トンカツ事件

午後の走行訓練が終わると、次は宿舎での食事タイムに。夕食は18時からだが、実際に食事が始まったのは17時56分から。候補生たちは誰一人として会話などせず、もくもくと食事を進めていく。ちなみに、この日の夕食は忘れもしない"トンカツ"だった。

食事時間は約5分。誰一人として会話はせず。黙々と食べ続けていた

夕食のトンカツ。味はなかなかのもの

カロリー計算までされた食事メニュー

なぜ、忘れもしないのかといえば、今回の取材は他の媒体との共同取材だったのだが、某記者が思い切った行動に出たからだ。

取材陣が夕食の一コマをカメラに収めようとシャッターを切りまくるなか、候補生の「いただきます」のあいさつとともに、某記者はトンカツをばくばくと食いはじめた。3分ほどたったと思う。某記者は何を思ったのか、食堂に鳴り響くほどの声を発した。

「ごちそうさまでした!!!! 僕一番!!!」

静寂のなかで響く某記者の声。そして、まるで何事もなかったかのように、そのまま食事を続ける候補生たち。異様なコントラストに、教官たちの冷たい視線も加わる。食堂の空気が一気に冷えていくのを肌で感じながら、ご馳走様を迎えた。ちなみに、候補生たちの夕食タイムは6分20秒ほど噂どおりの時間だった。

養成所にサービス精神は通じません

この一件が何事も起こさなかったわけではないが、養成所では、個性という存在がもっとも嫌われるということがよくわかった。団体生活において、出る杭は必ず打たれるのが養成所の流儀に違いないと確信を深めてしまった。

ちなみに、某記者の振る舞いは考えあってのこと。養成所取材といえば、いかにきつい生活をしているかをレポートするだけ。食事は5分、お風呂は10分、云々といったところがクローズアップされるが、食事を5分で済ますなんて誰でもできることを証明しようとしただけに過ぎない。それに加えて「笑いのない養成所に笑いを!」というサービス精神がそうさせたのであるが、悲しくもそうした考えはまったく受け入れられなかったようだ。

宿舎のなかはどうなっている?

食事後、候補生たちは入浴、自習、掃除といった日課をこなし、21時に点呼、22時に消灯となる。ちなみに、バスタイムは男女ともに約10分。もちろん、浴室は、男女別に分かれている。トイレだって別々。自習時間は走行日誌を記したり、整備マニュアルを勉強する時間に充てられる。点呼から消灯までの時間は基本的に自由時間だ。寝泊りする部屋は基本、相部屋。佐藤、坂井の両候補生は同室である。

1日の締めともいうべき「点呼」にも緊張が走る

記者が泊めていただいた部屋

では、どんな部屋で過ごしているのかもお伝えしておこう。参考までに、記者が泊めていただいた部屋を見ていただければわかると思うが、机とベッドが2台とかなり質素だ。ベッドとベッドを分け隔てるものはカーテンのみで、プライベートはほぼ望めない。

そのほか、部屋のなかに目立ったものといえば、テレビがあったが、どうやらこれは来賓者用のものらしい。佐藤候補生に確認したことろ、「えっ? あるんですか?」と驚かれ、逆に羨ましがられてしまった。……つづきを読む