格付投資情報センター(R&I)は22日、中国の段ボール原紙メーカー、理文造紙有限公司と業務提携し、同社の株式12%を35億5000万香港ドル(約426億円)で取得すると同日に発表した日本製紙グループ本社に関し、「現時点では格付に与える影響は限定的」との判断を示した。

R&Iによると、理文造紙有限公司(Lee & Man Paper Manufacturing Limited)は、香港証券取引所に上場する段ボール原紙メーカーで、中国に4工場を展開。段ボール原紙の生産能力は年間455万トンで、中国におけるシェアは第2位。1998年に操業開始後、積極的な設備投資により急成長を遂げてきた。2010年3月期の業績は、売上高110億9926万香港ドル(約1332億円)、当期純利益18億3330万香港ドル(約220億円)。

日本製紙グループ本社は、理文造紙の取締役として2名を派遣するほか、生産管理・コスト削減・高付加価値品の開発などで技術交流する。今回の株式取得に必要な資金は有利子負債で調達する方針という。

R&Iによると、日本製紙グループ本社は2015年を目標とする「グループビジョン2015」で、連結売上高1.5~2兆円、国内営業利益1000億円、海外事業比率3割などを掲げてきた。ここ1、2年は国内市場が頭打ちとなる中、洋紙を中心に国内の生産能力を縮小しながら、成長が見込めるアジア・オセアニアでの事業拡大に力を入れている。

一方、「日本製紙グループ本社は、2010年3月期末で純有利子負債は7386億円の有利子負債を抱える。2009年3月期までに大型投資が一巡、以降、負債圧縮に動き出しているものの、財務構成には改善余地が大きく、今回の株式取得の資金負担は小さくはない」(R&I)。

R&Iでは、今回の理文造紙への出資割合が低いこともあり、「業務提携効果が短期間で上がってくる可能性は低い半面、相手企業の事業リスクを抱え込むことにはならないと考えられ、現時点では格付に与える影響は限定的と判断している」としている。

ただし、「日本製紙グループ本社は海外展開に積極的に取り組む方針であり、今後の投資戦略並びに財務運営の動向を注視していく必要がある」との判断も示している。