3月3日、東京都千代田区の帝国ホテルにて、第55回小学館漫画賞贈呈式が行われた。「小学館漫画賞」は出版社の小学館が主催する漫画賞。優れた漫画作品を称え、漫画界のさらなる振興のため、1955年から開催されている。

第55回小学館漫画賞受賞者が揃った贈呈式。それぞれが壇上で、編集者や家族、応援してくれるファンへの思いを語った

第55回を迎える今回は、児童向け部門を永井ゆうじ氏の『ペンギンの問題』 (「月刊コロコロコミック」連載)、少年向け部門を篠原健太氏の『SKET DANCE』 (「週間少年ジャンプ」連載)、少女向け部門を岩本ナオ氏の『町でうわさの天狗の子』 (「月刊flowers」連載)、一般向け部門を阿部夜郎氏の『深夜食堂』 (「ビッグコミックオリジナル」連載)が、それぞれ受賞。また、漫画の映像化に劇場作品が大きく寄与したとして、審査委員特別賞が制作・配給会社を代表し、東宝株式会社に贈られた。以下、受賞者の声をお伝えする。

第55回目小学館漫画賞の受賞者。左から審査員特別賞の東宝株式会社・高井英幸社長、一般向け部門の阿部夜郎氏、女性向け部門の岩本ナオ氏、少年向け部門の篠原健太氏、児童向け部門の永井ゆうじ氏

■永井ゆうじ氏(児童向け部門『ペンギンの問題』)
このような光栄な賞をいただけたのも、僕を支えてくれた多くの人たちのおかげです。編集部の方は熱意に溢れ、一緒に仕事ができて幸せです。また、子どものころから漫画を描くのが好きだった僕を応援してくれた両親には、感謝しています。そして読者の応援が、なによりもありがたいです。これからも努力を重ね、多くの人に楽しんでもらえる作品を描き続けていきます。

■篠原健太氏(少年向け部門『SKET DANCE』)
このような賞をいただき、本当に嬉しく思っています。私は28歳のときに会社勤めを辞めてから、漫画を描き始めました。贈呈式では人より漫画を描き始めたのが10年遅い異色の漫画家として挨拶しようと思っていたのですが、『深夜食堂』で賞を獲られた阿部さんは、40歳を越えてデビューされていました(笑)。漫画家という道を選んでよかったと、心底思っています。

■岩本ナオ氏(少女向け部門『町でうわさの天狗の子』)
小学館漫画賞を受賞させていただき、ありがとうございます。漫画家としてこのような賞をもらえるとは思っていませんでした。この受賞は、私ひとりでは到底できなかったです。自分を支えてくれた編集部の皆様やアシスタントの方々には、本当に感謝しています。

児童向け部門を『ペンギンの問題』で受賞した永井ゆうじ氏。2回目のノミネートとなった本作は、シュールでナンセンスがギャグが衰えずにパワーアップしている点が受賞に繋がった

少年向け部門を『SKET DANCE』で受賞した篠原健太氏。受賞作ではキャラクターが生き生きと描かれ、ボケとツッコミのテンポがよいと、審査委員の支持を集めた

少女向け部門を『町でうわさの天狗の子』で受賞した岩本ナオ氏。講評では、普通の高校生の生活に、天狗というファンタジーな要素が無理なく溶け込んでいると評価された

■阿部夜郎氏(一般向け部門『深夜食堂』)
大きな賞をいただき、本当に嬉しく思います。しかし、今日この場でスピーチをするということを知らず、話のネタがございません(笑)。ただ、この場でお伝えするとすれば、感謝、感謝の思いです。連載を始めてからは、どんどん髪の毛が薄くなっていくのを実感しています。しかし、それでいても自分の能力を精一杯使い、作品を描いていこうと思います。

■東宝株式会社・高井英幸社長(審査委員特別賞)
思いも寄らなかった賞をいただき、本当に感激しています。これまでに漫画作品を原作に、多くの劇場作品を作らせていただきました。その先駆けは、やはり1980年に第1作を公開した『ドラえもん』でした。その劇場作品は、子どもたちだけでなく大人の心も掴み、現在まで劇場版シリーズとして続けられています。これからも漫画作品を原作に、よりよい作品を生んでいきたいと思います。

一般向け部門を『深夜食堂』で受賞した阿部夜郎。審査委員からは、マスターと客の緩やかな会話が続く受賞作は、大人が心地よく読める作品だとする声が多く集まった

審査委員特別賞を、制作・配給会社代表として受賞した東宝株式会社の高井英幸社長。特別賞は審査委員満場一致での授与となった

第55回小学館漫画賞の最終選考を行った審査委員。左から赤石路代氏、尾瀬あきら氏、角田光代氏、かわぐちかいじ氏、鴻上尚史氏、弘兼憲史氏、やまさき十三氏