至れり尽くせりの空間。それでも足りないものって?

山梨県北杜市小淵沢町。高原リゾートというと軽井沢や清里に注目が集まりがちだが、ここ小淵沢は東京からなら電車でも車でも約2時間で到着するリゾート地である。そんな小淵沢に1992年に誕生したリゾートホテルが「リゾナーレ」である。

山梨・小淵沢にあるリゾートホテル「リゾナーレ」

JR小淵沢駅から送迎バスで3分。雄大な八ヶ岳のパノラマの歓迎を受けながら到着した。同ホテルは、イタリア・インダストリアルデザイン界の巨匠として知られるマリオ・ベリーニが、中世の山岳都市をイメージしてデザインしたという。ホテル内を散策すると、円錐形の建物が現れる。その奇抜ともいえるフォルムと連なる山々とが清涼な高原の空気に映え、思わずウンベルト・エーコの「薔薇の名前」の修道院を重ね合わせてしまった。

同ホテルには、南アルプス・八ヶ岳が一望できる宿泊施設はもちろん、レストラン、チャペル、スパ&プール、温浴施設、そしてカフェやブックストア、ブティックなどから成るショッピング街が集結している。開業は前述の通り1992年だが、2001年に運営が星野リゾートにかわってからは、その充実振りがさらに発揮されている。

写真左は露天温浴施設「もくもく湯」。上はガーデンチャペル「ZONA」

メインダイニングは、政井茂シェフが腕を振るうイタリアン「OTTO SETTE」(オットセッテ)。地元の食材を使ったスタイリッシュな料理を提供する。巨大なワインセラーにはイタリアワインのみならず、秀逸な国産ワインやシャンパーニュも充実している。日が沈んでからは、露天温浴施設「もくもく湯」に行くのがオススメ。ゆらゆらと立ち上がる湯けむりの中、空を見上げると無数の星を見ることができ、なんとも神秘的である。

イタリアン「OTTO SETTE」(オットセッテ)

つまり、何が言いたいかというと、このホテル着いたなら、施設から一歩も出ることなくすべてがまかなえてしまうということである。しかもすべてが贅沢に……。

しかし、それでも「何かが足りない」と2006年8月、星野リゾート・八ヶ岳のスタッフとして一人の女性が入社した。池野美映さんである。

初めて会ったときは、服装はラフであったが「敏腕の美人営業マネージャーかな」と思うほど笑顔がチャーミングで、気勢にあふれる女性と感じられた。そして彼女と挨拶をしたとき、「何か足りないもの」がすぐにわかった。名刺に「ワインプロジェクト ディレクター」と刷り込まれていたからで、「足りないもの=ワイン」だったのだ。

今リゾナーレでは、自社でワインを生産するプロジェクトが稼動し始めていて、その責任者として池野さんが起用されたのである。