試飲を終えて

総体的に言うと、色はどれを比べてみてもほとんど変わらない。単一品種に関して、つまりシャルドネ、ヴィオニエ、フィアーノ、シュナンブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーズ、ピノタージュは、原産国がフランスのものはすべて温暖な気候のラングドック産のブドウ、南アフリカも温暖なのでブドウが完熟しやすく、特に赤ワインは濃い色調となっている。

完熟した果実ということは当然のことながらアルコール度数にも反映され、すべてが13%超えの迫力で、飲み応えは十分だ。これでこの価格というのはかなりのお得感がある。 前述の南アフリカ産を除く単一品種はラングドックの地酒にあたり、規制も比較的ゆるいのに対し、フランス産のシャブリ、コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ、クラレット、リュサック・サンテミリオンとイタリアのキャンティ・クラッシコ・リゼルヴァは、生産地域、品種、最低(最高)アルコール度数、収穫量、醸造法、試飲検査等がきっちりと国の法で定められている(ただし、イタリアとフランスでは統制する機関が違うので、規制の方法も異なる)。このあたりを考慮すれば、単一品種に比べて若干お値段が高いのもうなずける。

それにしても、これだけのクオリティのシャブリやキャンティをこの価格で探すのはとても困難な作業であることには違いない。

「ASDA エクストラスペシャル」のとっておきの活用法

リーズナブル、かつ幅広い商品展開で、ワインのお勉強にも活躍

「ASDA エクストラスペシャル」の魅力は、何と言っても高品質、低価格であるが、そのバリエーションの豊富さにも目を見張るものがある。故に、「ワインのことをこれから知りたい」なんて方には非常にお役立ちなシリーズとなるであろう。

まず第一に、単一品種が多く、しかもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネなど世の中に出回っているワインの主要品種をカバーしていること。なので、これらを飲んでみれば、その品種の味がある程度把握できる。例えば、ボルドーの左岸地域の有名ワイン、シャトー・マルゴーはカベルネのブレンド比率が高いので、本物は手が届かないにしても、「あ、こういう味と香りもするんだ」と想像が膨らむ。シャルドネなら、高級ワインであるブルゴーニュのモンラッシェを想像しながら飲むのも楽しい。この価格なら何種類か買って、仲間内で飲み比べすることもできるだろう。

コート・デュ・ローヌやリュサック・サンテミリオンは有名なワインの産地名で、コート・デュ・ローヌはシャトー・ヌフ・デュ・パープを産出する地域、リュサック・サンテミリオンはルパンやぺトリュスといったほぼ幻に近いワインを産出するシャトーに近い地域である。ということは、比率は違うにせよ、ブレンドされているブドウの品種はほとんど同じということで、このあたりの地域で造られるワインの傾向がわかる。

そして、「ASDA エクストラスペシャル」シリーズのワインの裏ラベルには、ワインの説明と料理との相性が端的に記されている。例えばピノタージュはこんな風。「<ミディアムボディ>南アフリカの沿岸地方から、オーク樽で12ヶ月ねかせる事でリッチで口当たりのよい味わい。鴨肉やリブ等のお肉と一緒に楽しめるワイン」。ヴィオニエなら「ラングドック地区で生産された繊細で口当たりのよい風味豊かな白ワインです。オーク材の樽で発酵・熟成されたことにより、一層濃厚な味わいを与えてくれます。軽く冷やしてお飲みください。魚料理、マイルドな味わいのカレー料理、チキン料理によく合います」。このように、すべてのワインに注釈がしてある。これらを読むだけでもいいが、実際にその料理を作ってマリアージュしてみると、これまたいいお勉強になること間違いなしだ。

さらに、ボトルの形にも注目。世界中には実に様々なワインのボトルの形があるが、普段我々が目にする形の大半は、肩のいかったボルドー型となで肩のブルゴーニュ型だ。同シリーズのワインボトルも、概ねそれにそったボトルで販売されている。ブルゴーニュ産のシャブリはなで肩だし、ボルドー産のリュサック・サンテミリオンはいかり肩のボトル。単一品種でもブルゴーニュの代表品種であるシャルドネはなで肩に詰められていて、ボルドーの代表品種であるカベルネやメルローはいかり肩に詰められている、と言う具合に細かい部分にまで気が配られているのだ。

ついでに言うと、貼られているラベルも1種類ごとにデザインが違っていて、一目見ただけではこれら全部が同じシリーズとはわからないくらいカラフルで楽しい。

ただし前述の通り、単一品種は単一品種でも温暖なラングドック地方で生産しているため、ボルドー地方で栽培されているカベルネやメルロー、ローヌ地方で栽培が盛んなヴィオニエやシラーズ(シラー)などとまったく同じ酒質というわけではなく、かなりのボリューム感があることを断っておかなければいけない。また、オーク樽を使用して発酵したり熟成したりしているワインも多いので、その場合は香ばしいトーストやヴァニラの香りを差し引いて試してみる必要がある。そうすることで、そのブドウの味の傾向、もしくはその地方の味の傾向が少しでも感じられるのは、やはりうれしいことである。

飲み方、使い方次第では優良なワインの教材ともなりうる「ASDA エクストラスペシャル」シリーズであるが、四の五の言わずともおいしくリーズナブルに飲めるのがこのシリーズの最大の特徴であることは間違いない。

撮影: 中村浩二