夜景はまるで銀河鉄道 レストランの景色もバッチリ

新宿駅18時56分着の「スーパービュー踊り子」がやってきた。昆虫の目のような展望席を持つ「251系」電車だ。この時間帯から景色は暗くなっていく。この部屋は東南向きなので夕陽は拝めない。しかし、西日は撮影に不向きだから好都合だ。それよりも夜景の素晴らしいこと。電車の窓の光がつながって、1本の線のように見える。いくつもの光の帯の往来は、アニメ「銀河鉄道999」のトレーダー分岐点のようだ。上空にはヘリコプターが3機ほど浮かび、同じコースを周回していた。報道ではなく、東京夜景クルーズではないだろうか。

夕食はホテル内20階のレストラン「TRIBECS(トライベックス)」に行ってみた。夜景を楽しめるレストランだけに混んでいる。そこで「何時でもいいから窓際を」とお願いし、内線電話で知らせて頂いた。宿泊者専用の「ステイディナー」をいただく。スープ、たっぷりのサラダ、焼きたてパン、メインはビーフサイコロステーキで3,000円。

スーパービュー踊り子号「251系」は翌朝も「おはようライナー」としてやってくる

夜もトレインビューのレストラン「TRIBECS」で

実は今回の滞在、仕事を持ち込んで自主的にカンヅメになるはずだった。しかし、ここまでちっとも仕事をしていない。景色が楽しくて仕方ない。部屋にテレビがあることも忘れていたほど。最終列車の発着を見届けてからも「もしかしたら保線作業があるかもしれない」と思ってしまう。しかし、ちょっと腰を伸ばそうとベッドに寝そべったら、すぐに深い眠りに落ちた。

朝は意外にも貨物列車ラッシュ

大胆にもカーテン全開で眠ってしまい、強烈な朝日で目覚める。5時前だ。眠りが深かったせいかスッキリとした目覚め。始発列車の時間帯でちょうどよかった。さっそく窓辺へ。中央線の引き上げ線には「スーパーあずさ」の「E351系」がいた。中央本線系統の発着はこの部屋から見えないと思っていたので、これは嬉しい。

そして5時4分。埼京線の線路に貨物列車がやってきた。そう、埼京線や湘南新宿ラインというが、この線路はもともと「山手貨物線」という貨物列車用の線路だった。いまではほとんどの列車が武蔵野線に迂回してしまうが、旅客列車が少ない朝の時間帯は新宿駅にも貨物列車がやってくる。このために早起きしてもいいくらいだ。青い機関車、赤い機関車のコンテナ貨物列車に続き、5時30分頃にはブルー一色の貨物列車がやってくる。「TOYOTA LONGPASS EXPRESS」だ。愛知県と岩手県のトヨタ関連工場を結び、1日に1往復している。専用の大型コンテナにTOYOTAの文字。かっこいい。

意外にも新宿駅の早朝は貨物列車ラッシュ

このあと、石油タンクを連ねた貨物列車や、なぜか電気機関車とディーゼル機関車の重連になった貨物列車が通った。朝から目が離せない。JRの線路の向こうには長距離バスのターミナルに続く道路があって、6時前後には全国から夜行バスが到着する。こちらはバスファンにはたまらない眺めだろう。いろんな色の地方バスがやってきた。

早朝の時間帯は中央線の快速運転はない。オレンジ色の「E233系」や「201系」が緩行線を走っている。緩行線に総武線用の黄色い電車が走り始め、中央線快速が動き出すと、ラッシュアワーの幕開けだ。「同時に何本の列車を写真に入れられるか」とチャレンジしていたら、どんどん時間が経ってしまった。しかし、ラッシュが落ち着く頃には、小田急ロマンスカーがたくさん走り出す。いまのうちに朝食をいただこう。昨日はダイヤが乱れて見られなかった「20000形」RSEの「あさぎり」を7時15分に見送ってから再び「TRIBECS」へ。

ラッシュアワー通勤電車のパレード

小田急「20000形」RSE

朝食はビュッフェスタイル。「待ってもいいから西の窓側を」とわがままを言って着席。部屋から見えない方面の景色を楽しむ。あいにくの曇り空になってしまったけれど、晴れていれば代々木ゼミナールのビルの横に富士山が見えるそうだ。その下には小田急の線路。ここからは「富士山に向かっていくロマンスカー」が撮れそうだ。客室の窓は防音と空調のため二重窓になっているけれど、レストランは1重窓。だから写真がきれいに撮れる。

朝食メニューは大充実。洋食と和食のメニューがズラリと並び、玉子料理だけでも数種類。オムレツは専任の調理スタッフがその場で焼いてくれる。多い日は1,000枚以上も焼くそうだ。焼きたてといえば、ワッフルも美味!

