がん細胞は無制限に分裂する

2010年12月、国は子宮頸がんの予防ワクチン接種の費用補助を決めました。自治体によっては、それ以前から費用の半額補助をしているところ、今年になってから補助を決めたところなど、自治体によって対応は異なるようです。ワクチン接種は13歳から16歳と子どもが対象ですが、このニュースを聞いて、改めてがんについて関心を持ったという人もいるでしょう。

そもそもがんとはどんな病気なのでしょうか。日本人が最も多くかかる病気ががんということは知られていますが、がんそのものについて理解している人はそれほど多くないようです。

そこでがんとはどんな病気なのか、治療する場合どの程度のお金がかかるのか見ていきたいと思います。

まず、がんという言葉の意味を調べてみました。三省堂の大辞林によると、「がんとは多細胞生物の細胞の分裂が不規則になって無制限に増殖し、周囲の組織を侵したり他の臓器に転移したりして生体を死に至らしめる病気。上皮性の悪性腫瘍のみをさすこともある。悪性腫瘍。悪性新生物」とあります。

人間には約60兆もの細胞があると言われていますが、この細胞が細胞分裂していくときに、何らかの要因によって正常な細胞ががん細胞に変化してしまうようです。正常な細胞が分裂する回数には上限がありますが、がん細胞は無制限に分裂できるようで、結果、周囲の組織を侵したり、他の臓器にも転移して増殖していきます。

男性の1位は「肺」、女性の1位は「大腸」

がんで亡くなる場合、どの部位ががんになってしまうのか気になるところです。厚生労働省の「人口動態統計」に出ている2009年のがんの部位別にみた性別の死亡数を見ると、男性の1位は「気管、気管支及び肺」、2位が「胃」、3位が「大腸」、4位が「肝及び肝内胆管」5位が「膵」となっています。女性はというと1位が「大腸」、2位が「気管、気管支及び肺」、3位が「胃」、4位が「膵」、5位が「乳房」です。

部位別のガン死亡率が、時代によってどのように推移しているかを表したグラフでは、男女問わず年代による増減の変化がなく比較的横ばいとなっているのが「胃がん」で、1950年から2009年まで急増しているのが「肺がん」です。特に男性の場合、「肺がん」は1950年のときは少なかったのですが、1990年代後半からそれまでトップだった「胃がん」を追い越し、2009年まで急激に増え続けています。一方、女性を見ると2000年代中ごろからそれまでトップだった「胃がん」を抜いたのが「大腸がん」でした。

定期的な検診で自分を守る

男性のトップとなった肺がんの一般的な症状は、胸が痛くなる、咳が治りにくい、呼吸時のゼーゼー音、血痰、息切れ、声のかれ、顔やむくみなどです。年齢別では40歳代後半から増え始めて、年をとるほど高くなります。肺がんになる要因といえば、喫煙習慣です。

最近ではタクシーが禁煙になりましたし、飲食店でも禁煙のところが増えています。加えて、煙草の値段が高くなったこともあり禁煙する人が増えているようです。禁煙は難しいという人は、減煙するところから始めてみてはどうでしょうか。

女性のトップとなった大腸がんは、血便、便が細くなる、便をした後すっきりせずまだ出そうな残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなどの症状が多いようです。血便があっても痔と思ってしまい病院に行くのが遅くなってしまうケースもあるようです。

しかし、大腸がんは、早期であれば100%近く治る病気のようですが、一般的には自覚症状がないので、血便などの症状が出る前に発見することが大切です。そのため大腸がん検診は重要といえます。

重粒子線治療の費用は5年間で約450万円

もしがんになった場合、どの程度の治療費がかかるのか表を見て確認しておきましょう。

どの部位のがん死亡が多いか?

胃がんの場合、内視鏡治療であれば5年間でも約74万円ですが、縮小手術や腹腔鏡治療、胃の3分の2以上と胃の近くのリンパ節を切除する定型手術になると、1年目で約110万円前後かかります。経口抗がん剤と注射抗がん剤を同時に用いる薬物療法は、手術より高く毎月24万円、年間にして約270万円程度の治療費がかかります。

肺がんの場合、最も高いのが手術と薬物療法を行う場合で1年目に約243万円です。

直腸がんの場合、5年間の治療費は内視鏡治療、手術、腹腔鏡治療の順に高くなります。直腸から肝臓に転移があると手術をした後に半年間の注射抗がん剤の治療も加わり、1年目で約500円以上の高額となります。

乳がんの治療は、がん病変のある全乳房を切除する場合でかかる1年目の治療費が約62万円、乳房温存手術と放射線治療でかかる1年目の治療費が約105万円、そして薬物療法による治療費が最も高く約400万円です。

肝臓がんで最も高いのが、がん病変部に炭素イオン線(重粒子線)を集中的に照射する重粒子線治療で、5年間の治療費が約450万円です。

公的な医療保険が適用されることで、実際の治療費とは異なる場合がありますが、比較的長期にわたる傾向があるので、金額的にある程度の準備は必要のようです。