いいデザイナーの条件とは?
――津久井さんのお仕事の内容を教えていただけますか?
ロゴマーク作成会社を経営しています。「ロゴマークで『あなたの会社の成功』をお手伝いする!」をモットーに、お客様のビジネスが加速・成長するようなデザインを提案しています。
当社は専属デザイナーを置かず、レベルの高いフリーランスデザイナーたちと契約するシステムを採用しています。人件費が抑えられるのはもちろん、こうすることでお客様の多様な要望に応えられるデザイナーを揃えることができるのです。
――今まで大勢のデザイナーと接してきたと思いますが、津久井さんが考える「いいデザイナー」の条件とは何でしょうか?
高度なデザイン技術を持っていることが前提ですが、加えて
- コミュニケーション能力
- ヒアリング能力
- 文章能力
が必要だと思います。たとえどんなにいいデザインでも、お客様のイメージとかけ離れていたり、説明が支離滅裂だったりすると成約には結びつきません。つまりデザイナーにも、顧客の要望を聞き出し、抽象的なデザインやコンセプトをわかりやすく説明するスキルが求められるということです。その点においては、一般のビジネスパーソンとなんら変わることはありません。
とはいえ「いいデザインをすること」だけに集中してしまうデザイナーが多いことも事実。そこで当社はお客様とデザイナーの間にディレクターを入れ、一度ヒアリングした上でデザイナーに引き継ぎます。ディレクターがお客様の要望や性格に合ったデザイナーを選定し、橋渡しすることで成約率を高めているのです。
――完全にフリーで活動しているデザイナーが成約率を高めるには、どうすればいいでしょうか?
先ほどあげた三つの能力を養うことをおすすめしますが、私が商談や打ち合わせで使っているテンプレート式マインドマップも役に立つと思います。仕事を受注する際に確認すべき項目が書かれているので、これに沿った質問をすれば、たとえコミュニケーション能力に自信がなくても十分な情報が得られるはずです。
お客様は何を求めているのか
――「キーワード」「お客様の特徴」「ロゴについて」「その他」などの項目がありますが、この中で特に重要なものはどれでしょうか
意外かもしれませんが、「お客様の特徴」と「その他」を重視しています。なぜならお客様の背景や性格から「当社に何を求めているのか」を見極め、お互いの間にギャップを生じさせないことが成約率アップの秘訣だからです。
実際、お客様が当社に求めるものはデザインだけではありません。リーズナブルな価格を求める人もいれば、納品の速さを求める人もいます。反対に多少時間がかかってもクオリティの高いロゴマークをつくってほしいと考える人もいるでしょう。こうしたさまざまな要望をヒアリングでいかにくみ取るかが大事なのです。しかしフリーデザイナーの中にはデザインの質だけを追及するあまり、こうした点をおろそかにしている人も少なくないようです。
もう一つ押さえておくべきは「決裁者」です。必ずしも担当者が決裁者であるとは限りませんし、決裁者の一存で今まで積み上げてきたものがキャンセルになる場合もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、ここは必ず聞いておくべきだと思います。
――使い方のポイントや注意点があれば教えてください
この図は中心に行くほど項目が抽象的になり、外側へ行くほど具体的になるという構造になっています。そのため会話をしながら「今は抽象的な話なのか、それとも具体的な話なのか」を判断し、短い言葉で書き留める必要があります。慣れないうちは難しく感じるかもしれないので、そのときは空きスペースに文章を書いてもいいでしょう。
またこの図は完成したデザインがお客様のコンセプトに合致しているかどうかをチェックするのにも使えます。第三者の意見を聞く機会が少ないフリーデザイナーにとっては、冷静にデザインを俯瞰したり見直したりする手段になると思います。
会話をつないで信頼を得る
――なるほど。フリーで仕事をするのであれば自分を客観視する習慣を持つべきですね。ほかにマインドマップを使うことで得られる効果やメリットはありますか?
マインドマップはお客様とのコミュニケーションを助ける役割も果たしてくれると思います。中心部分に質問すべきことの大枠があり、色分けもされているので、自分がどんなことを話せばいいのかが一目でわかります。仮にコミュニケーション能力に自信がなくても、この図を1枚用意しておけば飛躍的に改善されると思います。お客様の発言を書き込み、そこから連想を広げていっても会話がはずみますし、慣れてきたら自分なりの項目に差し替えてオリジナルのテンプレートをつくってもいいでしょう。
マインドマップのビジュアル自体がユニークなので、これを使うと「さすがクリエイターだね!」と感心されるというメリットもあります(笑) ささいなことかもしれませんが、この図にはお客様からの信頼を得る効果もあると言えるのではないでしょうか。
ちなみに私は講演をする際にもマインドマップを使います。1枚の紙に講演の段取りや構成がまとめられるので、原稿を用意しなくても話すことができます。マインドマップは、アイデア出し以外にもさまざまな用途があるので、ぜひ活用していただきたいと思います。
(撮影 : 中村浩二)
次回は「ジャンプシンキングのための裏紙ノート」についてうかがいます。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
2008年に始めた著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。
現在は、企業や教育機関、公共機関などにポッドキャストを中核としたサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、堀江貴文さん、石田衣良さん、寺島実郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える。
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