朝食はビュッフェスタイル

西側の眺望。晴れた日は「ロマンスカー+富士山」を撮れる

部屋に戻り、11時のチェックアウトギリギリまで景色を楽しむ。「おはようライナー新宿」には「251系特急車両」や総2階建ての「215系」が顔を出す。修学旅行団体を載せた旧国鉄色「189系」も来た。小田急は9時台~10時台がロマンスカーのラッシュだ。10時03分着、折り返し10時15分発の「あさぎり」はJR東海の「371系」だった。これを見たらなんとなく「締めくくり」な気分になり、大満足でチェックアウト。

なんと旧国鉄形特急が並んだ

小田急の線路でやってくるJR東海「371系」

こんなものを持っていくと便利

「まるでNゲージトレインビュー宿泊プラン/朝食付き」のお値段は、コーナーダブル1名1室利用で平日は24,800円。日曜泊、月曜泊は2,000円安くなる。1時間当たりで考えると約1,200円。そう考えると、おトクな気がしてきた。オススメは金曜夜泊か土曜夜泊。翌朝は房総方面の「新宿さざなみ」など行楽列車の数が増えるので、平日より列車の種類が多くなる。

同プランを楽しむためにオススメのアイテムは、時刻表と鉄道雑誌だ。時刻表は最新号を用意する。当日の臨時列車の時刻がわかるからだ。小田急も冊子型の時刻表を販売しているが、この日は入手できなかった。その代わり窓口で無料配布している「小田急ロマンスカー時刻表」をもらってきた。ロマンスカー各列車の使用車両もわかるので便利。鉄道雑誌は「鉄道ダイヤ情報」がいい。巻末のデータ記事には、時刻表にも掲載されていない団体列車や臨時列車の情報がある。

時刻表を広げて待機

485系「ニューなのはな」時刻表には記載されていなかった

ダイヤが乱れたときは時刻表では役に立たない。リアルタイムの運行情報を知るためには携帯電話やノートパソコンがあるといい。正面にNTTドコモのビルがあるせいか、Docomoの感度はバッチリ。ソフトバンク3Gも感度良好で、iPhoneで時刻表サイトを参照しながら景色を楽しめた。部屋にはインターネット回線が引いてあり、LANケーブルが用意されている。

窓から列車を撮影するなら望遠タイプのカメラを用意したい。なぜなら、真下の列車は屋根しか見えないから。列車の顔を撮るには、遠くの列車を望遠で捕らえたい。とくに「スーペリア(ツイン/ダブル)」タイプは、新宿駅が上屋と甲州街道で覆われている。列車を撮るには真下か遠景を狙うことになるから望遠が必須だ。私は26倍ズーム付きコンデジを使っている。

そしてもう1つ大事なアイテムは「暗幕」。窓ガラスに室内や自分が映り込まないように、黒い布があるといい。自分自身も黒っぽい服を着たい。新宿はカメラショップも多いし、暗幕や黒布を調達しよう。筆者は「忍者レフ」を愛用している。円形の折りたたみ式で、片側がレフ板、片側は暗幕になる。中央にレンズを通す穴がある。これ、車窓を撮るにはとても便利なアイテムだ。今回も活躍したけれど、嬉しい悲鳴として、ホテルの窓が大きくて、このサイズでは足りないと思う場面も多かった。

照明映り込み対策の「忍者レフ」(筆者は4,800円で購入)。中央の穴にレンズを通して使う

チェックイン開始時刻からチェックアウト終了時刻までの滞在時間は21時間。ホテルに一泊しただけだけど、たっぷりと旅した気分になった。一流作家になってこんなホテルにカンヅメにされてみたいけど、振り返ればちっとも仕事をしていない。僕みたいな鉄道好きをこのホテルにカンヅメにしてはいけないようだ(笑)。むしろこれからは、なにか頑張った自分へ、ご褒美としてこんな時間をプレゼントしてあげようと思った。