どんな役でもすーっと溶け込む西島秀俊。映画『サヨナライツカ』でも、男の中に渦巻くさまざまな感情を"これでもか!"というくらいリアルに演じている。誰もが「西島秀俊なら当然な演技の完成度」と思うだろう。しかし、彼にとって完成までのプロセスは概念を覆すものだった! 自身と同じ30代だけでなく60代も演じること、初めて体験した徹底的な事前の役作り、イ・ジェハン監督から容赦なく突きつけられる要求……。その中で彼が得た"今後に大きく影響するもの"とは? 熱い演技への思いとともに、ちょっと意外な女性観も明らかに!
――まずは、脚本を読まれたときに受けた印象をお聞かせ下さい。
西島秀俊(以下、西島) : 「最初に読んだ時、25年後の分量の多さに驚きました。特殊メイクであろう後半部分の描写は、勝手な思いこみですが、こんなに多いとは思っていませんでしたから」
――東垣内豊という人物についてはどんな印象を持たれましたか?
西島 : 「豊は自分の人生を常に切り拓いていく男で、命令に背いても自分がした選択に対する結果を出して周りを納得させていきます。自分の中で仕事や夢が大きな要素を占めているという点は、僕自身もすごく共感できました」
――そんな男が情熱的な女性・沓子(中山美穂)との恋愛にのめり込み、理知的な婚約者・光子(石田ゆり子)と沓子のどちらを選びかねて迷いますよね。ああいう迷いについては?
西島 : 「実際ものすごく魅力的な女性2人ですから。男なら迷うでしょう(笑)。僕も豊の立場に置かれたら迷うと思います」……続きを読む
『サヨナライツカ』
監督・脚本:イ・ジェハン 出演:中山美穂、西島秀俊、石田ゆり子ほか 原作:『サヨナライツカ』辻 仁成(幻冬舎文庫) 配給:アスミック・エース
【STORY】1975年のバンコク。愛されることだけを求めて生きてきた沓子(中山美穂)はある日、エリートサラリーマン・豊(西島秀俊)と出会う。一瞬で惹かれあったふたりは体を重ね、燃えるような恋に身をゆだねる。しかし、豊には日本に残してきた婚約者・光子(石田ゆり子)がいた。正反対とも言えるふたりの女性の間で揺れる豊。結局、豊は光子との結婚を選び、日本へ帰っていく。だが、沓子は豊を愛し続けていた。やがて25年の月日が流れ、沓子と豊は運命の再会を果たすが……。