酔った勢いも手伝って…居酒屋でもらった「月亭方正」の名前

「半年くらいそうやって一人で練習してたら、ヒトにみせたくてしょうがなくなってきた。でも『古典』というのは、噺家さんの財産やというのはなんとなくわかってたから、僕が勝手に舞台でやるっていうのはあかんやろうな、と。

「山崎邦正に求められているものっていうのは、団体芸のなかでの『アホ』とか『できひん』とか『ヘタレ』とかのイメージ。でも月亭方正で『ヘタレ』っていうのは無理なんです」

そこで噺家だれか知らんかなぁって思ってたんですが、その頃ちょうど月亭八光とめちゃめちゃ遊んでて。そういや八光は噺家とかいってたなぁと。聞いてみたら八光が『僕の弟子になればいいですよ』って言うんですが、そういうことじゃないねん。悪いけどそら違う、師匠を紹介してくれへんか、となったわけです」

――それが月亭八方師匠ですね。

「そう。それで師匠が『月亭会』っていう勉強会を毎月開いてるから、そこに山崎邦正としてでればいいですよ、と。ほな、ださしてくれーとなったのが2008年5月11日。『阿弥陀池(あみだいけ)』を一生懸命やって。そらもうはじめてですよ、一人っきりで30分ももたすの。もちろん落語のおかげでもってるんですが、それがうれしくてうれしくて。

「山崎邦正は噺家ではないけど、落語やるときには月亭方正って名乗ってええがな、という師匠の優しさですね。異色部門という感じ」

『誰がいけというた、阿弥陀がいけというた~』という下げの最後。太鼓がババンっと鳴ったときに、もう泣きそうになってね(笑)。自分でもできたなと思ってたところがウケたりとかして。こんな充実感は、なかなかテレビではないかなと。いや、勿論テレビも凄いんですよ、瞬時の受け答えでなんとかせんといかんからね。

それで終わったあとの打ち上げにも師匠が呼んでくれて、一次会、二次会いって5~6時間飲んだんかなぁ。結構僕も酔うて。まぁそんときに酔うた勢いで『月亭くれ~』といったんですよ。あとで聞いた話だと、師匠を前に何を? て周りもピリッとしていたらしいですけど。そしたら師匠が『ええよぉ~あげるよぉ~』って(笑)。

居酒屋にあった紙の裏に『八方の"方"をつかえばええがな』と月亭方正の名前を書いてもらいました。その居酒屋の紙はいまでも持ってますよ」…つづきを読む