モロッコでは「油といえばオリーブオイル」

たわわに実るオリーブの実

日本でも身近になりつつあるモロッコ料理は、野菜たっぷりのヘルシーさが特徴だ。モロッコでは食用油といえばオリーブオイルを指し、料理にバターなどの動物性脂肪はほとんど使わないのだとか。タジンやクスクスにもオリーブオイルが使われ、付け合わせで出されるサラダにもオリーブオイルを使用。とはいえ、料理に大量に使われるわけではなく、あくまで肉や野菜の旨みを引き出す"引き立て役"として使われる。

オリーブオイルのカロリーは他のオイルと大差ないが、オレイン酸やリノール酸、α-リノレン酸、ポリフェノール、ビタミンA、Eなどを含み、他のオイルと比べて栄養価が高いことから、「適量を長期間摂取することが病気予防に役立つ」とされているが、モロッコ料理はまさにそれを実現しているようだ。

オリーブオイルの産地というとイタリアやスペイン、ギリシャが思い浮かぶが、モロッコも同じ地中海沿岸国として、毎年世界6位のオリーブ生産量を誇っているという。モロッコ産のオリーブの実やオリーブオイルは各国に輸出されており、日本にもある某有名サンドイッチチェーンのオリーブも、モロッコから輸出されていると聞く。

オリーブオイル工場に潜入!

モロッコを旅していると、そこかしこでオリーブの木を目にし、地平線のかなたまで続くオリーブ畑があったりもする。オリーブがたわわに実るのは、10月~11月。そこで昨年のオリーブの収穫期に、アトラス山脈のふもとに300haのオリーブ畑を持つ「アトラスオリーブオイル」社を訪ねた。

同社は1887年創業という歴史を持つ。灼熱の太陽にさらされた乾燥した大地で育ったオリーブは、過酷な環境下でよ

どこまでも続くオリーブ畑。土も空気も乾燥している

オリーブオイルの製法はいたってシンプル。実を水で洗浄した後、粉砕、圧搾し、油分が抽出される。基本的な製法はどの工場でも変わらず、化学薬品や溶剤や添加物を必要とせずに油分を得ることができるため、体にも環境にも優しい。オリーブの搾りかすは燃料に使われるという。

洗浄されたオリーブが運ばれていく

オリーブの実が搾られオイルが出てきた

搾りたてのオリーブオイル

赤い大地に育ったオリーブの実は、傷つけないように細心の注意を払われ専用のマシンで一気に摘み取られる。鮮度が命のオリーブは、即座に畑に隣接した工場へと運ばれ、加工される。驚いたことに、この工場ではすべての実が収穫後20分以内に加工され、その場でボトリングされている。実を摘み取ってから商品になるまで、ほんの数十分しかかからない。このスピーディな作業こそが、極上のオリーブオイルを生み出す秘密なのだ。実の品質がよいだけでなく、実の栄養価を失うことなく加工することで、香り高いオイルが得られる。

収穫マシン。あっという間に実だけを摘み取る

大量のオリーブの実が運び出される。この後、20分以内に工場で加工される

搾りたてのオリーブオイルは、オイルというよりオリーブジュースといった感じでサラサラ。搾りたてをカップにすくって少し口に含むと、オリーブそのものの香りが口の中でふんわりとふくらみ、そのまま飲めそうなくらいあっさりしている。同社のオイルは数々の国際的な品評会での受賞歴があり、その品質は世界のグルマンからのお墨付き。同社のオリーブオイルは日本にも輸出されており、専門店などで購入可能だ。

モロッコ産オリーブオイルはまだ少量しか日本に輸出されていないが、すでに日本で売られているものは、高品質なものばかり。しかし価格は意外にも手頃なものが多い。数量限定で売られているものが多いので、モロッコ産を見かけたら「即買い」が賢いかも!