仏像ファンが増えているという昨今、その中でも「小顔でスリム」なプロポーション、現代の美少年やイケメンのイメージに通じる面立ちの阿修羅像を一目見に、幅広い層の人々が足を運んでいる。
本展覧会は2010年に創建1300年を迎える奈良・興福寺の中金堂再建事業の一環として計画されたもので、興福寺の貴重な文化財を中心に、国宝、重要文化財の数々約70件が展示されている。展示の中心となるのは、阿修羅をはじめ迦楼羅(かるら)、沙羯羅(さから)といった仏の眷属(けんぞく)である「八部衆像」、富楼那(ふるな)、須菩提(すぼだい)といった釈迦の十人の弟子である「十大弟子像」であり、これら全14体が揃って寺外で公開されるのは史上初となる。さらに創建時の埋納品と考えられる金・銀・真珠・水晶・琥珀・瑠璃(るり=ガラス)・瑪瑙(めのう)といった中金堂基壇から発見された1,400点をこえる「中金堂鎮壇具(ちんだんぐ)」や「阿弥陀三尊像」(法隆寺蔵)といった国宝の数々も必見だ。また、興福寺の鎌倉復興期の作で、再建される中金堂に安置される薬王菩薩立像/薬上菩薩立像、4体の四天王立像(いずれも重要文化財)も注目される。
会場は、中金堂鎮壇具の数々が展示された「第1章 興福寺創建と中金堂鎮壇具」からはじまり、普段は厨子に納められているという阿弥陀三尊像が続く。次の「第2章 国宝 阿修羅とその世界」では、はじめに八部衆像と十大弟子像が向かい合わせのように整然と展示されており、じっくり一体一体を鑑賞できる。
そしていよいよ次のゾーンが阿修羅像の展示となる。はじめに高い場所から全体を鑑賞できるようになっており、スロープを降りると手が届かんばかりに近寄って阿修羅像が鑑賞できる。特筆すべきは、阿修羅像はケースなどには納められておらず、360°どこからでも鑑賞でき、阿修羅像の背面も堪能できる。「第3章 中金堂再建と仏像」には3メートルを超える巨像、薬王・薬上菩薩立像と運慶の父・康慶(こうけい)の作となる四天王像の偉容が、再建される中金堂のスケールを感じさせる。
最後にVRシアターが設置されており、ここでは凸版印刷と朝日新聞社が共同制作したVR(バーチャルリアリティ)作品「よみがえる興福寺中金堂」と「阿修羅像」を、300インチの大型スクリーン、4Kデジタルシネマプロジェクターに超高精細な映像で上映している。阿修羅像のVR映像制作には、阿修羅像を三次元スキャナで詳細に計測する事で形状を正確に再現、3,900万画素の高解像度デジタルカメラで阿修羅像の全身を撮影し、これをもとに超高精細なCGを作り上げている。さらに印刷技術をベースとしたカラーマネジメント技術により、阿修羅像の表面を測色し、正確な色再現も実現している。
本展の開催にあたって同館では、金曜・土・日曜・祝・休日の開館時間を20時まで延長している(平日は18時まで)。春の宵、天平の春の宵に想いを馳せてみてはいかがだろう。