理想的な土地「穂坂日之城農場」

次に訪れたのが山梨・韮崎にある同ワイナリーの「穂坂日之城農場」。四方を富士山や甲斐駒ケ岳などの雄大な山々に囲まれた総面積2.2haのこの地は、もともと生食用のブドウやスモモなどの果樹が育ってはいたものの、ほとんど手入れがなされていなかった。日本有数の日照量、南東斜面、寒暖の差が大きい500mという標高……。

山梨・韮崎の「穂坂日之城農場」

ワイン用ブドウを栽培するには最高の条件であるこの地、購入しない理由はないだろう。かくして、いちから造設することになった日之城農場には、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、カベルネ・フラン、シラー、シャルドネ、ヴィオニエといったヨーロッパ系品種に加え、土着品種の甲州種を棚ではなく垣根仕立てで植えた。

そして結果は程なくして出る。2005年開催の国産ワインコンクールにおいて、「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城カベルネ & メルロー2003」が、山梨県産欧州系ブドウで初の金賞受賞を皮切りに、数々のコンクールで「穂坂日之城」の名が刻まれていく。

理想的な条件が揃った「穂坂日之城農場」で育つブドウ

その名は瞬く間に日本から海外へ

「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城カベルネ & メルロー2005」

近年、その名は海外にも羽ばたいていく。2008年北海道洞爺湖サミットにおける総理婦人主催昼食会に、「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城ヴィオニエ2005」(極甘口)が採用され、さらにはイギリス・ロンドンで開催されたIWSC(インターナショナル ワイン & スピリッツ コンペティション)2009において「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城カベルネ & メルロー2005」が銀賞に加えてカテゴリー最高得点の「ベスト・イン・クラス」受賞、「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城カベルネ & メルロー 遅摘み2004」「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城メルロー2004」が銅賞受賞など、その実力は世界に通ずる証も得た。こうした実績を自信に、本坊酒造はワイン部門の生業をマルスワインという国産ワインだけで勝負することにしたのである。

ここまで賞歴を並べておきながら次の一文は大変申し上げにくいのだが、「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城」シリーズは生産本数が非常に少なく、基本的には日之城倶楽部会員店(注)のみの販売であるため、入手は極めて困難な状況である。

※日之城倶楽部
「日之城農場」を核とした「シャトーマルス」シリーズの販売活動と、山梨マルスワイナリーにおいての収穫体験研修や春のプリムール試飲会等の活動を行うネットワーク組織。

しかし、ある程度の規模のワイナリーが大抵そうであるように、マルスワインもトップクラスの最高レンジだけを生産しているわけではない。「シャトーマルス キュべ・プレステージ 穂坂日之城」を最高レンジとすると、穂坂日之城農場で栽培されたブドウと穂坂地区の契約栽培ブドウを醸造したセカンドクラス「シャトーマルス プレステージ 穂坂三之蔵」、穂坂日之城農場と穂坂地区契約栽培のブドウを中心として醸造した「シャトーマルス プレステージ」、そしてマルスワインのベーシック「シャトーマルス」シリーズとなる。