変だけどカッコイイ、切ないのになんかユルい。2000年から2001年にかけてOVAとしてリリースされ、いまなお根強いファンの多いアニメ『フリクリ』。今回は、この8月のブルーレイ発売を記念して鶴巻和哉監督が語ったメッセージを紹介したい。10年分大人になった鶴巻監督が、あらためて振り返る『フリクリ』の魅力とは?

■『フリクリ』ストーリー概要
地方都市・疎瀬に住む小学5年生のナンダバ・ナオ太は、ある日、謎の女が乗ったべスパに引かれてしまう。“すごいことなんて何もない"はずだったナオ太の周囲が、その日からあり得ないことだらけになる。ナオ太の頭から角が生え、さらにはロボットが出現。元凶の女・ハル子はケロリとした顔でナオの家に家政婦として登場。この女、いったい何者なのか?

――まずおさらいとして『フリクリ』が制作された経緯を教えてもらえますか?

鶴巻和哉 つるまき・かずや
1966年生、新潟県出身。アニメーターを経て『新世紀エヴァンゲリオン』では副監督として活躍。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でも監督として庵野秀明総監督を補佐している。『フリクリ』以外の単独監督作には『トップをねらえ2!』などがある

「『新世紀エヴァンゲリオン』がひととおり終わったあとで監督の庵野さんから『つぎは鶴巻が』みたいな話をされたので『じゃあやります』という流れでしたね。ただ企画を練り始めたらやりたいことが多すぎて、結局1年ぐらい経ってもうまくまとまらなかったんです。それで現場としては、先に『彼氏彼女の事情』を作ることになって、僕はその前半を手伝ってから『フリクリ』に移りました。企画を再開してからは、もう吹っ切って『とにかくやりたいことだけやろう』と思ってましたね。悩み始めると作れなくなるのがわかっていたので、自分が好きな部分の面倒なことはいくらでも考えるけど、嫌いな部分の面倒くさいことは考えない」

――当時鶴巻さんは『フリクリ』をどういう作品だと考えていましたか?

「丁寧に作ったという意識があったので『フリクリ』も洗練された、スマートなアニメを作ったというつもりだったんですが、でも周囲からは『尖ってますね』と言われて『ん?』と当時は思ってたんです。でも今回ひさしぶりに見直したら、ゴツゴツしたすごくいびつな作品ですね(笑)」

――「サブカルっぽい」という評価もされていますが、会話のテンポも独特ですね

「脚本の榎戸(洋司)さんに『会話の流れとして1から10まであったとして、全部を順番に言う必要はないよ』と話しました。1、2、3と来たら4を省略して、つぎのセリフではもう5を言わせてる。そのつぎが6なのも見ている人はもうわかっているから、5のあとには7を言わせていい。SF設定も重要じゃないだろうと思うところは全部省略しちゃいましたね。まあ、もうちょっと親切でもよかったかな(笑)」

――「フラタニティ」とか「アトムスク」とか意味ありげな単語は出てきますが、劇中で説明されるわけでもない

「ナオ太にとっては、自分に信じられるハル子でいいのであって、フラタニティが悪の結社であろうが侵略軍団であろうが関係ないということなんです。まあ、『エヴァ』はそういう設定や謎に食いついてもらうように作っているんで自業自得ではあるのですが、『フリクリ』ではわからないことはわからないままでもいい、というスタンスでしたね」

――その前の『エヴァ』でやれなかったことを『フリクリ』でやろう、という意識は当時からありましたか?

「『エヴァ』って前のめりに深刻になっていく話なんだけど、僕はあんなに深刻じゃなくていい。悩んでてもお菓子は食べるし、面白そうなテレビがやってたら見ちゃう。悩んでるからと言ってずっと部屋の隅で体育座りになっていることはないんだよな、というあたりは『フリクリ』にも反映されていると思います」

――現在鶴巻さんが携わっている『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に『フリクリ』から引き継いだ部分はありますか? 例えば『新劇場版』のマリは、鶴巻作品的なヒロインだとも言えますが

「まあ、マリに関してはそれまでの『エヴァ』っぽくないキャラクターを作ろうとした結果として、『エヴァ』的な深刻さからは一歩距離を置いてることが『フリクリ』っぽく見えている、ということだと思いますけどね。『フリクリ』っぽくしようと意図したわけではなくて、庵野さんと話し合いながら落としどころを見つけていくと、結果的にそうなっちゃった、ということですね」

(次ページへ続く)