スピーチには「3S」を入れよう

――スピーチで大事なことはなんでしょうか

スピーチには「共感(SYMPATHY)」「ちょっとした知識を与える(SERVICE)」「笑い(SMILE)」を入れることが大切です。私はこれを「黄金の3S(スリーエス)」と呼んでいます(笑)

「共感」とは最近のニュース、今日の最高気温や天気の話、あるいは流行しているものなどです。「ちょっとした知識を与える」はスピーチを聞いた人の得になるような情報を話に組み込むこと。最後の「笑い」は書いて字の通り笑ってもらえることです。これらすべてが入っていれば最高ですが、どれか一つだけでもいいと思います。

この三つを踏まえたうえで、日ごろから集めていたキーワードをマッピングメモに展開してスピーチの構成を考えます。

マッピングメモの書き方

マッピングメモとは、単語の「連想ゲーム」をしていくように、キーワードからどんどん発想をつなげていくものです。

例えば話題の映画『アバター』を見たとしましょう。これは3Sの「共感」に当てはまります。まず紙に「アバター」と書き、そこから線を引いて連想していきます。

「『アバター』と言えば、3D」「3Dを映せる家庭用テレビが開発されていると聞いた」「そうなるとコンテンツも対応しなくてはいけない」「ということはテレビ業界の再編も考えられる」……と思いつくままに書いていきましょう。

「アバター」から出発して「テレビ業界再編」にたどり着きました。最初と最後だけ見るとなんの関係もないようですが、実は連想でつながっているので無理なくスピーチを構築できます。また、最初と最後を結びつけるだけでもユニークなタイトルになります。

このマッピングメモを書くときのポイントは、「共感」「知識」「笑い」からそれないこと。自由に発想の転換や連想ゲームをしていいのですが、あまりマニアックなものにせず、常に話を聞く人のことを忘れないようにしましょう。

――よく考えると漫才師も同じようなことをしている気がします

彼らも感性だけでなく理論や公式を駆使しているはずです。確かにマッピングメモと、「~と言えば」で話題を転換する漫才のテクニックは似ていると思います。

――スピーチにまつわる悩みといえば、「結婚式のスピーチ」を挙げる人も多いと思います。何かアドバイスはありますか?

新郎新婦だけではなく、結婚式の「参加者全員にもわかる話をする」といいと思います。事前に参加者の規模や世代、職業などを確認してもらい、それをもとに話し方やテーマを選ぶとうまくいくのではないでしょうか。繰り返しになりますが、「共感」「知識」「笑い」のどれかが入っていることがキモです。朝礼や会社説明会などでスピーチをする場合にも、参加者の顔ぶれを考えておくといいでしょう。

ものまねは上達の近道

――三橋さんはかつて、あこがれのアナウンサーが話したことをすべてメモしていたそうですね

私は朝日放送の清水次郎さんにあこがれていて、彼の野球実況を録音し、全部文字に起こしたことがあります。

その結果、清水さんの実況はテンポのよさと同時にきちんとロジックがあるということがわかりました。彼の素晴らしさはよく知っているつもりでしたが、文字にしてみると改めて驚かされました。

こうしたメモをとろうと思ったのは、自分にすごくコンプレックスがあったから。周りはアナウンススクール出身や放送コンクールで優勝した人たちばかりで、彼らは学生時代からトークの練習もしている。ところが私は中途入社で、普通にやっていてはとても追いつけない。そんな状況で編み出した方法です。

――話すスピードの緩急も書きこむとのことですが

スピーチがうまくなりたければ、うまい人の話し方をそっくりまねすることです。私もテレビ局のスタジオにこもり、清水さんになりきって何度も読みました。最初は違和感があったものの、続けるうちに体得していきました。

いくらあこがれの人でも「コピーするのはどうか」と思うかもしれませんが、そもそも声帯が違いますし、大きく言えば生き方が違います。ですからまったく同じになることはありません。

それでも不安なら、複数の人を掛け合わせるという手もあります。私は清水次郎さんのほかに、同じく朝日放送の伊藤史隆さんとフリーアナウンサーの楠瀬淳二さんが好きなのですが、発想は楠瀬さん、声のトーンは伊藤さん、スピード感は清水さんとすれば、コピーにはなりません。

――すごいテクニックですね(笑)ちなみに、自分のトークの参考にする人は多ければ多いほどいいのでしょうか

あまり増やしすぎるとかえって身につかないと思うので、あえて3人以上にはしていません。

これはスピーチや講演がうまくなりたいビジネスパーソンにもおすすめします。あこがれている講師のDVDを見て文字に起こし、緩急の印をつけます。あとはひたすらまねをして練習すれば、だんだん力がついてくると思います。

スピーチは目に見える形があるわけではありませんが、その人が選び、作り出したものには変わりません。「スピーチは準備をしたぶんだけおもしろくなる」ということがよくわかるので、プレゼンテーションをする機会が多い人は、一度メモをとって客観的に分析してみてはいかがでしょうか。

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次回は、「スピーチ力がつくブログ・ツイッター活用法」についてうかがいます。

INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
中国新聞社記者、全国紙系編集プロダクションのライターを経て入社した企画会社で2008年、良書の著者へのインタビュー音声を無料で配信するポッドキャスト番組「人生を変える 一冊」をスタート。配信後2カ月でiTunes store podcastビジネスランキングで21日間連続1位を獲得、月間20万DLの人気番組に成長する。独立起業した現在は、インタビューやライティングに加え、ポッドキャストを軸にしたコンサルティング、コンテンツプロデュースなどを行っている。
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