コーチングを取り入れたメモ
――小松さんはコーチングを学んでいるそうですね
私は人付き合いが得意なタイプだと思っていたのですが、よく考えてみると自分と感性が近い人との間に限られていることがわかりました。
もっと視野を広げ、自分とは違う感性を持つ人とも心を通わせたいと思っていた時、コーチングという手法に出合ったのです。
コーチングでは、相手がどんな価値観を持ち、何を求めているのかを最初に見極めます。相手によってコミュニケーション方法を変えたり、違う方法でアプローチしたりする必要があることにも気付かせてくれました。
今では私自身もパーソナルコーチの活動をしています。友人や家族と接するときもコーチングの手法を意識するようになりました。
――コーチングではどんなメモをとるのですか
コーチは相手の性格や、考え方、こだわりなどを知るための質問をし、それに対する答えを書き留めていきます。相手が話をするときの声のトーンや、身振り手振りの有無、目を見て話すかどうかといった特徴もメモします。
――コーチングを部下の指導に役立てることはありますか
教育担当だった時、私が声をかけると「叱られる」と思い必要以上に緊張する人もいました(笑) きちんと指導しつつも心を開いてもらえるよう接するには、コーチングの視点を生かしたメモがあると、とても役に立つのです。
例えばある部下の趣味がテニスだとわかったとします。そこで私は「この人は何を求めてテニスをしているのか」に焦点をあて、さりげなく質問をしていきます。
すると「自分を向上させるため」「仲間と一緒に運動することが楽しい」「プレーヤーの動きを分析するとおもしろい」など、その人の考え方が反映された答えが返ってくるはずです。
その答えのメモをもとに相手の価値観を分析し、理解を示していけば、お互いの信頼関係を損なうことなく指導できると思っています。
どんなほめ言葉が効くのか?
――部下を伸ばすために、特に意識して書くことはありますか?
「その人にとって、どんな言葉が一番心に響くのか」です。
例えば「頑張ったね」というひとことでも私は三つの言い方ができると思っています。
- 頑張ったね……過去の成功や実績をほめてほしい人に
- 頑張ってるね……現在の姿を見てほしい人に
- 頑張ってね……期待されることが励みになる人に
このように、一人ひとりの性格によって「うれしい」と感じる言葉は異なると思うのです。
これは普段の仕事ぶりや会話のなかに現れるので、私は気付いたことがあればすぐにメモするように心がけています。
こうして蓄積されたメモは、面談のときにも使います。当時はコミュニケーターひとりにつき1冊のファイルを用意し、仕事のパフォーマンスから特技、好きな事などを記録していました。コミュニケーターのモチベーションを上げられれば、お客様の対応の質も上がると考えていたからです。
――部下や周囲の人たちの特性を尊重することも大切ですね
ゆっくり話す人に早口でまくしたてると会話のリズムが合いませんし、とても元気な人なら自分も調子を合わせる必要があります。できるだけ相手のペースを尊重し、「私もあなたと同じですよ」と伝えられれば、その人と良好な関係を築けるのではないかと思います。
私が相手の性格を把握しようとするのは、その人に合った自分になるためです。これは本来の性格を一時的に変え、演技しているとも言えるかもしれません。でもそれは無理をしているのではなく、あくまで円滑なコミュニケーションをはかるため。自分とタイプが違う人と会話する時は、あえて演技することも大事ではないでしょうか。
人脈の把握と発展のためには
――小松さんは社内外で活躍されているので、出会う人の数も多いのではありませんか?
そうですね。会社の代表としてJ-Winに派遣されていますし、外部の勉強会や交流会などにも参加しているので、たくさんの方にお会いします。
そこで、名刺交換をしたり仕事やプライベートでお世話になったりした場合には、自宅のパソコンのGoogleカレンダーに「この人とどこでどんな話をしたか」を記録しています。
つまりスケジュール管理と日記を兼ねたデータベースとして使っているのです。定期的に開催される会合に出席するときは、前回の話題やどんな人とお会いしたかを復習してから臨みます。こうしておけば前と同じ話をして時間を無駄にすることもありませんし、会合全体の流れを把握することもできます。
――私もGoogleカレンダーを使っているのですが、データベースとして使えることには気が付きませんでした
せっかく情報が保存されているのですから、一度使っただけで終わらせるのはもったいないと思います。今まで会った人や自分の行動を振り返ることができ、そこから新しいアイデアが生まれることもあるはずです。ぜひ活用してみてください。
――人脈を広げたいときに役立つメモはありますか?
人脈を広げたければ、コンタクトをとるのに最適な機会を逃さないことです。
特に相手の誕生日や記念日は絶好のチャンス。その日がわかった時点でメモしておけば、贈り物や電話をかけることができます。
ひんぱんに会うことができない人なら、最後に会った日を書いておくのもおすすめです。そうすれば折をみて手紙を書いたり、「あの時お話ししていた件はどうなりましたか?」とうかがったりすることで親交が深まる場合もあると思います。
相手の性格をメモしておくのも役立ちます。「この人はキャリアアップに熱心だ」と書いておけば、ビジネスに役立つ本やセミナーの話題で親しくなれるかもしれません。
このようにきっかけは無数にあるので、チャンスになりそうなことはすかさずメモすることをおすすめします。できるだけ詳細に相手の情報を記録し、自分との関係が切れないように心がけるといいのではないでしょうか。
次回は、「自分を成長させる手帳の使い方」についてうかがいます。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
中国新聞社記者、全国紙系編集プロダクションのライターを経て、2008年著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をスタート。配信後2カ月でiTunes store podcastビジネスランキングで1位を獲得、月間20万DLを記録する。現在は、企業や教育機関などにポッドキャストを活用したマーケティングサービスを提供。「野宮真貴の新宿二丁目ハー メルン」「石原明の経営のヒント+」など、プロデュース番組多数。
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