毎日コミュニケーションズは、電子出版をテーマとした新情報誌『eBookジャーナル』を創刊する。出版業界だけでなく、新分野参入を目指すIT企業なども対象に、電子出版ビジネスのハブ媒体を目指す。11月中旬の創刊に向けて準備中の同誌編集長、小木昌樹氏に話を聞いた。

電子出版ビジネスを成功に導くガイド役に


──いまの出版業界が置かれている状況とは?

『eBookジャーナル』編集長 小木昌樹。DTP専門誌などを経て、『+DESIGNING』(毎日コミュニケーションズ)を創刊、同誌編集長を務める

小木 いま出版業界は、構造不況業種と言える状況になっています。業界全体の売上は1996年をピークに下がり続けていますが、一方で出版点数は増えているんです。これは一点あたりの売上減少を点数でカバーするという状況を示すものです。2009年の市場は、書籍、雑誌合わせて売上高2兆円を切りました。これは20年くらい前の水準で、その中で多くの出版社が四苦八苦しています。

──電子出版がその打開策になる?

小木 どの出版社も「既存のビジネスモデルではこの状況を打破できない」と考えていて、そのひとつとして"電子出版"に光明を見出しているわけです。米国では2007年に(アマゾンの)キンドルが発売されて、しっかりとビジネスになっている。日本では今年になってiPad人気もあって電子書籍が脚光を浴びだしました。日本の出版業界にとって2010年は、各社が一斉に電子出版に取り組みだした年と言えるでしょう。『eBookジャーナル』はそうした電子出版ビジネスへの取り組みをサポートする媒体です。

──『eBookジャーナル』の役割とは?

『eBookジャーナル』は2010年11月中旬に創刊

小木 まだ多くの出版社にとっては、電子出版ビジネスは「どう取り組んだらいいのかわからないが、やっていかないといけない」という状況だと思います。本誌はそのガイド役として、電子出版ビジネスに関わるすべてのプレイヤーに有益な情報を提供していきます。媒体コンセプトは「電子出版ビジネスを成功に導く総合誌」です。

電子出版ビジネスには、従来の出版社や書き手、デザイナー、印刷会社など紙系コンテンツのプレイヤー以外も多くが参入してきます。出版業界だけでは成立しません。IT企業であれば、"コンテンツの販売基盤"となるプラットフォーム作りや、各種フォーマットに対応した電子書籍コンテンツの制作ツール、DRM(著作権保護技術)を提供するプレイヤーなどもいるでしょう。Web制作会社の多くも電子出版ビジネスを好機と捉えています。出版社には電子書籍の制作やインターネット上でコンテンツを売ることについてノウハウがないわけですから。でも、一方でIT企業は出版分野では素人の状態。本誌はその架け橋となるものです。著作権問題も含め、制作から販売まで電子出版ビジネスに関するまとまった情報を提供いたします。

──電子版の提供予定については?

小木 メインは紙媒体になりますが、11月の創刊時には同時にfujisan.co.jp様より電子版を配信する予定です。これはPDFフォーマットになります。また、こちらは実験的な要素を盛り込んでいくことになると思いますが、さまざまなツールやフォーマットで制作し、複数のプラットフォームによる流通に乗せる──そうした試行錯誤の結果をどんどん誌面でシェアしていくつもりです。成功も失敗もすべて公開するという試みですね。だから、「電子出版の実験誌」というのも本誌のコンセプトであり、存在意義だと思っています。『eBookジャーナル』は11月からの隔月刊行になりますが、電子出版ビジネスに関わる方にはぜひご期待いただきたいと思います。

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電子出版ビジネスを総合サポートする雑誌『eBookジャーナル』は、2010年11月中旬創刊予定。予定価格は2,100円。電子版(1,260円、定期購読時は5,040円/6冊)も同時公開の予定となっている。

(マイコミジャーナル編集部)