ひまわり証券では、2010年8月16日から11月1日まで、「第4回システムトレードコンテスト」を開催し、「MFロボST」が最終損益147万5000円という驚異の成績で総合優勝した。同コンテストは、自分で作成したトレードシグナル用のトレードシステムを出品し、仮想売買によって運用成績を競うというもの。

「株価指数先物オーバーナイト部門」「株価指数先物デイトレ部門」「FX部門」の3部門があり、各部門とも最優秀ロジック賞には賞金50万円、優秀ロジック賞に賞金20万円が授与された。また、同社の自動売買ツール「エコトレFX」で提供されているシステムから、もっとも運用成績が高くなるものを選ぶ「えらぶ部門」も用意された。

すでに、トレードシステムのコンテストとして定着した感のある「システムトレードコンテスト」だが、ひまわり証券はなぜ、このコンテストを主催しているのだろうか? その理由について、ひまわり証券の鈴木伸夫取締役に聞いた。

ひまわり証券の鈴木伸夫取締役

コンテストを通じ、関係者全体に"好循環"生まれる

――「システムトレードコンテスト」を開催する最大の理由はどこにあるのでしょうか?

「システムトレードの市場を日本で確立する」というのが、当社のミッションです。コンテストを開催することで、自分でもトレードシステムを開発しようと考える開発者が増えてくる。開発者が増えれば、必然的に優秀なトレードシステムが出現してくる確率が増えてきます。すると、そのような優秀なトレードシステムを使いたいという投資家の方が増えてくる。投資家が増えれば、市場が拡大して、そこにさまざまなビジネスチャンスが生まれてきます。例えば、セミナーを開催したり、書籍を執筆したりという投資家をサポートするビジネスです。

開発者はトレードシステムの開発で利益を得ることができ、投資家はより優れたトレードシステムを使うことで利益を上げることができる。さらに、関連業種の方々にはビジネスチャンスが生まれる。このサイクルを生み出すにはどうしたらいいのかというところで、コンテストという施策が生まれてきたのです。

――ひまわり証券にもメリットがあるわけですよね?

もちろんです。私たちは、安定的に利益を上げられる顧客が増えることを望んでいます。それがお客様のためにもなりますし、当社の安定的な利益にもつながります。

裁量トレードというのは「1割か2割の人しか勝てない」と、よく言われます。裁量トレードで安定的に利益を上げるには、才能や訓練が必要で、誰でも勝てるというわけにはいかないのが現実です。トレーニングすることなく、裁量トレードをいきなり始めて、いきなり損失を出してしまい、トレードをやめてしまうというお客様が一定の層いらっしゃいます。いくら多くの新規口座数をいただいても、そこからこうした層が離脱、撤退されてしまっては、当社としても安定的な利益につながりません。

一方で、システムトレードは、マネーマネージメントやリスクマネージメントも含めて、一定のルールにのっとって売買するというものですから、お客様個人の技量や訓練度にとらわれずに、売買パフォーマンスを上げていけます。さらに、短期間で大きな損失を出してしまうという可能性も小さくなります。安定的なトレードができるので、長くトレードをしていただける。システムトレードの市場が拡大していけば、当社にとってももちろんメリットがあるわけですが、それがひまわり証券以外にも波及している効果は小さくありません。

システム開発者を"システムトレード市場"につなげる

――その波及効果の一例を教えていただけますか?

さきほどお話したシステムトレード市場の拡大により、開発者、投資家、関連企業のサイクル内にある全ての関係者がメリットを受けられることもありますが、特に開発者の方のメリットは大きいと思います。

鈴木氏は、「シストレコンテスト」を通じ、関係者全体に"好循環"が生まれると説明した。ホワイトボードの図の左端は開発者群を表す

実は、トレードシステムの開発者というのは、昔から日本にはたくさんいるんです。しかし、その方々は、ほとんどが個人で、エクセルを使ってマクロを書くなどして、自分で投資することに使っていたり、研究をしたりしています。中には、インターネットを使って、トレードシステムを販売している方もいらっしゃいますが、まだまだ大きなビジネスにはなっていません。そこに、「シストレコンテスト」という求心力ができれば、そういう開発者の方を、システムトレードの市場につなげていくことができるのではないかと思っているのです。

――なるほど。トレードシステムの開発者の方を、コンテストを通じて市場につなげることができるわけですね。

優秀なトレードシステムの開発に必要なのは、プログラミングの能力ではなく、売買のアイディアなんですね。ですから、優れた売買のアイディアがあれば、プログラミング能力がさほどなくても、トレードシステムは開発できます。私たちは、できるだけ多くの方に参加していただき、多様な売買アイディアが出てくることを期待しています。

従って、従来の開発者の方ばかりでなく、今までトレードシステムの開発をしたことがない方、トレードシステムを使っているだけだった方、あるいは投資すらしたことがなかったというような方にも、参加していただけるモチベーションになればうれしいですね。

例えば、プログラマーとして、あるいは証券関係で活躍していた女性が、結婚をして家庭に入る。子育て期間中は、仕事をするのがなかなか難しいものですが、この「シストレコンテスト」が、トレードシステムの開発に乗りだすきっかけになるかもしれません。あるいは、リタイアをされた方、もしかすると怪我や病気で通勤が難しい方、そういう方にも参加をしていただけるかもしれません。さまざまな方に参加をしていただき、多様なアイディアのトレードシステムが出てくる。ここを期待しているのです。

金融機関が「コンテスト」を開催する意義

――第4回のコンテストを開催してみて、初めて気がついたコンテストの効果というのはありましたか?

ありました。弊社のコンテストが、開発者の方にとって、大きな心の支えになっているのだということを実感しました。

元トレーダーの方で、書籍を執筆したり、セミナーを開いたり、トレードシステムを開発をして販売していらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。そのような方に対して、次のような反論がよくあります。「そんなに儲かるというなら、自分で投資すればいいじゃないか」。あるいは「自分では利益があげられなくなったから、人に教えることで稼いでいるんじゃないか」というものです。

でも、こうした反論は、実は"的外れ"なんですね。トレードというのはものすごく孤独な世界で、閉じられていることが多いのです。誰と会うわけでもなく、どこに行くのでもなく、社会とあまりつながりが持てずに、ひたすら取引を行う、といったケースもあります。そうした場合、セミナーを開催したりすると、人に教えるのは面白いと感じる。感謝もされます。トレーダーの方というのは、単に儲けるだけじゃなく、「社会とつながりたい」「人とつながりたい」という気持ちも強いのです。

「公共性のある証券会社が主催するコンテストですから、多方面に与える影響は決して小さくない」と語る鈴木氏

私たちだって、仕事をしているのは、「生活費を得る」というのが第一の目的かもしれませんが、それだけではないですよね。「人といっしょになにかを成し遂げたい」「人から必要とされたい」という気持ちもありますよね。

コンテストで入賞した方で、「これでやっと妻を見返せます」とおっしゃった方がいらっしゃいました。その方は、会社を辞めて専業トレーダーになったのだけど、家族や周囲からも大反対をされて、家庭内で孤独な状況に追い込まれていたそうです。それが、コンテストで優勝できたことで、家族や周囲からも認めてもらえるようになったというのです。

当社は、まだまだ非力で小さな証券会社ですが、銀行や証券会社は金融機関であるという公共性があります。その公共性のある証券会社が主催するコンテストですから、多方面に与える影響は決して小さくないと自覚しています。