あなたは、使えるねっとのVPSサービスを知っているだろうか?

「私は投資に興味があるので、パソコンとかITはちょっと苦手で……」。もしそうだとしても、大丈夫だ。投資に必要なのは、経済や相場の知識であって、パソコンのことは証券会社のサイトにアクセスして、注文ができる程度でかまわない。でも、この使えるねっとのVPSサービスは知っておいた方がいいかもしれない。今、FXなどの自動売買をする個人投資家の間で、かなりの人気だからである。

投資家の間での人気ぶりに対応し、ひまわり証券が提携をして、FX投資家によりわかりやすいサービス提供をすることになった。3月中にも、ひまわり証券のトレードツール「トレードシグナル」がVPSで正式に動くようになる。

今回は、パソコンが苦手な人に、「使えるねっとって何?」「VPSサービスって何?」という疑問に応えていきたい。使えるねっと 取締役 執行役員のジェイムス・ポーティアス氏に教えていただいた。

使えるねっと取締役 執行役員のジェイムス・ポーティアス氏

「VPSサービス」って何?

VPSサービスというのは、「Virtual Private Sever」の略で、「仮想的な個人サーバのレンタル」といった意味。今どきの企業はどこでも自社のサイトやホームページを持っていて、そこでさまざまな告知や宣伝、あるいはサービスの提供をおこなっている。自社サイトを運営するには、高性能のパソコン=サーバを設置する必要がある。しかし、自社でサーバを設置するのは、コストもかかるし、管理もしなければならない。そこで、多くの企業は、サーバをレンタルする。サーバー設備の管理は専門業者にまかせて、サイトの内容=コンテンツは、自社で作成してネット経由でサーバに送りこむのである。

企業の場合は、セキュリティや独自のサービスを展開する関係から、1台あるいは複数台の自社専用サーバをレンタルするのが普通だが、個人や小企業の場合、そこまで大掛かりなサーバは必要ない。そこで、1台のサーバを複数の人に貸し出すサービスが始まっている。これがVPSサービス。要するに、一戸建て住宅や自社ビルを賃貸するのが従来のレンタルサーバだとすれば、マンションなどの集合住宅の一部屋を賃貸するのがVPS、というイメージである。

「VPSは使う側から見ると、インターネットの向こう側に、24時間動きっぱなしの新しいパソコンをレンタルするような感覚です」(ポーティアス氏)。

「24時間動作するパソコンのようなもの」といえば、読者の皆さんはピンとくるのではないだろうか。そう。自動売買プログラムを自分のパソコンではなく、VPS上で動かすのである。やり方は簡単で、自分のパソコンにもう一つWindowsの画面が表示されるので、普通のパソコンと同じように、自動売買プログラムのインストールや操作をすればいいだけ。こうすれば、自分のパソコンを電源入れっぱなしにする必要もないし、他の作業(たとえばデジタルカメラの写真の修正)などをしたときに、自動売買プログラムの動作が不安定になるという心配もない。

そういう点から、システムトレードの投資家に注目されているのである。

社長は豪州人、ポーティアス氏もニュージーランド出身

このVPSサービスについて、詳しく説明する前に、使えるねっとという会社と、ポーティアス氏について、少しご紹介したい。使えるねっとの代表取締役はジェイソン・フリッシュ氏というオーストラリア人。しかも、本社は長野県長野市にある。ポーティアス氏はニュージーランド人だ。もちろん、働いている社員の多くは日本人。さまざまな国籍の人がいっしょに働いているというマルチ・カルチャーな企業でもある。

「オーストラリアやニュージーランドでは、みんなで集まってバーベキューパーティーをするのが最高のもてなしなんです。ですから、社内でもBBQパーティをよくやります。社長がオーストラリア人ですから、羊を一頭つれてきて、丸焼きにしようとしたことがあります。日本人はみんな顔が青ざめてました(笑)。向こうでは最高のごちそうなんですよね」。使えるねっとでは、毎日こうしたカルチャーショックが起きている楽しい会社なのだ。

ポーティアス氏の日本語は、ネイティブ日本人とほとんど変わらない。電話で話したら、多くの人が日本人だと思うだろう。それもそのはず、ポーティアス氏は高校生の頃から交換留学生として、日本に来ているのだ。

「ニュージーランドでは、いったん国を出なさいという考え方があるんです。若いうちに海外に行って、新しい経験や知見を身につけるべきだと」。

ポーティアス氏のある友人は、会計士の資格を取って、ニュージーランドの会計事務所に就職した。しかし、3年目に肩たたきにあった。「なんで一度も海外にいかないの? いかないのだったら、悪いけど、来年の君のポジションは用意できないよ」と言われたため、イギリスの会計事務所に転職した。そして、数年間、イギリスでお金を稼いでから、ニュージーランドに戻り、大きな家を建てたという。これが一般的なニュージーランド人であるという。

京都大学で国際政治を専攻、東ティモールにも渡る

ポーティアス氏の日本の留学先は、群馬県の高崎高校。そこからそのまま京都大学に進学したいと思っていたが、経済的な事情などから、いったんニュージーランドに帰国して、航空会社で日本人向け現地ガイドを統括する部門で働いた。このときには、日本語ができることが仕事に役立った。

「JTBとも仕事をすることが多く、そのときの担当者にはとてもお世話になりました。その方は関西の方で、私の日本語は高崎高校とその方から教わったようなもの。だから、群馬弁と大阪弁がちゃんぽんになった日本語なんです(笑)」。

その仕事をしている最中、日本の文部科学省から連絡があり、5年間の奨学金を受けられる資格を得たことがわかった。それで京都大学に進学し、国際政治を専攻した。大学3年のときには、独立運動で揺れていた東ティモールに単身渡った。「体制が変わる現実を自分の目で見たかったんです。でも、大変なことになってしまって、パスポートも取り上げられ、最後は国連の救助隊に助けられる事態になりました」。

ポーティアス氏が東ティモールで学んだのは、「メディアは真実を伝えていない」ということだった。「メディアの記者は、身の危険がある地域には入らないんですね。それは日本のメディアだけでなく、欧米のメディアもそうです。それで周辺で聞いたうわさ話や人の話をあたかも真実であるかのように報道している。ものすごく驚きました。世の中の情報というのはこうやってできあがっているんだということがわかりました」。

その後、京都大学を卒業したポーティアス氏は、日本のIT系の素材メーカーに就職した。「そこはものすごく日本的な会社でした。私は大学を卒業したのが25歳ですから、同期と比べると年齢が上です。さまざまな経験も同期社員よりも積んでいました。それで責任ある仕事が早くしたいと思ったのですが、会社は、7年経たないとだめというルールを変えませんでした」。