『呪怨』シリーズのヒットで知られる清水崇監督。彼が3年ぶりに撮影に臨んだ『戦慄迷宮3D』は、日本では初となる3D長編映画として注目を集めている。初挑戦ならではの苦労や、今後の3D映画界における展望、さらには自身の代表作である『呪怨』シリーズへの思いなどを赤裸々に語ってもらった。

『戦慄迷宮3D』ストーリー

10年前、ある遊園地のお化け屋敷で行方不明になった少女ユキが、雨の夜、突然帰ってきた。主人公ケンとその友達モトキ、盲目の少女リン、由紀の妹ミユは戸惑いながらもユキを迎え入れるが、突然ユキは発作を起こし倒れてしまう。5人は病院へと向かうが、辿り着いた普通の病院は、次第に姿を変え始め、朽ち果て、まるで迷宮のような不気味で不可思議な空間となった。そこで5人は10年前の事件のある【事実】を身を持って体感することになる

――まずは本作を撮ることになった経緯などを教えていただけますか

清水崇監督

清水「いきなりつまらない答えになっちゃうんですけど(笑)、僕がオファーをいただいた時にはもう色々とコンセプトが決まっていたんです。3Dの映画であること、戦慄迷宮で撮影すること、脚本や、予算、公開時期も含めて全部」

――完全に出来上がっていたわけですね

清水「最初は僕も3Dという技術自体や撮影の態勢なんかについてもわからないことが多くて、ちょっと渋っていました。正直、『呪怨』みたいな矢継ぎ早の怖さ押し映画ではない、違ったものをやりたいと思っていたので。するとプロデューサーから、実は『呪怨』でなく『稀人』('04)みたいなトーンで"青春の最終章"をやりたい、と言われて。脚本についても好きな方向に直していいと言われたので、だったら何かこれまでと違う事が出来るんじゃないかと挑戦してみる事にしました」

――日本では初の3D長編映画ということですが

清水「……と同時に、世界最短製作でもあり、世界最低予算3D映画でしょうね(笑)。僕は別に誰よりも先駆けて3D映画を撮ろうというような野心家ではないし、アナログ人間なんです。これが日本初だって聞いて『え、じゃ毒見役じゃん!』って驚いたぐらいです。でもやってみて良かったですね。3Dの特性とか、生かし方とか、勉強になりました」

――監督ご自身はこれまで3D映画に興味は持たれていましたか?

清水「勿論興味無くは無かったけれど、本作をやるまではデジタル3Dという技術に対して少し斜に構えてましたし、まさか自分がこんなタイミングで撮るとは思ってもいませんでした。(ジェームズ・)キャメロン監督の『タイタニックの秘密』をIMAXで観た時には、その臨場感に驚いたので『アバター』などは観たいと思ってましたが、殊更、3Dだから……って事でもなかったですし。でも本作のお陰で、今は3D技術にも可能性の広がりは感じてます」

――撮影で苦労したことはありますか?

清水「3Dでは効果的な表現とそうでない表現とがあるので、その辺りでしょうか。アングルや構図に関して、例えばなるべくフレームから人がはみ出さないよう意識したり、"寄り"から急に"引き"のサイズの画にいく際の観客の目の疲労度などには配慮しました。より現実的な生々しい見え方をしつつ、四角い画角で限定するわけですからね」