ソニーは9月1日(米国時間)、同社が米国で発売している電子ブックリーダー「Sony Reader」3機種のアップデートを発表した。最新版ではE-Inkディスプレイのコントラストが向上しているほか、最下位のPocket Editionが画面タッチ動作に対応し、全機種タッチスクリーン対応となった。また最上位のDaily Editionでは3G通信に加え、新たにWi-Fiをサポートした。機能強化の一方で下位のPocketとTouchの2モデルでは旧製品に比べて30ドル値上げされており、Amazon KindleやB&N nookといったライバルが熾烈な値下げ競争を繰り返しているなか、ソニーは逆行した動きを見せている。

写真左より、Daily Edition(7インチ)、Touch Edition(6インチ)、Pocket Edition(5インチ)

Sony Readerは現在、5インチスクリーンのPocket Edition、普及モデルの6インチスクリーンを搭載したTouch Edition、3G通信に対応して7インチスクリーンを搭載したDaily Editionの3種類のモデルで構成されている。特にDaily EditionはKindle対抗で登場した製品であり、Whispernetによるワイヤレス接続機能をセールスポイントにするKindleに対し、AT&Tの3G通信ネットワークへの接続機能をサポートすることでオンライン経由でのコンテンツ更新を可能としたものだ。今回のアップデートではさらにWi-Fi接続に対応し、大画面を使ったWebブラウジングも容易になった。

ラインナップ全体でみると、ライバルのKindleが第3世代で新型E-Inkディスプレイを採用してコントラストと反応速度の両面で大幅なパワーアップを果たしたのに対し、Sony Readerは旧型技術のままで視認性に対する不満の声があり、今回のアップデートではこれらに対応したことになる。またタッチスクリーン対応を最下位のPocket Editionにまで引き下げたことで全モデルでの対応が行われ、これがE-Inkを採用したライバル製品にないアドバンテージとなった。このほか機能面のアップデートとしては、PDFなどのファイル閲覧機能が強化されているほか、内蔵辞書による単語やフレーズの検索機能が付与されている。

こうした機能強化がある一方で今回残念なのが価格の引き上げだ。Sony Readerは価格改定で旧モデルの値段がPocket Editionで149.99ドル、Touch Editionで169.99ドル、Daily Editionで299.99ドルとなっていた。だが今回発表の新モデルではそれぞれ179ドル、229ドル、299ドルとなっている。下位モデルを中心に30ドルほど値上げされた形だ。前述のようにライバルらが熾烈な価格競争を繰り広げるなか、今回の措置はソニーにとってマイナスに作用する可能性がある。特に値下げ後のKindleが爆発的に販売台数を伸ばしたことを考えれば、価格面での訴求力がないことは非常に厳しい。

また今回の発表に合わせ、ソニーでは専用の電子ブックリーダー以外でコンテンツの閲覧が可能なソフトウェアの提供スケジュールも発表している。現在PC向けの閲覧ソフトウェアとしてはWindows版とMac版の2種類が用意されているが、今年末をめどにAndroid版とiPhone版アプリの2種類を提供する計画だという。

さらにソニーによれば、これまで米国など一部に限定されていたSony Readerの提供地域を、今後はイタリア、スペイン、オーストラリア、日本、中国にも拡大していく意向だという。先日に同社はKDDIらとの提携で日本での電子書籍市場参入を表明しており、何らかの関連性が考えられる。