――『機動戦士ガンダム』は今年で放送開始から30周年を迎えますが、ご自分の昔のデザインが今も引き継がれていることについて、どのようにお考えですか?

「『ガンダム』っていうのは特殊で、それに影響を受けた若い人が自分もやりたいってことでこの業界に入ってきてるので、続いていくのは当然だと思いますね。監督も、『Gガンダム』(『機動武闘伝Gガンダム』)で今川さん(今川泰宏氏)が宇宙世紀じゃない『ガンダム』に幅を広げてくれたし、水島さん(水島精二氏)が『機動戦士ガンダム00』をやりました。少し経つと、また誰かがやるんでしょう。そうすると、若い世代の監督が、どういうメッセージを発信するかということで、また続いていく。もう、完璧なブランドになってますので、我々オリジナルスタッフが全然分かんないとこで、どんどん動いていくっていう……」

――ご自身でも、またおやりになりたいとお思いですか?

「だんだん、分かんなくなってきてるんですけれども、『SEED』(『機動戦士ガンダムSEED』)と『DESTINY』(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』)やったおかげで、まだできるかな、なんて感じはもってますけどね」

――『ヤッターマン』の場合は、30年ぶりに、ご自身でおやりになったわけですね。

「あのシリーズは笹川さんのテイストが強くて、ヤッターワンは、もともと笹川さんがラフを作ってたんですね」

――現在放送中の『ヤッターマン』に関しては、いかがですか?

「今回のは、全部自分のほうでやってるんですけれども、30年前のヤッターワンと間違えるぐらいだけど、ちゃんと30年の進化っていうのを入れてくれと。ヤッターペリカンの場合はガンちゃんが大人になって作ったっていう設定だったんで、1世代進んだデザイン。アンコウは商品化したときに、中に乗ってるヤッターマン1号、2号が見えるほうが商品価値としては高いと思ったんで、あえてキャノピー形式にしたんですけどね」

――『装甲騎兵ボトムズ』も、すでに25年を過ぎていますね。

「今までの作品の中で一番、自分でもこういう世界をやりたいなって、そういう部分では思い入れのある作品ですね」

――ところで、メカデザインをするにあたって、立体を起こしてらっしゃるそうですが……。

「昔は、変形とか合体をプレゼンテーションするときに。絵が好きなデザイナーだったら、何枚も描くわけですけど、マーチャンダイジングの対象がオモチャ屋さんなんで、絵を見せるより立体見せたほうが早いんですね」

大河原邦男さん自ら木材を削り出して作られたトッキュウザウルスのモックアップ。誰に頼まれたわけではなく、ご自身が少しでも仕事が楽しくできるようにと作られたとのこと

こちらは同モックアップが分離・変形した状態

――パソコンを使った3DCGも、おやりになってらっしゃるそうですね。

「ゲーム会社からデザインを頼まれまして、それまでパソコンにもゲームにも興味なかったんですけど、CGでも勉強してみようかな、ってことで。ソフト入りのパソコン1台借りて、1週間ぐらいでほぼ基本的なこと、モデリングに関しては物作りと共通する部分がすごくあるんで、簡単に覚えられましたね」

――パソコンであれ、手作りであれ、プリミティブな形の組み合わせで最終的なフォルムを創り出す……。

「メカデザインの基本はそこですから。なるべくプリミティブな形を使うのが『ヤッターマン』ですね。そうすると、アニメーターにも形が正確に伝わる。ハードなメカをやるときは、そこからさらに工夫ですよね」

――では、『ヤッターマン』とリアルロボットでは、どちらがおもしろいですか?

「そりゃ、『ヤッターマン』ですよ(笑)。どんなデザインしても、誰からも批判されないから」

――近著「大河原邦男画集 機動戦士ガンダム 原典継承」(角川書店)に掲載のものも含め、絵の彩色はポスターカラーでなさるんでしょうか。

「この世界に入ったとき、背景はみんなポスターカラーなんですよ。安いっていうのと、早く乾くっていう。大学でポスターカラーっていうと、平面構成とかベタ塗りが多かったんですけど、あれで絵を描くなんて想像もしてなかったんで、中村さんがやってるの見てショック受けまして(笑)」

――2009年8月22日(土)公開予定の『劇場版 ヤッターマン 新ヤッターメカ大集合! オモチャの国で大決戦だコロン!』は、タイトルのとおり、新しいメカがいっぱい出てくるんですか?

「いっぱい出ますね。テレビシリーズが4月から朝の時間帯に移って、それにも新しいメカが出てくるんで、両方同時なんですよ」

――なるほど。お忙しい中、ありがとうございました。

(写真: 中村浩二)