ完成していない。この後に一週間から数十日かけて「熟成」させることで、おいしいビールに仕上げられるのだ。仕込み始めてから飲めるようになるまで、1カ月ほどかかるという。

ここまで、全てが大型の装置で行われているようだが、原料から始まって各工程において必ず人間の味覚による官能検査が行われている。どんな大規模な設備があっても、その味は人間が守っているのだ。

ダイナミックなマシンの動きを見よ!

続いて建物の2階へ移動。こちらでは出来上がったビールをビンや缶に充填し、箱やケースに詰めるパッケージ工程を見ることができる。

ビールを容器に充填する工程は無菌状態にしたクリーンルームで行われる。部屋全体が汚れにくいステンレス製で、さらに気圧を高く保つことで外気の侵入を防いでいる。円型の機械の円周上に空の容器がセットされ、一回転している間にビールを充填、フタや栓をする機械に送られる仕組みだ。缶ビールの充填機は1分間に350ml缶1,400本、ビンビールの充填機は同じく大瓶600本を充填することができる。

完璧にオートメーション化された専用機の動きは美しい。工場見学の醍醐味である

完成した製品をカートンケースにパッケージしたり、ビールケースに収める作業では、仕込みの工程とは対照的にダイナミックな機械の動きが見所だ。

パッケージのラインでは容器に入れられた製品が見る見る流れて行く