『電子書籍の衝撃』の著者に聞く!
電子書籍は"出版と読者"の関係をどう変えるのだろうか。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が2010年4月に上梓した『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、電子書籍がもたらす業界への影響、出版文化の未来の姿が描かれた。そして、本書の刊行後、日本では5月のiPad発売を機に電子書籍への注目度が向上。出版、IT、通信業界によるビジネスを巡る動きも活発化してきた。最近の業界動向を含め、改めて佐々木氏が電子書籍をどう見ているのか話を伺った。
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佐々木俊尚氏。1961年生まれ。早稲田大学政経学部中退後、毎日新聞社、アスキーを経てフリージャーナリストとして独立。IT分野を中心に取材、執筆活動を続けている。公式サイト、Twitterアカウント |
──『電子書籍の衝撃』を執筆するきっかけは、Twitterでのやり取りだったとか
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『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著 / ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊) |
ええ。ディスカヴァー・トゥエンティワンの干場(弓子氏・同社取締役社長)さんから「ウチで書いてみませんか?」と声をかけていただいたのが、2009年の夏でした。といっても、最初から電子書籍について扱うことを考えていたわけではなく、干場さんとの打ち合わせを経てテーマが決まった形です。
個人的には、電子書籍の波が来るのはもう少し先のことだと考えていたので。昨夏の時点では「この1~2年の動きは大したことないだろう」と踏んでいた。だから、刊行も時期を見ながら、長めのスパンで執筆していくつもりだったんです。
──しかし、状況は急激に動いた、と
そうですね。2007年にアマゾンの電子書籍用タブレット端末「Kindle」がアメリカで発売されていましたが、まだ日本国内での関心は低かった。去年(2009年)の夏の段階では「iPad」のウワサすら出ていなかったし。
ところが秋になって、Kindleのインターナショナル版が発売(2009年10月)になったり、春先から日本でも話題になっていたGoogleのブック検索を巡る訴訟で和解の動きが加速したりと、電子書籍の動きがにわかに活発化しつつあった。さらに年末になると「アップルがタブレット端末を、2010年の年明け早々に発売するらしい」というウワサもかなりの信憑性を持って出回り始めたんです。
「これは、予想よりも早く電子書籍の波が来そうだ」と感じて、ほかに抱えていた書籍執筆の順番を入れ替えさせてもらい、急ピッチで書き上げました。
──ウワサどおり、2010年1月末にiPadが発表され、米国で4月、日本で5月に発売となりました。本書の刊行が4月15日ですから、絶妙なタイミングでした
結果的にはそうなりましたけど、狙い澄ましたわけではなく「珍しく合ったな」という感想です。もともと、単純に話題になるタイミングだけを見て本を書くタイプでもないですし。ただ、どんなトピックを取り上げるにせよ、変化の局面を描くに際していかにエッジの部分で捉えるかが重要になってくる、という意識は常に持っていますね。……つづきを読む